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The Favourite/女王陛下のお気に入り

不毛すぎる。戦争中ながら不毛な議論や思考を繰り返す貴族たち。

だけど本作は政治のことは置いといて、政治に関係なく進んでいく女王の寵愛をめぐる物語。一番女王を愛し、政治のことにも真剣に取り組んでいたレディ・サラがダイアナ妃やチャーチルの祖先というのも納得。(この茶番劇の中では一番まともな気がする)だけどまともな人間が一番魅力的かというとそうじゃない。
レディ・サラと張り合い、蹴落としていくサラとは従姉妹のアビゲイル。彼女さえ来なければ宮廷はサラの天下だったはず。
でも性格がいいとか悪いとかではなく、とにかく男も女も引きつけていくアビゲイルの魅力と策略はすごい。サラを陥れ、男たちを手玉に取り、アン女王の寵愛をかっさらっていく。この勢いが表現できるのは、やっぱり今はエマ・ストーンしかいない。体を張った演技と自分のことしか考えていない傍若無尽な思考回路を醸し出す不敵な笑み。一体この女性のここまでの人生はどんなものだったのかと知りたくなる。それこそがアビゲイルの魅力でもあるのかもしれない。

しかしながらアビゲイルは当初からそこまでの野心を携えていたのだろうか?
最初にどこまでも人として扱ってもらえないのはアビゲイルの方だ。何も悪いことはしていないはずなのに、とにかくひどいいじめを受ける。アビゲイルの本性を目覚めさせてしまったのは、むしろ周りの方じゃないのかと思う。

最後まで「いい人」が誰一人として出てこなかったけど、結局一番の大物は主演女優賞にもノミネートされたオリビア・コールマン演じるアン王女だった。
女王の前ではアビゲイルなんてただの小娘だったのだ。

ストーリー以外にも注目すべき点はたくさん。
まずは衣装と美術。時代考証は無視して作ったというドレスやインテリアは、ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」の悪夢版といった感じ(あちらはフランスだけど)。更にカメラも魚眼レンズや超広角レンズを多用していて、今までに見たことのない不気味な雰囲気を醸し出す。だけど最初こそ不気味に思うが慣れてきてしまうのが人間というものであり、それこそが宮廷内にいる者の考え方なのかもしれない。

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