見出し画像

退職日記③ 二転三転

23時と、5時。

それが僕が動き始める時間だった。
仕事が終わり家族が寝静まった後、そして、家族が起きてくる前の時間。
僕は一生懸命、戦っていた。

いずれも眠い目をこすり、時にはノートにミミズがはっていたこともある。はっきり言って舐めていた。どちらかといえば「できた」ほうだった学生時代のイメージは、日に日に崩れていく。身に染みた。30代での「勉強」がこんなにもつらいものだとは。。。

我、どこへ向かう

今、フォトグラファーとライターとしてフリーでやっていくと決めたわけだが、土地購入を決めた当初、「安定」を求めて自分を変える手段として選んだのが、なんと公務員試験だった。大学時代はとても勉強したとは言えないので(苦笑)、久しぶりに参考書と格闘しました。

いつ、どうなるか分からないサラリーマンよりはせめて住居に腰を据えて働ける仕事を選ぼうー。それだけの理由。今振り返ってもしんどかった。

「これが僕が一生かけてやりたかった仕事だろうか。僕はどう生きていきたいんだろうか」

参考書の文字が頭に入ってこないのは、何も衰えた記憶力のせいではないと気付いていた。人間、いや少なくとも僕は、やりたいことじゃないと全くもって力が出ないタイプだ。それをこの時にようやく気付いた。

世の中、仕事は仕事と割り切れる人もいるだろう。でも、自分の本質的な興味とそれを結びつけるタイプもいる。僕はそうだ。それから蓋をしようとしていた僕の核心に気付き始めた。

「ごめん、公務員は諦める」

あれだけ押し切った土地を購入の購入から4ヶ月ほど。妻に切り出したときの心苦しさは忘れられない。でも、僕の中では形はぼんやりだが、見えていたことも打ち明けた。

「いつか独立し、いろんな人を取材して本を作りたい」

どこからどう、手をつけたらいいのか。それすら全くと言っていいほど見えなかったが、その思いは伝えた。妻といろいろ話し合い、結局、公務員は諦め、そのぼんやりした夢を目指すことになった。

ぼんやり、ぼんやり、遠く、遠くを見つめるしかできなかったが、米子に変える予定はなくなり、土地を売る旨を伝えるため、菓子折りを持って断りを入れに工務店に行った。二転三転とはこういうときにある言葉だろう。

こうして、再び大きく舵を切りなおしたわけだが、さてさて、どうしたものか。

ぼくらの暗中模索な日々が始まった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?