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身に覚えがない

〔解説〕

 身の回りやドラマ、事件の報道などでもよく見聞きする言葉である。悪いことをしたときなどに、それを否定する意味で使われることが多い。
 日常にもあまり違和感なく溶け込んでいるため、古くからあることわざと思われがちだが、ことわざとして認められたのは本辞典が初である。

 それとはまったく反対の意味を持つものに「身に覚えがある」がある。これは、「自分がそのことに関わったという記憶がある、あるいは思い当たることがある」という意味で、ほとんどの場合、後ろめたいイメージを伴っている。(※「身に覚えがある」は、ここではことわざとしていますが、実際には慣用句と解釈されています)

〔さらに解説〕

 本家とも言える「身に覚えがある」よりも、実際には「身に覚えがない」のほうがよく使われていると思われる。
 これらが使われるシーンというのはほぼすべて、悪いおこないに対して否定するか肯定するか、そのどちらかの場合である。

「凡太くん、今日の漢字テストでカンニングしただろう」
「せ、先生。何を根拠に、そ、そ、そんなことを。身に覚えがないです」
「さあどうかな。凡太くんの間違いかたは、隣の席の凡子ちゃんとまったく同じだったぞ」
「うう、なんてこった」

「ねえ色吉さん、上着のポケットに変なものがはいってたわよ。どこの誰とどこで何をどんなふうに何回してきたのよ」
「なんだよ、その、いきなりの、やたら細かい追及は」
「つべこべ言わずに吐きなさいよっ。身に覚えがあるでしょっ」

 というぐあいだが、参考のため、適さない例もあげよう。

「そこの学生さん、お呼びだてしてすみませんが、あなた先ほど、転んだお年寄りを助け起こしてあげましたよね」
「はい。ぼく、確かに身に覚えがありますけど」

 これではやはり変な感じになるので注意が必要である。

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