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複雑な事象は絡まった糸を解いて議論したい。

世の中……Xの中で「車椅子×映画館」が話題になっています。いろいろな意見が飛び交っていますがこの手の議論はXでするもんじゃないよなぁというのがいつも通りの感想です。

鍵掛けられて該当ポストを引用することはできないのですが、該当ポストには複数の要素が含まれていて、人によって部分的に要素を拾い上げてさらに発展させて議論しているゆえに、めんどくさい燃え方をしているのかなという印象を持っています。

私が思うに少なくとも論点を3つには分けたほうがよさそうです。
・映画館が当人に対して「次は別の映画館で」と言ったことについて
・車椅子の人が車椅子スペース以外で映画鑑賞することについて
・当人のポストの書き方について

これらについてこの点には賛成だけどこの点には賛成できないなど複数の総和でポストの賛否を判定しているとどうにも議論が進みません。実際はさらに細分化する必要もあるのですが、とにかく前提を揃えずにあれこれ言うのは得策ではないよなと思う次第です。複数の論点がある場合は切り分けて考えて提示したほうが整理しやすいですし伝わりやすいです。

以下、つらつらと私見を述べます。予め断っておきますが、健常者代表として語っているわけではなく個人として語っています。

・映画館が当人に対して「次は別の映画館で」と言ったことについて
これはよくなかったと思っています。すでに映画館側も謝罪文を掲載しています。一方的な拒絶ではなく歩み寄る方法もあったのではと思います。別の映画館を勧めるにしてもその映画館で難しい理由とユーザーの希望を叶えられる映画館の提示を丁寧に説明するだけで印象が異なった可能性があります。

・車椅子の人が車椅子スペース以外で映画鑑賞することについて
これは望むことは当然自由ですし独力で鑑賞可能な手段を検討することを止めるべきではないと思っています。ここから発展する議論から私は「車椅子ユーザーに車椅子スペース以外で映画を観たいというニーズがある」という新知見を得ました。車椅子ユーザーではないので考えたこともなかったです。バリアフリー化は進みつつありますが、それでも健常者の使いやすさをベースに設計していることが多い現実。身近なところで言えば駅の改札は右利き用に設計されており、大多数の右利きの人が気がつかない中で、左利きの人たちは不自然な動きをしながら改札を通っています(或いは当たり前になり過ぎて不自然な動きであることにも気づいていないかもしれません)。じゃあ左利きの人も使いやすい改札をという話を始めるとだいたい「無理だ」とか「コストが」とかが飛んできます。今の常識的に考えるとそうなのでしょうね。例えばすべての駅の改札に左利き用をひとつふたつ併設してみても便利になっているイメージがあまり湧きません。そこで少し発想を飛躍してみます。そもそも右側にタッチするデザインがいけていないので改札の両側からスキャンして通るだけで読み取れるようにしたらどうでしょうか。これだと左利き問題を解決しながら右利きの人もポケットやカバンから切符やICカードを取り出す必要がなくなり、より便利になる可能性がでてきます。書きながら雑に思いついただけなので実装しようとすると問題点だらけですが、このようにマイノリティーの課題解決がマジョリティー(別の観点でのマイノリティー含む)のQOL向上に繋がるケースはままあり、誰かのニーズを満たすための思考はどんどんやったほうが面白いです。たくさんの人が思考して、どこかの誰かが採算の取れる妙案を思いついたとき、それが新規ビジネスになるのです。新規ビジネス視点では、多くの人が無理と言っているほうが競合少なくて考え甲斐がありますね。今すぐは難しくてもテクノロジーの進化と共にやれることの幅は広がり実装できる可能性は高くなるので早く思いついた者勝ちです。出発点はニーズになるので、潜在ニーズの可視化のためにも、マイノリティーもマジョリティーも不便さの主張はどんどんしたほうがいいと考えています。

・当人のポストの書き方について
これは言葉を選ばずに言えば「何様のつもりだ」と思われても仕方のない書き方だったと思っています。当人がたまたま車椅子ユーザーであっただけで、ポストの書き方や人との関わり方は個人の話です。車椅子かどうかではなく、個人がどうかで「この人めんどくさそうだから近寄らんとこ」みたいな判断はあり得ます。属性と個を混同して「車椅子の人めんどくさそうだから近寄らんとこ」になるとこれはもう誰も幸せにならないので、属性と個の切り分けはしっかりしていきたいなぁと思っています。主語は大きくしてはいけません。とはいえ類は友を呼び似たような個が集団を形成して属性を主張し始めることもままあるので難しいところです。

こんな感じで、人によって各項目の賛否は違うと思いますが、一緒くたにせずいくつかの項目に分けて賛否を語るだけで、140字の応酬よりかは生産的なものになると思います。よりよい世界を作るための話し合いができるといいですね。

余談
「映画館のプレミアムシートで映画を見たかった」を「楽な姿勢で映画館の臨場感を味わいながら映画を見たかった」に置き換えると映画館を再現したVRからのアプローチもありなのではと思いました。

屋外に出るのが大事なのだという話もありますし、プレミアムじゃないシートの人と比較して優越感に浸ることが重要かもしれないので、顧客ヒアリングは必要ですが、アイディア修正とヒアリングを繰り返せば誰かのニーズを満たせる映画視聴サービスが生まれる気がします。

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