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”ピストルスター”


まだ3巻しか読み直せていない。だからこの文章は不完全だろうと思う。だけど一旦、ここまでのことを文字にしておくことにした。ピストルスターの輝きを信仰するとある男の子のお話だ。ストーリーの本筋に関わるネタバレはしないように書いたつもりではあるけれど、1巻の内容を前提としているので気になる方はご注意ください。

この文章は、僕の世界観に最も近い、僕の世界観に織り込まれているひとつの物語についてのお話です。


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1巻で、ピストルスターという存在、意味合いが簡単に説明される。2巻では、とある島に住むクラスメイトたちの欠陥と、ヒーローというものについて語られる。3巻では、信仰と恋が対比される。



階段島に、恋はない。その島には信仰だけが存在する。そんな風に物語を簡単にしてしまったときに、私はその信仰がとても綺麗なもののように思えた。簡単に、それっぽい言葉で誤魔化せるようになったことを成長と呼ぶよりも、変わっていくのが許せなかった、遠くで輝くピストルスターを信仰していられればそれでいいと言い放つ彼の方が、私には綺麗なもののように思えた。

全ては、悲観の成せるものなのかもしれない。でもすべては、簡単には言い表せられない愛のかたちかもしれない。
現実のふたりも悪くはない。彼らが本当に世の中で言う一般的な恋愛を踏んでいくとは思えない。だけどやっぱりこの話は島に住む七草の物語だから、階段島で暮らす七草に肩入れしてしまう。

ネタバレをせずに言葉にするのは難しい。読んでくれたら嬉しい、と思う。信仰と恋の違いは3巻までで一応説明される。4巻で登場人物が一通り出揃う。僕のあらゆる断片は委員長のなかにもゲーム音楽の好きな彼の中にも見出せるし、七草にも、彼が信仰する彼女の中にも、自分の欠片を発見する。
僕の友達(メープルチョコレートをもらったとき、「課題なんて提出すればいいんだよ」と言った人)は、「このお話はススキに似すぎていて気持ち悪い」と言った。それから、「ススキは七草ではなく真辺に似ている」と言った。そうかもしれない、と僕は思った。僕は嘘が得意じゃないし、問題の存在を叫ぶことの方が多いかもしれない。問題を解決してくれる、支えてくれる七草を当てにして突っ走るのかもしれない。
だけど、信仰という点と悲観に関しては、僕は七草に似ていると思う。

最終巻の最終章の一部を、先にちらりと見てしまった。
ーーどうしてあのとき笑ったの?ーー
七草の気持ちが、私にはよくわかる気がした。私ならきっと笑ってしまえないだけで、同じような感情を抱くのだろうと思った。



どこからだろう。これほど僕に織り込まれた物語を僕は知らない。伏線もストーリーも全部取っ払って、登場人物の性格と価値観と、そして階段島とピストルスターだけ取り出したとき、僕の世界観にはこの物語が織り込まれていると思う。
具体的な文章なんて覚えていないのに、最終巻に至っては多分一度しか読んでいないのに(二度目を読んだことがあってもここ3年は読んでいないはず)。なのにこの物語は、僕もよく知る感情で締めくくられる。

この物語は世界の正解ではないし、七草や真辺由宇を目指しても仕方がない。だから僕はこの物語をあがめたりはしない。だけど、他人のせいにしてしまうなら、僕はこの物語のせいで恋ができなくなったのかもしれない。この物語が、普通の大人になることを僕に許してくれなかったのかもしれない。だけどそれはもしかしたら、全く別の見方をするなら、恋を見失った僕を肯定してくれたのがこの物語だったのかもしれない。成長するということが、世の中の言う大人になるということが、全く信じられなかった僕に、捨てないままで大人になる方法を、そのひとつの可能性を、示してくれたのがこの物語なのかもしれない。


僕はこの作品を愛している。理解できないところや複雑なところや、今の僕には読み取れないところもある。それでもいい。この作品と僕の世界観は切り離せない、ということだけは事実だろうと思う。

僕は七草であり真辺であり堀であり、佐々岡であり委員長であり、もしかしたらナドであるのかもしれない。遠くの恒星を信仰すること、悲観的でも前向きであること。言葉に誠実さを求めた結果階段島に残されたなら、曖昧で非現実的で不要だと社会からはじき出されたものを、本当は捨てないままでも大人になれるというなら。そうであるなら、僕はあの恒星を肯定し続けていたい。


僕は恒星がもたらしてくれる群青も、見えなくても遠くで輝く恒星の存在も、両方を等しく愛している。
だから階段島は不幸な場所なんかじゃない。
信仰が残された階段島でも、不幸を諦めないでいられると信じている。ピストルスターの輝きが遠く見えなくても、それは不幸ではないということを信じている。


僕が愛した恒星は、きっとどこかで変わらず輝いているのだから。








↓ずっと前に書いた七草についての話(こちらもネタバレは本記事と同レベルです)


↓階段島シリーズ第一巻はこちら


最後まで読んでくださりありがとうございます。読んでくださったあなたの夜を掬う、言葉や音楽が、この世界のどこかにありますように。明日に明るい色があることを願います。どうか、良い一日を。