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フランスと繋ぐ理想の楽園 vol.2

花材の栽培

ほんの数時間、レッスンでご一緒しただけの私にも、画面越しにお久しぶりです!と笑顔をむけてくれた由香里さん。パリで感じた優しい、でも芯のある方という印象そのままに、たくさんのお話をしてくださいました。
まずは近況をお聞きしながら、パリでお会いするまでのことを伺いました。

Bonjourfleurs(以下B): パリでご一緒してから由香里さんのInstagramをずっと拝見していました。フランスでのこともたくさんお聞きしたいと思っていますが、大分に戻られてからは畑で花材になる植物を育ててみえますよね、それがとても気になっています。具体的には日々、どんなことをされているのでしょうか。

由香里さん(以下Y):毎日、汗だくで農作業やってます笑。まだ暑いので(お話を伺ったのは10月初め)、早朝か夕方でないと耐えられないですけどね。母方の実家がお米を作っているんですが、今は使っていない田んぼが2,3枚あってそこを借りています。

B : もともとが田んぼということは、土の状態とかはどうなんでしょう?

Y:もう土のコンディションは最悪です笑。排水性がなく、どうしようかと。一日雨が降っただけで小さな池ができるんですよ。田んぼなので水がはけないシステムになってるみたいで。土壌改良をしているところです。


B : 土を新しく入れたりとか?

Y:それが田んぼまでの道が獣道みたいなすごく細い道で。収穫のための大型コンバインが入らないから米を作らなくなった田んぼなんです。だから軽トラも入らない、重機も入れられない。何か運ぶには一輪車で、完全に人力で一人でやってますから、ちょっとずつしかできなくて。
土を入れるのも難しいので緑肥(新鮮な緑色植物を腐らせずに土壌に入れて耕し肥料にする)を漉き込もうと思ってたんです。でもそのための緑肥作物も育たないくらいに強い雑草がはびこっていて。それをまず取らないといけない状態です。

B : それは大変ですね、、それでもやろうというのが凄いです。やっぱり水はけが悪いと育たないんですね。


Y:最初にユーカリを植えたんですけど、水たまりの中で溺れていて。かわいそうなことしたなと思ってます。とりあえず心折れるまでやってみて、もう駄目だと思ったら他の事考えます笑。

B : それでも向日葵とか、何種類かは育ててブーケに使ったりされてますよね?


Y:そうですね。でも実は田んぼの方ではあまり水をやらなくても育つようなもの、例えば樹木系とかワイルド系の草花なんかを植えています。
向日葵とかスカビオサとか、秋桜とか、水やりが必要な栽培周期の短いものは、おばあちゃんの畑を使わせてもらってるんです。秋桜なんかはあまり手をかけていませんが笑、畑だと土の心配がないので。


笑いながら話す由香里さんですが、これって本当にしんどい重労働です。我が家も実は元農家で田んぼや畑があるのですが、夏の雑草のはびこる勢いはびっくりするほど凄く、少しでも放置しておくとすぐに腰くらいの高さまで成長し、根っこも深く除去するのも大変なことになってしまいます。
機械もはいらない、田んぼだった土地のお世話を一人でするというのは、かなりの気力、そして体力が必要なこと。庭先の草とりでもなかなか出来ない私、本当にすごいなと尊敬します!

憧れの海外へ

パリの冬の朝

B : そもそもの始まりをお伺いしたいのですが、パリに行く前にもお花屋さんで働いていたんですよね、花の仕事は前からの夢だったんでしょうか?

Y:花屋になりたいと思って大分の短大の園芸科に進み、在学中に取れる資格を片っ端からとりました。フラワー装飾技能士とか。花屋さんでアルバイトもして、そのまま就職したので他の職種の経験はないです。ほんとは高校の頃は獣医さんになりたかったんです。でもちょっと勉強がきつくて笑、それで他を探して花屋に興味を持ちました。

B : 生き物に興味があるんですね!今やっている育てるという事にもつながりますね。

Y:そうですね、動物とか植物に興味があります。


B : 順調に花屋で働いていたわけですよね。パリに行こうと思ったのは何がきっかけだったんですか?

