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【読書会】宮本輝『流転の海』全巻読書会~第2部『地の星』第7章

こんにちは。

今回(10月17日・24日実施分)は、第7章のページ数が多いため、2回に分けての開催としたいと思います。17日段階では「概略」までとし、「ポイント」は24日開催時に追記の上、再公開いたします。

※17日に「録音」した記録が、30日間 こちら から 聞くことができるようになりました。
※24日の記録は こちら です。

第7章の「概略」

  1. ダンスホールがオープンする2月1日、熊吾と伊佐男が対峙する。

  2. ダンスホールは盛況。政夫の急逝で、房江も熊吾も仕事にかり出される。

  3. 千代麿から、大阪の不動産入手について打診される。

  4. 音吉に自転車屋を開業しないかと熊吾がもちかける。

  5. 伸仁5歳の誕生日の記念撮影をしに出かける。

        *       *       *

第7章の「私的」ポイント

  1. 「日の丸や軍刀に敬礼するんじゃあらせんぞ(略)父さんの友だちに敬礼するんじゃ」(p.356)

  2. 「その十年を、どうしのぐかは、あの子の人徳次第じゃ」(p.359)

  3. 房江は、酔うと虚無的になるのだ。それが、一見、房江を楽天的に見せるのだ(略)つまり、何もかもどうでもよくなるのだ(略)何もかも、どうでもいいと思わせてしまうような酒は、やめさせなければならない(p.361)

  4. 「金沢で約束してくれたことを、守ってくれへんかったから・・・」(p.364)

  5. 「運がわるいんやあらせん。愚かなんじゃ。ただ、あいつには悪意っちゅうもんがない」(p.366)

  6. あるいは、人間の鍛えられ方という点においては、俺よりも一枚も二枚もうわてかもしれない・・・(p.367)

  7. 俺は、やはり何かを急がなければならないのではないだろうか。しかし、いったい何を急いだらいいのだろう(p.368)

  8. その四十人近い若い男女の群れは、熊吾には、新しい時代にうごめく大群衆に映るのだった(p.378)

  9. 敗戦によって、日本という国は何を得、何を失ったのだろう。時代が大きく変化するときは、必ず異なった思想や文化を得るのだが、同時に独自の思想の濃度は薄まり、あてがいぶちの文化にきりきり舞いさせられる。国粋主義者には我慢のならないことだろうが、少なくとも、こんどの戦争だけは、その国粋主義者であることを商売にしているやつらが片棒以上のものをかついだのだ(p.380)

  10. 「わしは、さっき話したようなことをずっと考えながら、熊おじさんに子供が授かったのはなんとええことかと、つくづく思いましてなァし(略)何年ぶりかで逢うた熊おじさんは、前よりももっと優しいお方になっちょりなはった・・・」(p.385)

  11. 「お前はなんと親孝行なことじゃろう。わしは、親孝行な人間が不幸になったのを見たことはあらせん。お前は、きっと幸福になるぞ」(p.406)

  12. 〈決して荒だたない父〉の役を、俺は担ってやらなければならなかったのだと思った。――なんと、簡単なことを、俺は演じられなかったことだろう――(p.408)

  13. 〈いなか者根性〉とは、ひとつの小さな地域から生じる共同意識によって育まれた修羅の命のことであった。恨みや嫉妬の心が強く、自分よりも強いものにはしっぽを振り、弱いものには徹底的に咬みつこうとする。そのような人間の性根を、熊語は〈いなか者根性〉と呼んでいた(p.415)

  14. 「人間ちゅうやつは、必ずいつか〈お里が知れる〉もんよ」(p.418)

  15. 「持って生まれたもんだけは、どうしようもない」(略)もし伸仁に、持って生まれた天分がそなわっているとしたら、いつかその天分が花ひらくための点火物となるような話をしておくことはできないものかと考えたのである(p.419)

  16. 「心根の汚い人」(p.421)

  17. 「戦争ほど無意味な浪費があるかや。人間から大切なものを何もかも盗っていくんやから、これほどの浪費があるかや。儲けるのは兵器を作るやつらだけじゃが、天はかならずこいつらを裁くぞ」(p.430)

  18. 「これだけは人間としてやっちゃあいけんちゅうことをやった人間は、いつかまた必ず、おんなじようなことをしよる。これは、人間を見るうえでのひとつの鉄則なんじゃ」(p.430)

  19. 「つまり、素直でないやつは、あるところから先へは成長しよらん」(p.431)

終了後の追記

  1. 房江は熊吾からDVを受けていたのであり、それを伸仁が見ていたのは、児童虐待に相当する。この小説では、熊吾世代の成長譚、ビルドゥングス・ロマンでもあるが、当時の男性の未熟さが熊吾に象徴的に現れている。それらを、「時代のせい」として免罪はできないが、「断罪」もできないのではないか。

  2. 熊吾や音吉らを通じて、激しく戦争を、時に大胆に告発している小説。


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