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人魚と半魚人のおかしな身の上

 定かな記憶ではないが、小学生時代に児童雑誌で「アマゾンの半魚人」という怪物の絵を見たことがある。
 姿形は人間だが、全身がうろこに覆われていてひれもあり、手足の指には水かきがある。顔は人間と魚を足して二で割ったような、人間と魚がうまいぐあいにミックスされた恐ろしいやつだった。
 いまはどうしているかと思い、「半魚人」で検索してみたらけっこうヒットした。いまだ健在でご活躍のようだ。

 さて、同じ人間と魚のミックスでも人魚となると話は別だ。よく知られているように、へそのあたりを境にして、上半身が人間で下半身が魚と、明快にはっきりと分かれている。
 どうでもいいことを大まじめに考えてしまう能天気な私は、人魚と半魚人との、その妙な相違が昔から気にかかっていた。

 ここから先はちょっとややこしいのでじっくりとお読みいただきたい。
 「人魚」は名前から判断すれば魚であると解釈できる。魚として認識されているがゆえに「人(の形をしている)魚」なのだから。
 魚ではなくて人間だというなら、名前を「魚人」としなければならない。

 一方の「半魚人」は、人魚の理屈同様、名前から判断すれば人間であるととれる。「半分ずつ魚と人間の要素が入り混じっている人」であると。
 人間ではなくて魚だというなら、これも人魚の理屈同様、「半魚人」ではなく「半人魚」としなければならない。

 さらに一歩踏み込んで、人魚も半魚人も半分は魚だから、ほんとうなら人魚にも「半」がつかなければならない。しかし、そうなると何がなんだかわけがわからなくなる。そうでなくても何がなんだかわからないのに。
 そもそも、人間と魚が半々という点では人魚も半魚人も同列同格で、魚か人間かという以前にどっちも怪物だ。

 というわけで、結局ご両人は魚でも人間でもなく、「怪物」ということで決着。どうでもいいけど、ちょっと興味がわいたので話のタネにした次第。

 ところで、「人魚」の呼称を「魚人」にした場合、字の順序が逆になるから、それに連動して姿形も逆にしなければつじつまが合わない(そんなことはないけど)かな、と思ったりした。
 つまり、上半身が魚で下半身が人間となる。ややっ!? これは、不気味なうえに卑猥さが加わって、いっそうおかしな存在になるではないか。
 やっぱり元のままがいいや。


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