Y:私、学生の頃から海外留学とか海外で働くことに興味があったんですね。でもいつか行けたらいいな、くらいな気持ちですぐに動く気も勇気もなかったんです。でも大分の花屋で働いていた時に、年下の友達がマルタ島に留学すると、英会話を頑張って勉強してて、それ見てかっこいいな~と思って。私もすぐに海外に行けるかは分からないけど、とりあえず英語が話せたらいいなっていう軽い気持ちで笑、知人に英会話教室を紹介してもらいました。
それで最初に行ったときに学習目的を聞かれたんですね。ゆくゆくは海外で働いてみたい、っていう話をして、じゃあどこで働きたいの?と聞かれてフランスのパリとか、って答えたんです。職業柄、花屋での技術は身につけてるから海外でもまあ通用すると思っていたし、パリスタイルが大好きだったので、パリに行ってみたいと。それならフランス語習ったほうがいいよ!って言われて、あ、そうなんですねって笑。

B : 確かにそうですね笑。それでフランス語を習い始めたんですね?


Y:その学校にはフランス語コースもあったので、じゃあフランス語にしましょうって習い始めました。でも、週一回、一時間の授業では全然、上達しなくて。一年くらいたっても全く話せる気がしなくて、でももうこうなったら行っちゃうしかないかな、と思い始めました。
それで当時通っていたフラワーアレンジ教室の先生に相談したんですが、それまで一度も海外に行ったことが無いという話をしたら、いきなり留学はちょっと無謀じゃない?と言われ笑。たまたま、先生のお知り合いにフランス人男性と日本人女性のご夫婦がいて紹介してもらって、相談に乗ってもらいました。
じゃあ一回、旅行で行ってみたら?ということになり、パリに行って、その時に由美さんとヴァンソンのレッスンを受けて、ヴィジットも参加してすごく楽しくて。お二人の花はもちろん、由美さんの暮らすパリっていう世界にすごく憧れて、やっぱり留学しよう!と決心しました。流れ流れてたどり着いた感じです笑。

B : 流れに乗ったというか、でも思いは一貫していますよね。パリスタイルが好きという気持ちが出発点だったわけですし。でもいきなりではなくて、段階を経たのは良かったかもしれないですね笑。


B : ほんと、いきなりいかなくて良かったです。ご縁もありがたかったですし。旅行は2019年の1月に行って、それで同じ年の9月から留学しました。

セーヌ川にかかる橋


B : まずローズバッドの研修に行ったんですか?

Y:いえ、その時はまだローズバッド研修は決まってなかったんですよ。とりあえずフランスに行こうっていう笑。語学の心配もあったので、最初の3か月間はロワール地方のトゥールっていう街で語学学校に通いました。
でも語学研修が終わるころになってもあまり話せるようにはなってなくて、、相手の言っていることはなんとなくわかるけど、話せない。それでお花屋さんで働きたい気持ちもあったんですが、どうしようか迷ってたんです。その時に日本から語学研修に来てた子に相談したら、それは絶対やらなきゃだめだよ!やらなきゃ後悔するよ、ってすごい熱量で言われたんです。思わず後ずさっちゃうくらいに笑。
そうだよね、由美さんにメールしよう!と、ローズバッドで研修したいですって思い切って連絡とってみたら、その時にちょうど空いてたみたいで、大丈夫ですよ、と。時期は2020年2月~5月ということで決まりました。

B : そのお友達に感謝ですね!

Y:本当に、そう思います。


いつも思う事なのですが、留学をした方は皆さん、行動力が素晴らしい!もちろん、事前準備が大切なのは間違いないのですが、えい!っと少し目をつむって飛び込むことで、次の道が開けるんだなあと思えるのです。
もう一つ大切なのは周りのアドバイスに耳を傾けること。そうしてチャンスを手にし、大規模ストライキの最中、2020年1月2日にパリに到着した由香里さん。実は私も同じ日の夜にパリに到着、翌々日にレッスンでご一緒したのでした。
その時は短い時間でお互い自分のレッスンに夢中だったので詳しいお話を伺っていなかったのですが、今思い返すと、これから始まる研修へのワクワク感でいっぱいの由香里さんの顔はとても輝いていました。ちょっぴりうらやましくなってしまうほどに。若さの特権だなと笑!

ところが、研修に入ってひと月ほど経った3月に状況が一変します。そう、あのコロナ禍でのコンフィヌモン(仏語でロックダウン)が始まったのです。お店はお休みになり、当然、研修も中断。それでも由香里さんは帰国せずにパリにとどまり、コンフィヌモンが明けるまでの2か月弱を一人で乗り越えたのでした。その時のことを伺いました。


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※このインタビューは2021年11月に掲載したものに加筆修正しています

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