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最初の衝撃

はじめてその景色を見たときの衝撃を今でも鮮明に覚えている。

えっ?!これ棚田?

私が知っている棚田のイメージからあまりにもかけ離れていたその風景にとにかく驚いた。棚田といって思い浮かぶのは、山間部の傾斜地に段々に並ぶ水田で、形や大きさがまちまちなものである。たとえば、能登の千枚田とよばれる石川県白米の棚田は、そんなイメージにぴったりの棚田だ。ここにある水田の大きさはまちまちで、傾斜地にびっしりと並んでいるため、等高線に沿って形もまちまちなものである。日本海に面した斜面に広がるこの棚田の風景はとにかく美しいので、写真やTVなどで目にする機会も多い。

それに比べて、私が宮崎県日南市酒谷の山中で目にした棚田は、同じ大きさで長方形に整えられた比較的面積が大きめの水田が上から下まで整然と並んでいたのだ。

傾斜している土地に、水田が階段状に並んでいるが、こんなに整然と区画が整えられた水田群でも、棚田と呼ぶのだろうかと当時の私はまず疑問に思った。調べてみると農林水産省では、「傾斜二十分の一以上の土地にある水田を棚田とする」とあるので、棚田であることは間違いない。

坂元棚田と呼ばれるその棚田は、なぜこのような形状なのだろうか。他にも同じような形の棚田は存在するのだろうか。なぜ日南市の山中にこの棚田は存在するのか。いつ頃、だれが造ったのか。水はどこから引いているのか。

このときから、私と坂元棚田との長い関係が始まった。

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