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フランスと繋ぐ理想の楽園 vol.4

ウーフィング

B : 由香里さんのInstagram投稿で見たんですが、地方の農家さんのところに滞在しながら農作業を体験する、ということをされてましたよね。何かそういう制度があるんですか?

Y:はい、ウーフィングっていうんですけど、有機農業をしている農家さんのところに、農業を体験したい人とか、もしくは多文化コミュニケーションを取りたいと思っている人が行って、お手伝いする代わりに食事と住まいを提供してもらう。そこにお金のやりとりはなくて、共に暮らして仕事して、っていう制度なんです。
実は日本にもあって、世界各地にあるんですね。そのシステムを運営しているのが、WWOOF(ウーフ)という組織です。年会費を払って登録すると、農家さんにコンタクトがとれてやり取りできるサービスが使えます。
これを使えば生活費が浮くなと考えました。それに私みたいな留学生はフランス語も学べるし、栽培することにもすごく興味があったから、2か所行きました。

B : 面白いですね!1か所目はどこへ行ったんですか?

Y:redon ホドン(仏語では r の発音が独特なのでルドンという表記もあり)というブルターニュ地方のコミューン(地方自治体の最小単位)で、仕事をリタイアしてパリから移住したというマダムのお手伝いをしました。特に農家という感じではなくて、小さな森を持っていて。そこで木こりが切り出した薪を運んで積み上げるっていう冬支度のお手伝いと、たぶん最近作ったであろう庭、バラの苗木が植わっているような庭の水やりや草取りを手伝ったりしました。


B : 他にも誰かいましたか?

Y:いました。確かパリから来た人で、お店の販売員って言っていたかな。コンフィヌモンの間、パリや都会の人はちょっと精神的にキツかったのか、人生を見つめなおすきっかけになったと。それで田舎暮らし、自然的な生活をしたいという人が増えたみたいでウーフィングに来ていました。女性で40歳くらいだったかな。


B : 若い方ではないんですね、それは本当に人生を見つめなおす感じですね。観光とかただのホームステイとは違う体験ができますよね。

Y:そうですね、農業とか、そういう労働が嫌いでなければすごく楽しいと思います。フランスでのウーフィングは労働時間が4時間でよくて、半日で仕事は終わるんです。だから午後の時間はフリータイムで、散歩したり昼寝したり。みんな自由に過ごす感じです。車がないとどこにも行けない環境なので、都会的な遊びは全くできませんけどね笑。ここには一週間滞在しました。

由香里さんのブーケ、蔓など山の恵みも


B : なるほど~。それで2か所目は?

Y:次はロワール地方のChâteaudun シャトーダンというこれまたすごい田舎に行きました。ロワール地方は古城が有名ですが、ここにも小さなお城があって、こじんまりとしたきれいな街でした。
私が行った農家は麦農家で、すごく広い麦畑を持っているんですけど、もともとおじいさんがやっていたところを孫が継いで、新婚生活を始めたところで。しかもウーフィングのホストを始めたばかり、というか私がウーファー第1号でした笑。
コンフィヌモン中に移ったばかりとのことで、ほんとに麦畑しかなくて。でも一部、畑にした土地があってトマトとかカボチャとか色々できてたんですね。聞いたらここはほんとに何もない土地だったんだよ、乾いた砂みたいな固い土で、でも自分たちで耕して土を作って、そうしたらこんな立派なトマトができたんだよ!って。ゆくゆくはもっと畑を広げていきたい、そしてビオの認証をとって出荷したいと言っていました。だからそこでは、農業のほんとの初めの部分、土を作ることに携わることができたんです。

B : それは今に役立つ体験でしたね!フランスと日本では土も少し違うのかなと思いますが。

Y:自然環境的には全然違うんですけど、ああそうか、何もない場所ではこうやって土を作るんだ!という気づきがありました。旦那さんが庭木を伐採して粉砕して、撒いて、水をやって耕して、そうして半年、一年したらちゃんとした土ができるんだよ、って言っていました。

B : へー!日本でもそうやったらよい土ができるかもしれないってことですよね。それはいい経験ができましたね。

Y:そうなんですよ、すごく面白い経験をさせてもらいました。同世代の夫婦でしたし、とてもいい人たちで。しかも奥さんが学校の英語の先生でフランス語もすごくわかりやすく教えてくれました。

B : それはラッキーでしたね!コンフィヌモンは大変だったと思いますが、その後は充実のフランス留学だったわけですね。

Y:私にとっては大充実でした。日本に帰ってから、周りから最悪のタイミングだったねと言われたんですけど、いや~?そうでもないよ、って。

パリ郊外の庭


そんな風に言えたのは、由香里さんの行動力があったからこそ!花留学というと、たいていは都市に滞在して花屋さんで研修してという方がほとんどで、由香里さんのように地方まで行って農業体験する方は稀だと思うのです。積極的に、興味があることにどんどん挑戦する様子は聞いていて楽しくこちらまでワクワク、とても心躍るものでした。

ウーフィングでの体験が、今の、育ててブーケに束ねるという活動へとつながっているんだろうなと思い聞いてみたら、もちろん影響はしているけれど、実は原点はほかにあるとのこと。
そうなんですか!?と、その「楽園」について、そして、これからの夢についてお伺いしました。

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※このインタビューは2021年11月に掲載したものに加筆修正しています

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