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アメリカ競馬の「魔術師」の業績 〜サンデーサイレンスの母を生産した男 ジョージ・A・ポープ・ジュニアとは・2

まず断っておくが、いくつかの事実から推測するに、サンデーサイレンスの母を生産したジョージ・A・ポープ・ジュニアは遊び半分や惰性、無謀な蛮勇で競馬に関わっていたのではない。

こんなことは少し調べれば分かるのだが、日本で血統を研究している人にはあまり関心を持たれないようだ。

そもそも「ジョージ・A・ポープ・ジュニアとは何者か?」という興味を持った日本人は私以外にこれまで1人しか見当たらないほどだ。(いたらグーグル検索して、ニコニコ大百科以外に何件か引っ掛かってくるでしょう)

なのに、やれサンデーサイレンスは貧弱な血統、これ以上ない雑草…、といった低い評価が、さも事実のように国内外で語り続けられている。
いくら太平洋を隔てているからと言って、もう少し生産者に対して敬意を払ってもいいはずだ。

人はあまりに天才すぎると、他人に理解されないという事がある

他人に理解されないどころか、奇行と取られることもある。
下の記事では、コメディアンの藤井隆氏や歌手の加山雄三氏のエピソードが紹介されている。

https://www.asahi.com/and/article/20190405/1356262/

彼らは奇行そのものが敬意の対象である。少なくともそう理解できる人がいる。

ふりかえって、「ジョージ・A・ポープ・ジュニアの業績」を調べていて、これまでただ1冊の本も書かれず、1ページのwikipediaすら存在しない現実はなんとも悲しい。そしてどうしてもこの心境に至る。

…分からないのはいいとして、どの口が「最低ランクの雑草血統」だって言ったんだい?



では気を取り直して、サンデーサイレンスの母を生産したジョージ・A・ポープ・ジュニアがどれだけのホースマンであるかを列挙していこう。

ジョージ・A・ポープ・ジュニアの、競馬界における業績

  1. 先祖代々カリフォルニア州(*馬産地としては辺境)の馬産にこだわり続けたホースマンである

  2. 貧乏どころか、かなりの富豪である

  3. アメリカ競馬史上、5例しか無い「カリフォルニア州産のケンタッキーダービー馬」を生産&所有した

  4. その2年後、あわやケンタッキーダービー2勝目のところまで行った(それも誰も知らない無名の種牡馬を使うというガンギマリ具合)

  5. それに飽き足らずカリフォルニア州産の牝馬をイギリスに持っていった

  6. その馬を現地で繁殖入りさせたら無敗の英二冠牝馬を生産してしまった

  7. その二冠牝馬の母馬をアメリカに戻して生産を続けたら全米チャンピオンスプリンターを生産してしまった

  8. その間ずっとカリフォルニア州で馬産を続け、後にサンデーサイレンスを生む牝系を育て続けた


業績を調べていくうちに「これホンマか?」と何度も確認するような、トリッキーかつ前人未到な事を次々やってのけている。
ある意味では本家のフェデリコ・テシオを超えてしまった所もある。

ホラ話だと思われるといけないので、「6」について証拠を示しておく。その牝馬の名をミステリアス Mysteriousという。

ジョージ・A・ポープ・ジュニアは、よくある「シンプルにとっても幸運な人」などではない。

馬産辺境の地カリフォルニアに牧場を作って、ケンタッキーダービー馬生産しちゃいました、ついでに(一見地味な)牝馬を英国に送ったらその娘が無敗の英国二冠牝馬になっちゃいました…なんて天下のノーザンファームが100年かけても達成できるとは思えない。
この男、まさに「魔術師」である。
この魔術師が後にサンデーサイレンスの母となるサラブレッドを生産するにあたって、C級血統に対してC級血統を何代もなんとなく惰性で重ねていたのだろうか?

この業績がサンデーサイレンスと結びつく?

ジョージ・A・ポープ・ジュニアの業績トピック8つのうち、「1から7まで」は、夫人の不報に際してBloodhorseで業績を報じられたこともあるだけに、アメリカで競馬ファンに知られている部分もあるはずだ。
だが、「1から7」と「8」を結びつけて情報にまとめられていることは、今のところ全くない。

「1から7」と「8」が無関係なのか?、関連づいているのか?、その真相は直接本人に聞くしかなかったのだが、残念ながらそんな報道は存在しないようだ。
話を聞きそびれた。これは取り返しのつかない損失だと感じられないだろうか?

そこで血統の出番である。

情熱の有無

サラブレッドの血統は、きちんと読みこなせば「履歴書」である。「意思を刻みつけた銘板」である。
だがほとんどの血統評論家は「ビジネスツールあるいは情報商材」「商店の玄関に立てる三角看板」だと勘違いしているがゆえに、そこに気付くことができない。

私は「血統表を読む」という正攻法を使って、ジョージ・A・ポープ・ジュニアがどれだけの情熱を注いでサンデーサイレンスの母ウイッシングウェルを生産したかを証明したいと思う。

サラブレッドは生産者が思いを込めたとして、思い通り走ってくれる動物ではない。思い通り生まれることすら難しい。
だからといって(結果が出た出ないに関わらず)「情熱を込めていた」のと「(なるようになれと)運まかせor精神論にすがっていた」のは全く違う。
派手さが欠けていた事を理由に「情熱までもが欠けていた」とされては、たまらないというものだ。

ジョージ・A・ポープ・ジュニアへの贖罪とともに、少なくともウィッシングウェルは”誰か”が書いたような、

・最下層のCランクの地味な配合
・もうこれ以上の雑草はないといった感じの極めつけの地味
・6代前まで探さないと活躍馬のいない母系血統は存在した事自体が珍しい。
・代々配合されてきた種牡馬もこれまた全くの無名で、判で押したように
「CランクにはCランク」
・地味に伝えられてきた雑草血統

(出典は…あえて伏せましょうか)

…などと下に見られるような配合は何一つしていない。それを競馬ファンにはまず予備知識として知ってほしい。


今回の連載は最後まで無料で書きます。サンデーサイレンスへの正当な評価を広めるためです。長い間誰も触らなかった話題ですので、慌てず騒がず、後々まで残る情報が書ければと考えています。 (最後まで読めたら「読んだぜ」のメッセージ代わりに♡を押して貰えれば十分でございます。)