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Ghost of an American Airman【ベルファストのU2】

  • 活動期間:80年代半ば~1993年?

  • 出身地:ベルファスト

  • メンバー:Dodge Mckay(Vo,G, Percussion), Ben Trowell(G,Vo), Alan Galbraith(B), Matt(D)

80年代半ばにベルファストで結成され、アルバムを三枚リリースして、アメリカやヨーロッパをくまなくツアーしたものの、オルタなロックの嵐に吹き飛ばされてピクリとも売れなかったバンドです。そのサウンドを聞くと正しくU2チルドレン。現在二枚のアルバムはSpotifyで聴くことができます。なおFacebookグループの管理人はドラムを担当していたMatt氏です。

元はTrineというバンド名で活動していたのですが、その後改名。Ghost of an American Airman(アメリカ人飛行士の幽霊)という奇妙なバンド名の由来は、第二次大戦中北アイルランドには米空軍が駐屯していて、その駐屯地の一つファーマナ州にあるCastle Archdaleで、彼らのマネージャーの友人がアメリカ人飛行士の幽霊を見たという逸話が由来だそうです。

バンドは北アイルランド各地でライブを重ね、次第に評判を高めていったようです。時はU2の「The Joshua Tree」がビッグヒットとなり、レコード会社各社が”The Next U2”を血眼になって漁っている時期でした。ということでそのDodgeとBonoと同じく一つの名前だったため、常にU2と比較されていたようです。
バンドのFBに一ファンが当時のことを回顧しています。

彼らは古ぼけたアメ車に乗って地元のパブにやって来た。会場はポートダウンのステーキ屋で80年代後半のことだ。客は20人もいなかった。ロック的な夜ではなく、他の出演者はみんなフォークバンドだった。シンガーはとても礼儀正しい人間に見え、マネージャーのNigel Hamiltonとバーのところで話していた。他のメンバーはずっとプロ風だった。話し合いが終わると、シンガーはステー上のバンドのところに行って、ライブを始めた。途端に彼はプロのビジネスマンからクレイジーなフロントマンに様変わりした。シャツの裾を捲りあげ、髪を振り乱し、物凄いパフォーマンスをした。数少ない客の一人だった僕はびっくり仰天した。Iron Maidenみたいな曲をやるいつもの馬鹿バンドだと虚仮にしていたからね。けれどもバンドを一聴して僕はそのサウンドを本当に気に入った。休憩中にギタリストと話した時、彼はGrey Stokeという前のバンドでIron Maidenの曲を腐るほどカバーしたていたと言っていた。こんな細かいことを覚えているのは、Ghost of an Americam airmanが十代だった僕に強いインパクトを残した証拠だろう。

1988年
Plain Paper Recordsという恐らくは自主レーベルからリリースしたファーストアルバム。聴いたことがないので内容はわかりません。

アルバムのリリースの2年前の1986年にRecoil Recordsという恐らくは零細レーベルからリリースされたリードシングル。ルックスがかなり行けておらず、このへんも正統なU2チルドレンです。

1992年
最初はAtlantic Recordsと契約、レコーディングは1990年に行ったのですが、件の契約がポシャり、レコーディングの二年後、当時まだ新進レーベルだったHollywood Recordsからリリースとなりました。
プロデューサーはACDC、Cold Chisel、INXSなどを手掛けたオーストラリア人・マーク・オピッツ。当時オーストラリアのレコードショップでGOAAAの曲が流れていたという証言がありましたが、恐らくはこの関係でしょう。
ちなみにアメリカのamazonには5つ、イギリスのamazonには1つのレビューが掲載されています。

「彼らには自分たちの曲を書く才能があり、ライブも素晴らしかった。アルバムも素晴らしいが、残念ながら彼らはそれに相応しい商業的成功を得られなかった」

Dodgeのスケールの大きなボーカルが初期U2のボノのようにアルバム全体を支配している……不運にも彼らはグランジの波に飲まれて人気を博すことはなかった。偉大な才能の持ち主なのに、これは犯罪的だ!」

彼らはU2と比較ばかりされて、自分たちの音楽が正統に評価されていないことにうんざりしていたように思う。けれども彼らには商業主義と利己的な慈善活動に陥る前のU2にあったロックの輝きがある」

知らない人に聞かせると、みんなU2と勘違いする」

アイルランド限定でカセットテープでのみシングルカットされています。バンドの代表曲と言ってもいいでしょう。青臭さ全開でU2ファンにはたまらない……かな?

アルバムリリース後はアイルランド、ヨーロッパ、USを回るツアーを敢行したようです。ちなみにUSツアーはデジロックJesus Jonesの前座として回りました。
当時のツアーのポスター。Irish rock in the tradition of U2 and the Alarmの文字が見えます。The Alarmはウェールズ出身ですけどね(笑)。
また右下にあるThe Wallflowersは、後年DodgeがThe Wallflowersの元メンバーとバンドを組んだことからして、まだ無名時代のジェイコブ・ディランのThe Wallflowersと思われます。

こちらにはThe post U2 comboの文字が見えます。

アイルランドのテレビ局RTEのRTE Nighthawksという番組に出演した時の映像です。

1993年
前作とほぼ同じ路線。プロデューサーにはSonic YouthとPublic Enemyを手がけたニック・サンサーノ、Manic Street Preachersにも関わったことがあるフランク・リバリュー、グレン・キャンベル、Mutemathを手がけたジュリアン・レイモンドがクレジットされています。その関係かグレン・キャンベルのWichita Linemanのカバーが収録されています。

Billboard Mainstream Rock Tracksで38位を記録。そこそこ売れたんですねー。

アルバムリリース後ツアーに出ましたが、アルバムのセールスが惨敗したのでレコード会社の支援をほとんど得られず、自分たちでヴァンを運転し、ライブハウスにアポを取り、他人の家の床に寝るというドサ回りだったそうです。
1993年11月24日、テネシー州のメンフィスにある616 Clubというところで最後のライブを行いました。観客は50人ほどだったそうです。
そしてこの年の末Hollywood Recordsがスタッフとアーチストを大量解雇した際にバンドも契約を切られ、解散となりました。解散を悲しむファンの一人は「グランジに殺された」と嘆いていました。

バンド解散後、DodgeとAlanはThe Sunday Clubというバンドを結成。その後Thompsonと改名して1997年に『Gravity Suit』というアルバムをリリースしています。ややエレポップ寄りの静かな曲の多いアルバムで、これもSpotifyで聴けます。またDodgeはボブ・ディランの息子・ジェイコブ・ディランのバンド・the Wallflowersのギタリストだった Michael WardとThe Monday Morningというバンドを組んだこともあります。動画は2016年のDodgeのソロライブの模様で、10年前はまだ音楽活動をしていたようですが、既にFacebookアカウントもXアカウントも消えております。


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