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似鳥昭雄 「ニトリ 成功の5原則」

 似鳥昭雄氏は現ニトリホールディングス会長、ニトリの創業者としてテレビにも出演する有名人だが、知名度向上に一役買っているのはテレビで毎年のように日経平均株価を的中させていることだろう。近年は私の履歴書での連載が話題になった。

本書は会社経営で成功できた理由を似鳥氏が率直に綴った自叙伝である。似鳥氏は成功のための5原則は ①ロマン(志) ②ビジョン(中長期計画) ③意欲 ④執念 ⑤好奇心 として、本書でその重要性を繰り返している。ニトリのロマンは日本人の暮らしぶり、インテリアを変えて生活に貢献することである。

成功の5原則

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似鳥氏が若かった頃、店舗経営にうまくいかず悩んでアメリカの視察旅行に行った。アメリカでは家具や内装が安く、それでいて質もいい。そこでの感銘が似鳥氏の心をうち、売上や利益のことでいっぱいだった頭が日本人の暮らしぶりを変えたいというロマンに切り替わったという。

みなさんも、今やっているのがどんな仕事であれ、その世界で成功するために、「この仕事は人のため、世のためにやるんだ。そのために今の仕事を選んだんだ」という「ロマン」をぜひ、持ってください。それがあなたの生き方を変え、あなたを成功に導いてくれるはずです。

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目標が期限付き、かつ明確であるべき理由は「思考は現実化する」など、多くの自己啓発本に共通している点である。似鳥氏は30年計画を立て、売上が1億6,000万円のころから売上1,000億円を目指す計画を立てていた。この30年計画は最終的に1年遅れで達成している。

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「ロマン」「ビジョン」の定性・定量的大目標に向かってどう進むかが、意欲・執念・好奇心だといえる。

第2期30年計画の「2032年に3000店」という目標を心に焼き付けるために、私の車のナンバーも「品川 3000」にしています。車に乗るたびに、「あ、3000だ」と思い出します。同じ数字を自宅のトイレの壁にも、寝室の天井にも貼ってあって、寝るときにも毎晩、見ています。

渥美俊一氏との出会い

似鳥氏が駆け出しの経営者だったころ、チェーンストア理論について書かれた書籍を偶然手にする。その内容に目から鱗が落ちた似鳥氏は著者の経営コンサルタント渥美俊一氏に教えを請うため、氏の主催する勉強会「ペガサスクラブ」へ入会する。渥美氏からロマンの重要性を説かれた似鳥氏は、中長期計画を立て直し、そこから渥美氏の教えの通り経営していく。

100倍発想

ペガサスクラブで渥美氏に、目標は100倍に設定することを教わった。

従来の2倍とか3倍というレベルなら、それまでの継続で達成できる。しかしそれまでの100倍となると、過去と同じことをしていては決して達成できない。たとえて言うなら、それまで足で歩いていたものを自転車に乗り換え、さらに自動車に乗り換え、そこからさらに飛行機に、さらにロケットに乗り換えるような発想の転換が必要になる。自動車に乗ろうと思ったら、そのためには自分が免許を取らなくてはならない。つまり経営者自身の成長も求められる。

繰り返し周りにそれを話す

渥美氏に経営計画を承認してもらうと、似鳥氏はそれを周囲に公言し、事あるごとに聞かせた。

私も最初は「先生に言われて『100店 1000億円』なんて書いたけど、そんなのできそうもないなあ」と思っていたわけです。でも寝ても覚めても「1000億円いくんだ、いくんだ」と言っているうちに、だんだん自分もその気になってきたんです。誰かに話すということは、自分に対する暗示でもあるんですね。

目標を分解し、最小単位は週にする

会社全体の30年の目標を細分化し、年52週、店ごと、地域ごと、商品ごとに数字を出す。最小単位を週にして週次で試算表を作ることで、販売に問題があるときにリアルタイムにそれを検知したり、曜日の構成が一定なので週ごとの比較をしやすい(月次だと休日の数が変わって売上に響くため)。

年間計画については、1年間の52週で作り、その下が四半期にあたる13週の計画で、さらに各週の中に「単元」というものがあります。1年が始まる前に、52週の計画の中に、「その週に何をするのか」という行動予定を入れてしまうのです。この単元は年間で数百あります。人によりますが、少なくとも300~400単元、多い人では600~1000にもなります。
マネジャーは毎週レポートを提出し、その中で観察・分析・判断を求められます。
あらかじめ計画を立てないまま、その年が始まってからいきあたりばったりに行動していると、「こうやってみてもうまくいかなかったから、ああやってみる」という具合に、無駄な時間と作業が多くなります。計画を立てておき、先を見て仕事することが大切です。

私の履歴書で伝わる豪胆なエピソードと裏腹に、似鳥氏が合理主義でマネジメントが社内に行き渡っている様子が見て取れる。

5大スローガン

先に述べた5つの成功法則とは別に、ロマンを実現するための主義として5か条を提示している。

①一番主義・・・なんでも1番を目指す
②集中主義・・・得意な分野に集中させ、経営を多角化させない
③先制主義・・・まだ誰もやっていないことをやる。
④経験主義・・・なるべく多くの経験をして失敗を恐れないこと。
⑤ビジョン主義・・・目標からやるべきことを逆算すること。

運の創り方

似鳥氏いわく、運には創り方があるという。それは逆境であきらめず、努力し続けること。そうした人にようやく運が向いてくる。

運があるからヒト・モノ・カネが集まってくるのではありません。執念がロマンとビジョンから生まれるように、運もロマンとビジョンから出てくるものなのです。

こういった考え方は7つの習慣でいう”インサイド・アウト"に通じるし、神様は試練を与えて逆境を乗り越えた人にだけ成功の果実を与えるという考えは「思考は現実化する」に通じている。

似鳥氏の仕事術

私は今、1日に200から300の決裁をこなしています。それだけ決裁のスピードは速いのですが、失敗はたくさんしています。失敗しないことより、決めることが大事です。とにかく攻めること。成功するのは攻める人です。
(略)
熟慮ということはしないで、10秒か20秒で決定します。処理能力を高めるためには、何事も「即断・即決・即行」で、翌日、翌週には持ち越さないことです。間違ったらやり直せばいいのです。

マクロなところでは精緻な計画を重視しているが、ミクロなタスクや似鳥氏個人は失敗を恐れずに物事をぱっぱと決めるタイプのようだ。

本書の教訓

似鳥氏の成功哲学は「7つの習慣」や「思考は現実化」するなど、定番の自己啓発本に通じているところも多い。それらを教科書しつつこの本を副読本にすれば理解が深まると思う。このように、成功者の考え方には一定の法則があり、表現の差はあっても本質的には共通している。大事なのは日々の生活・仕事の中でそのマインドセットを持ち続けることである。

本書の裏の教訓

似鳥氏のように優れた経営者も、我流経営では地方の一家具屋止まりだった。日本を代表する企業にまで成長できたのは、渥美俊一氏という優れた師を持ち師の助言を忠実に聞き入れたからである。経営者として未熟なうちは、信頼に足る優れた師と関係を築き、師のアドバイスどおりに経営したほうが良い。





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