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WIND PARADE '23 Day1に行ってきた

初開催の去年に続いて今年も行ってきました。メモ書き程度の備忘録です。


心配されていた台風は前日に無事通過。厚い雲に覆われた涼しい1日で、酷暑により夏フェスの持続可能性が疑問視される昨今、秋フェスへの後ろ倒しを真剣に後押ししたくなる快適な気候でした。

去年経験した池袋⇔西武秩父間の2時間立ちっぱなしがキツすぎたので、今年は特急を購入。特急ラビューはゆったりした座席で寝られてとても快適でした。これが900円なら安い。

窓がめちゃくちゃデカい

cero

かねてからフェスや対バン企画などで幾度となく名前を見かけつつもスルーしてきたバンド。今回に向けて初めて本腰を入れて予習をしてきました。1st~2ndの素直にキャッチーなポップス路線、3rd~4thの奥深いアンサンブル、そして最新作のリッチなサウンドと捉えがたい奥行きと、どのアルバムにも独自の魅力を確かに感じつつも、グッと引き込まれるにはもう一声欲しい…!というくらいの温度での初対面。

Cupola
Yellow Magus
魚の骨 鳥の羽根
Nemesis
Hitode no umi 海星の海
Fdf
Waters
わたしのすがた
Tableaux
Poly Life Multi Soul
Angelus Novus

結論から言うと、生のceroは自分の想像を超えて素晴らしくて完全に和解できた感じがありました。まさか『わたしのすがた』を聴けると思っていなかったから嬉しかった。編成は角銅真実や古川麦などのサポートメンバーを加えたいつもの8人体制。特にパーカスの両名の繊細なニュアンスを堪能できるという点で、ライブで見ると魅力がひとしおに感じられました。

特に印象に残った曲を何曲か。2曲目の『Yellow Magus』、音の波に乗って心地良く揺られる快楽で言えばこの曲が1番でした。1番のサビ後の音の抜き差し、各所の細やかな溜めなど、アンサンブルの基礎的な部分が気持ち良すぎる。続く『魚の骨 鳥の羽根』や『Waters』も同じく巧みなアンサンブルが素晴らしかった。大編成の中で角銅真実と光永渉の2名が織り成すポリリズムは視覚的にも迫力があって、生で見る価値を感じられました。光永渉のドラムドリブンのダイナミクスもとにかくカッコいい。中盤を過ぎた頃に投入された『わたしのすがた』はセットリスト全体を引き締めるという点でも良い仕事をしていたように思います。深いリバーヴによってドリーミーな世界観を拡張していく終盤が凄まじかった。

全体を通して、改めて3rd~4thのライブ映えと『Fdf』以外の5th曲の難解さを再認識する感じはあった。『Nemesis』もライブ向けに手を加えていくのは結構難しそうな印象を受けました。フェスでラストを『Angels Novus』で〆るのも結構チャレンジングだなとびっくりしつつ、しっかりラストに相応しい美しさで空間を支配していてこれも良かったです。

ハナレグミ

一転して『家族の風景』しか聴いたことがないという完全に白紙の状態で臨みました。フェスでの弾き語りアクトに共通して言えることですが、音の余白に遠くの雑踏が混じる独特の空気感がとても好き。SUPERCARの『Lucky』カバーで会場が湧いていたのも印象的でした。今回の客層にジャストミートする限りなく正解に近いチョイスだったのでは。弾き語りで聴いてもシンプル良い曲すぎて…ナカコー&いしわたり淳治、天才では?

