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猫と息子

なかなか仲良くならないこの2人。にゃん(猫の名前)とは息子が産まれる前から一緒に暮らしている。妊娠が分かった時は、息子が泣いていれば「泣いてるよ~」って教えてくれたり、一緒にくっついて寝たりするのかな~、楽しみだなぁと思っていたが、産まれてみたらそんなことはまったくなかった。

出産を終え、退院して家に帰るとにゃんと初めての対面だ。どうなるかなぁとワクワクしていたけれど、近寄ってクンクンクンクン・・・ふーん、分かった、というようにすぐにどこかに行ってしまった。全然興味がなさそうだった。

猫がいる家はベビーベッドが必要だとインターネットで見て、それでも使うのは一時だし邪魔になるだろうからと用意しなかった。にゃんも息子に近づくこともなく、寝ていても踏みにくることもなかった。

お互いに無関心の状態がしばらく続いたが、1歳を過ぎた頃、息子の方が先ににゃんに興味を持ち始めた。

にゃんのご飯を用意すれば息子が進んでそれを運びたがるし、にゃんを撫でていれば一緒に撫で始める。にゃんに顔をうずめていれば、息子も一緒になってうずめてくる。

でも、これは私がいる時にしかやらない行為で、息子が単独でにゃんに触れることはそうそうない。

なぜか。にゃんはめちゃくちゃ凶暴なのだ。

一緒に暮らし始めてすぐ、何が気に入らなかったのかすごく強く噛まれた。あまりの痛さに驚き、思わず「嫌い!」と言って、リビングとキッチンを隔てるドアの向こう側に締め出してしまった。当時は「甘噛み」という言葉を知らなかったので、後日に知ってから感情的に嫌いと言ってしまったことをすごく反省した。

でもそのすぐ後にそれは甘嚙みではないことに気がつく。寝起きに噛んでくるときと明らかに強さが違うのだ。飼い始めて1か月も経つと腕は傷だらけで、時々会う母にも心配された。それでもかわいいのだ。痛さにも慣れ始めていた。

それから7年経ってもいまだに噛んでくる。前ほどは噛まなくなったが、今は撫で方が気に入らなければ噛んでくることが多い。私は、いかに噛まれないようにするか、腕を素早くよけるのを楽しんでいる。

そんなにゃんは息子にも容赦なく噛みつく。周辺をウロウロされたら追いかけて行って嚙みつくし、息子と2人で撫でている途中で私が撫でるのをやめると、にゃんの背中に残った息子の手を「いつ噛んでやろうか」という鋭い目つきでジッと見つめる。息子もサッと手を引く。

なんでこんなに仲が悪いんだろう。きっとにゃんはもっと甘えたいんだろうなあ。日頃のジェラシーが積り積もって息子に噛みつくことでストレスを発散しているに違いない。

確かに、にゃんにとったらずっと一人っ子で全ての愛情を注がれて幸せだったのに、そんなところに勝手に息子を連れて来られ、さぞ迷惑だろう。

それでも発狂することなくいつも変わらずそばに寄ってきて、撫でさせてくれるにゃんには感謝しかない。少しくらい噛まれたって何てことはない。家出せず一緒にいてくれてありがとう。

そのうち息子の方がにゃんを撫でるのが上手くなって私は見向きもされなくなるんだろうなと、時々寂しい気持ちにもなるが、そんな日が来るのを今か今かと待ちわびている。


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