空聾

毎日の事 すれ違う人 クラクションが嫌味ったらしく鳴り響いて
連鎖する罵倒 消えかかる感情 イアフォンを耳に押し込んで聞こえないふり

惰性で進め、それが定石 昔黒板にそう書いてあったから
色のない空を眺める僕等 一体いつになったら 此処から出れる?

逃げ続けた事の顛末 目を逸らす爛れた現実
憧れた日々には程遠い そりゃそうだじゃなきゃ報われねぇし
クソみてぇだ、馬鹿みてぇだ なのに当然に腹減るし
死にたいと嘘をつくみたいで なんだかただ格好悪いよな

高めの空を泳いだ鳥の美しい羽ばたきも
乾いた大地に根をはる木々の暖かいざわめきも
このままじゃ聞こえないよ

無音の街をひたすら歩く 景色が丁度見慣れなくなってきた頃
思い出した様に空を見上げて あの頃と何も変わらないな、僕ら以外はさ

忘れ去られた君の憂鬱 測りきれぬ距離の先の心
不明瞭な音色に導かれ 名もなき唄を口遊むだけで
笑えねぇし、泣けもしねぇし なのに単純に眠くなるし
逃避が板に付いたみたいで なんだかただ格好悪いよな

帰り道を項垂れて歩く人々の足音も
追い詰められて押し込められた今日に響く悲鳴も
今のままじゃ聴きたくないよ

暗闇にしかみえない未来に、怯えて、怯えて縋る方法も知らずに
答えが無い自由な世界の、酷く冷たい残酷さに泣き喚いてら

終わりの街、一人揺れるブランコ
日常、空想、理想郷の廃材
感傷、焦燥、過去の忘れ物
今は亡き、記憶の輪郭をなぞる

酔い潰れて吐いて、塗り潰した過去も、忘れようとした今も
生まれた街の変わらない朝も、飲み込んで元通り
汚れちゃった僕等が、引き摺って行く足が、刻みつける足跡も
思い描いてたいつかとは違うけど、少しでも描き足さなきゃ
それでも、耳を澄まさなきゃ
それなら、虚しくはないでしょ?

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