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棚田の分布と地形

棚田は日本全国に分布している。1988年の農林水産省の調査によると棚田の面積は22万1067haであったが、2007年の中島の報告では、耕作放棄等による減少によって、約20万ha前後になっているという。棚田は全国に分布しており、中でも全体の約3分の2が西南日本に集中している。1999年に農林水産省によって発表された「日本の棚田百選」の認定地も全国に分布しているが、やはり3分の2が西南日本になっている。

棚田が西南日本に多い理由の一つは、地形配置と関連する水田開発の歴史の違いに由来するとされている。全国の棚田と地形との関係をまとめた中島(1999)によると、棚田は急峻な大山脈の地域には少なく、火山山麓や丘陵・台地などの緩斜地に主に分布する。

宮崎県には11地区の棚田が「日本の棚田百選」に認定されている。これは、16地区が認定されている長野県についで、熊本県と並んで全国で2番目に認定地区が多い。県内の認定棚田のうち7地区が五ヶ瀬町、高千穂町、日之影町の西臼杵地域で、阿蘇山の噴火によってつくられた火砕流台地の緩斜地に広がっている。高千穂町の栃又の棚田と尾戸の口の棚田は、岩戸川を挟んで両岸の台地の上にあるため、栃又の棚田側からは尾戸の口の棚田が、尾戸の口の棚田側からは栃又の棚田の全貌を眺めることができ、壮観な景色を楽しめる。この3町に椎葉村・諸塚村を加えた地域は、「高千穂郷・椎葉山地域の山間地農林業複合システム」として2015年に国連機関であるFAO(国連食糧農業機関)により「世界農業遺産」に認定された。

阿蘇火砕流台地は宮崎県西臼杵地域のほか、もちろん熊本県の広範囲に、また大分県竹田市や豊後大野市にも広く分布していて、これらの地域には、緩傾斜地が多く存在し、その多くに棚田が造られ、そのうちのいくつかが棚田百選に認定されている。

ちなみに熊本県阿蘇地域もまた「阿蘇の草原の維持と持続的農業」として2013年に世界農業遺産に、大分県竹田市・豊後大野市・佐伯市と宮崎県高千穂町・日之影町・延岡市はユネスコより「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク」に認定されている。

一方、棚田は地すべり地にも多く見られる(中島,1999)。地すべりによってつくりだされた保水性に富む緩傾斜地が、開田に適した土地として人々に好まれたためとされている。坂元棚田は、この地すべり地にひらかれたものの一つで、宮崎県内では唯一県南地区で百選に認定された棚田なのである。

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