禍々しい世を生きる時代に

 僕らは、悪魔が優位の世界を生きている。
だってそうだろ? お金の悪魔が完全に考え方を支配していて、
投げ銭延々、求め続ける徘徊人間にクリエイターが進化してしまった。
 そんな今日日を思い描いても、なにをしていても、不安定、
さて、今日も文章を綴る時間がやってきた、今回は小説だよ、
八段階で物語られる、禍々しい世を生きる時代に、はじまりはじまり!

1、私は世界を眺めるディケーション

 ディケーション、そう呼ばれて久しい、久しいというのは、
久しぶりという意味なのか、それとも、近しいという意味なのか?
日本語というものは難しいな、 私の名はディケーション、
世界を眺めるのが趣味だ、この禍々しい世を眺めている。
 さて、どうして、この世界がこんなにも禍々しくなったか、
それを語らせてもらおうと思う、まずこの世界は、悪魔が主導する、
当然だ、神は寝ている、ならば悪魔が働くしかない、
悪魔界の猛者たちが、ガコガコと悪魔の鉄心臓を動かして、
人間界を統率してる様は容易に想像できることだろう、
ふふふ、わたしが悪魔なのではないかって?
 ディケーションは悪魔ではない、聖霊に近いな、
そう、私は聖なる領域から、静かに寝息を立てている神の傍で、
ただ、人間に平安を祈って、働くものだ、美しいかどうかって?
 人間の美的感覚には、当然、理解を示すが、私たちには形が無い、
あえていうなら、光、光の玉だよ、聖霊ディケーションは、
だから、今日は、とにかくこの禍々しい世を見て回ろうじゃないか、
すべてが終わらない、黙示録にもつながらない、
ただ人間が投げ銭して紡がれた人類史をともに眺めようじゃないか。
 さあ、長い長い、小説の始まり始まり。


2、世界を傍観するだけのアリージョン

 私は王、アリージョン、この世界に王がいるなら、最後の王に、
なってしまったといっても過言ではないな、そう、人間はとうと滅びた、
人間のかわりをしているものの正体を名付けようか? それは金だ。
 人間という人間は金になってしまった、これは呪いだ、
人々がお金を催促し望み求めるあまりに、急速に人類の金化が進み、
あっという間に気付いた時には我々は人々の声のかわりに、
金が詰まれて鳴るジャラジャラという金のこすれる音に耳を慣らして、
今日日まで来てしまった、これが禍々しい世と呼ばずに何と呼ぼうか?
 そう、人々は、この世界に救いを求めなかった、金を求めた、
結果がこれだ、すべてのものが資本となって流動的になり、
特権階級に座するものの保有するところとなったのは良かったが、
そう、民が消え失せて、王がなぜ務まるというのだろうか?
 人の賑わいなく、人の信用の無い世界で金にどれだけの価値がある?
我々は、壁にぶち当たった、この人間を金に換える永久機関の発明が、
我ら特権階級の者達を狂わせ、ついには金だけ求めた者達の、行き着く、
果ての世に至ったのだ、我らはあまりにも金を信用し過ぎた、
すでにもう金の信用など失墜したも同然だというのに、カネに信用を、
向けすぎたのだ、我らは遅かった、この物語を救ってくれる、
 そうだ、勇者! 勇者、アリガッテを呼ぼうではないか!