メッセージもサウンドもとにかく「まっすぐ」の一言で、あまり純・弾き語りな音楽に馴染みがない自分としては多少の屈折が欲しくなるところではありました。

GEZAN

自分が初めてGEZANを目撃したのはフジロック 2019。その後、with Million Wish Collectiveで野音とフジロックのグリーンステージを見て今回で4回目。with MWCに慣れてしまった今、4人編成では物足りないのでは?という心配は完全に杞憂で、きっちりぶっ飛ばされた。

赤曜日
Soul Material
AGEHA
東京
誅犬
EXTACY
Shangri-Ra
新曲
DNA
just love

とにかく、開幕の『赤曜日』がカッコよかった。はじめにロスカルだけが現われてトライバルな太鼓を叩き、ヤクモアとイーグルも加わってシンバルをバシバシ鳴らす。ルーパーを駆使して重なるマヒトのボーカルとダビーなサウンド、蠢くディジリドゥの不穏な気配。ちょっと凄まじい仕上がり方でした。リハの段階で「今日は良いライブが出来そうだ」といったことを言っていたり、マヒトが終始ノリノリだった印象。特に『Soul Material』で披露していた何かが憑依したような手振りなのかダンスなのかには見入ってしまった。

『Shangri-Ra』や『just love』など、オルタナの極みみたいな音像の中で、メロディーとメッセージはストレートに琴線に触れてくる楽曲を作り続けているのが彼らの魅力と改めて実感しました。ラストの『just love』ではフィッシュマンズ『Weather Report』の「風に乗っかってね 風に乗っかってね」を引用していたのも粋な演出でした。

フィッシュマンズ

LONG SEASON 2016ツアー、昨年のWind Paradeに続く3度目の目撃。

Season
Magic Love
バックビートにのっかって
頼りない天使
いかれたBaby
Smilin' days, Summer Holiday
Walking In The Rhythm
ナイトクルージング
Weather Report

Future

1曲目の『SEASON』の時点では「期待していたほどのタイトな仕上がりではないな」とか「ホールのボヤけた音響はバチっと決まるアンサンブルには合わないな」とかうだうだ頭で考えてしまい、正直なところあまり没入できなかった。続く2曲目の『MAGIC LOVE』で、ダーツ関口のバシッと決まるギターソロや小暮晋也のアルペジオの艶やかさに引き込まれて徐々に入り込めていった感覚がありました。3曲目、「練習してきた曲を披露します」というMCで密かに『ゆらめき IM THE AIR』とかを期待してしまいましたが全然違った。冷静に考えるとこんな序盤にやるわけない。『頼りない天使』とかのホーリーな歌モノはホールの薄く反響する出音でも映える感じがあり素直に美しさに浸れました。去年もこの曲には感動した記憶があります。シンセのアレンジが去年よりもパワーアップしていたのも良かった。

『ナイトクルージング』が始まる時の会場の空気がガラッと変わるような雰囲気はやっぱり特別ですね。『いかれたbaby』も『ナイトクルージング』も終わって今年は何の曲でコラボするのだろうと思っていたら『Weather Report』で、ハナレグミ、高城昌平、マヒトが参加して歌い繋いでいく構成。マヒトがAir Dropといった現代的なワードを入れた新しいパート(詞)をブチ込んで魔改造していたのは間違いなく今日のライブのハイライトでした。あの時間は佐藤伸治が降りてくるのを祈る降霊術的な儀式ではなくて、今のフィッシュマンズが投げかける価値ある交信であり対話だった。贅沢な願いとは知りつつ、ぜひ他の曲もこのくらい大胆なアレンジを施して"今"の曲にしてほしい。

ちゃぶ台を返すような感想になりますが、やはりどうしてもフィッシュマンズは独りが歌って独りが聴く音楽であってほしいという思いがあります。その点でゲストボーカルとの合唱が多すぎるところは個人的にうーんでした。『いかれたbaby』とかは合唱でも馴染むけれど、『ナイトクルージング』はワンコーラスごとに歓声を上げるのではなく静かに浸りたい。その点、去年のゲストボーカルのムードって良かったなという気もしていて、折坂悠太やカネコアヤノって合唱していても独りだと思うんですよ。

1日目はここまで。2日目に続きます。


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