ぽつん2

坂元棚田の特徴

坂元棚田は、かつて発生した大規模な地滑りによって生成された扇状地に作られた水田地帯である。その誕生には水不足を解消することが不可欠であったが、農業土木の技術者・松井梅次によって、水源計画、導水計画が立てられ、ようやく実現した。新しく誕生した農地は、当時の新しい農業の姿を形にしたものだった。

この地を最初に訪れたときに感じた私の衝撃は間違いではなかった。目に見える棚田の姿の中に、論理的にくみ上げられた緻密さを感じ取った。それは、地形や自然状況からなどを踏まえて、技術者によって合理的に配置された坂元棚田。同じ面積の区画が整然と並び、水路や道路がまっすぐと配置されたその姿は、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ整えられた多くの棚田とは自然と異なる。谷津田など水を利用できる場所から水田に変え、時代とともに徐々に水源を確保しながら、拡大させていった棚田は数多く存在する。坂元棚田は、近代化の流れの中で生み出された農業・農地の姿そのものだった。しかもそれが山中にポツンと存在する。昭和・平成の荒波から取り残されたかのように。


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