3、伝説を放棄した勇者アリガッテ

 俺は勇者、アリガッテ、国王直々に国難を解決しろと頼まれたが、
俺は伝説を放棄する。 当たり前だ、国王の身勝手ではじまった、
人類の金化をいまさら、どうして、どの面下げて、
人間に解決しろと迫るのだ? それも勇者と名付けただけの、
ただの凡人が努力の結果成り上がった勇者アリガッテに、
 そう人々は俺を有難がった、だが人々は金をもっと有難がった、
そこから綻びが生まれて、みんなみんな金になってしまった。
 当たり前だ、金を信用するから生きているんじゃない、
みんな人間を信用するから金を払ってきたんだ、
それが逆どころか裏返った、中身をさらけ出したとき、人は、
ただ、数を稼ぐことに躍起になるモンキーになっちまったんだ。
 そんな人間の欲を相手にして、俺に国王はこういう、
「契約したサタンを倒し、この世界を金から救ってくれ!」
 だとよ、てめえ勝手に悪魔サタンと契約して、この世界を、
完全に掌握しようとしたアリージョン国王が今さら何をぬかすのか?
 勇者より悪魔や魔王のことを信用した人間が、
いまさら勇者の伝説にすがって、世界を救えと来たもんだ。
ああ、ああ、わかってるさ、勇者をアンタも信用してたんだろ?
だがアリガッテは腰抜けさ、金に目がくらんだ奴の目を覚まさせるほど、
五体無事に働けたりしないって分かりきってるじゃないか、
だったら、勝手やらせてもらおうじゃないか、
 勇者アリガッテはサタンは倒さない、むしろサタンもっとやれ、
やってやれ、人間一人残らず金に変えちまえ、そうすればあっさりさ、
人間が尊いだなんてこと形残らず忘れ去れるようになるんだからな、
あばよ!


4、連続体に恐怖するドラゴン、マリングラッセ

 我は気高き竜の血筋を持つ、ドラゴン、マリングラッセ、
マリングラッセであるはずなのに、なぜ怯えているのかと?
 そう、我は、この大地に蔓延る人間をおびえさせ、確かに、
人間達に数多く勝利し、その財宝を奪い、自らの竜の巣に、
蓄えていった、だが、怖れることが起きた、
 人間が自らを金に換えてしまったのだ。
人間が金に変わってしまったら、一体誰が、竜の威光を、
語り継ぐ? そして人間が宿った金だ、意志を持ち始めている。
それは確かに一枚一枚蠢いて、繋がりだし連続体になりはじめた。
これは恐怖すべきことだ、恐るべきことだよ、本当に!
 金の竜となった、存在が今度は我に牙をむく!
金の竜を相手にしてはさすがの我、マリングラッセも、
怯えざるを得ない、この世界がいかに滅んでしまっても、
龍族だけは永続するその長き生涯で乗り切っていくつもりだったが、
さすがに金の竜を相手にしては、この先生き残れるかわからない。
 こんな時に頼りになる勇者アリガッテが共に戦ってくれたらな、
と本当におもうが、奴はきっと、この状況に飽き飽きしてしまって、
我、マリングラッセのところまでは来てはくれないだろう、ああ、
 金の竜とどう戦えというのだ?!
 もともと、欲望の象徴である竜、そして我も竜、それが今、
金の竜という欲望の塊を前にして怯えている。
 わたしは金が大好きなんだ、なのに、金が意志を持ちだした途端、
これなんだ、本当に人間はわからないし、怖がることしかできない、
まったく、どういう因果なんだ?! この世界はどうして、
紡ぎだされて、今日まで廻ってきた!?
とてもじゃないが、この世界を想像することが出来ないぞ!
 さて、続きはどうしてくれようか?
我の助けを急募する! 急募! 急遽現れた金の竜を討伐せよ!
助けてくれたものには金を……金をやるぞ!
 いくらでもあるからな、ははははは。


5、あらゆる物語に現れる寄生命体シュクランタ

 さて、私は寄生命体シュクランタ、かくして人類に広まり続けて、
最終的に人類を滅ぼしてしまったようだが、なあに簡単な事さ、
金は天下のまわりもの、自分が金になってしまっても、誰かが、
信用している誰かが、呪いを解いてくれる、と吹き込んだだけで、
人々は親族縁者、血縁関係のあるものを片っ端から金に換えて、
取引を始めだした、新しい信用取引の誕生だったね、今思えば、
だが、そこには寄生命体シュクランタが宿っていた、
 シュクランタはただ、人間に命ずる。 金になれ、とね。 
それは、あの世のサタンでさえ意図しない、出来事だったのさ、
寄生命体がどんどん働き続けることで、全土にあっという間に、
いともたやすく、呪いを拡散することが出来た、
人類が、全人類を包みつつあるこの包容力を知れ、
そして、人類が自らにもたらされる災厄のスピードを速めよ、
そう、なにもかも人のうわさがもたらした、
全ての人間が金を作り出す魔法を手に入れたということが、
あっという間に自らを切り売りして、昇華させてしまった金に、
それが良いことか悪いことか今や分からないが、
我々は大勝利、寄生命体シュクランタの伝染と媒介が、
どれだけ効率的に行われたかが、今や人間が金になることで示される。
 そう、金とは寄生命体が働いた証拠なのだよ、
我々はひたすら働くことによってのみ人間を倒し得た。
我々、寄生命体は勝利した、永遠に。 その名はシュクランタ。


6、縁起を担ぐものが世界を動かしている、ランバルバ

 ほんとに縁起がいい日だね! よいしょ!
わたし、ランバルバ、縁起の神様!
すごいよ、人類全部が賽銭になって、私の神社大儲かりね!
 そしてその願いは面白いよ!
「お金になってしまった血縁者を助けてください!」
 人間がそうつぶやいて、自分を呪いでお金に換えると、
賽銭箱にダイブするの、かなり面白いですよね、これって!
 ランバルバ、その光景みて抱腹絶倒!
絶好調! だってそうでしょ? 縁起物にみんななっちゃって、
この世界の縁起は最高潮、そら神様の格もぐーんとあがるものだよ!

 あーっはっはっはっは! おもしろー!


7、美しい世界を思い描け、サタニズマグッジョブ

 我はサタン、サタニズマグッジョブ、
我は神の目論見に勝利した、はずだったのだが、
とうの神々はどうでもよいことのように見放す。
 こんなはずではなかったのだが、
これは、どうしたことか、困っているのがわずかに残った、
国王と竜程度だという、これは意図したことでは無かった。
 我は、資本が支配する美しい世界を描くはずだった、
そう、資本主義というものが、国の在り方や、国王不在の世界、
強いては、神々をないがしろにする社会にしていくのを、
座して待つばかりだと思っていたそれがどうだ?
 急激に人間達が、金に変わってしまった、まったくどうしようもない。
我は、想像以上に文民を強いものと設定していたのかもしれない、
その実は文民はかねに流されやすい弱い生きものだったという事。
 思い直す必要があるのかもしれない、人間が再び興ることあれば、
この先、資本が正しく使われる未来を祈る。
 悪魔が祈るとは何にと問われそうだが、
このサタニズマグッジョブ、もともと信心深いほうなのだ。まる。


8、禍々しい時を走り抜けた僕たちに祝杯を!

 ああ、なんて世も末なんだろう、右を見ても左を見ても、
金かね金かね! 誰もが金になっちゃった! こんな未来あり!?
でもね、満足もしている、こんな禍々しい世の中でも、
僕たちはかねの価値を真に知ってるんだからね、
そう、かねとは、ただの信用だよ、君と僕とのね、
 だから、君が僕を信用してくれた時は僕に金を払えばいいし、
逆に君が僕を信用しないときは、僕から金を取ればいいんだよ!
 そうすれば恨むことなしでお金を回していける、つまりハッピー!
さて、こんな世界からはおさらばさ、天使とともにかけぬけよう!
さらばーい!


9、さあ、お終いを告げる! 小説、終わり終わり!

 長かったことだろう、小説というくせに、なかなか仰々しいことを、
論じたりもしだすから、人間、ちょっとかなわないところがある。
 さて、色んなキャラクターが語っていたが、人間が金になってしまった、
それだけのことで色んな表情が伺えたと思う、なかなか、
激変の世界だったことでしょう、これで、世界が終いになるかはまだ、
よく分からないですけど、それでも、なんとなく物語が語られましたね。
 それが小説というものです、本来そんなに長く書く必要は無いのですよ、
出版社が厚みのある本が欲しいというから、分厚くなるように、物語を、
紡ぎだしたという事であって、元来、小説というのは、物語というのは、
そして、童話や寓話、民話の類は短くまとめられています。
 口述、口伝で言い聞かせる物語がそんなに長かったら、誰も、
覚えきれないでしょうってことですよ、要は、
では、これにて小説を劇終というところで、
皆さんも良き小説ライフを送ってください、ではでは、
楽しい時間におつきあい頂いて有難うございました。

いただけるなら、どこまでもおともしますとも!