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子鹿物語

この頃は脱線ばかりですみません😅
本日はちゃんと子供の頃に読んだ本です。
こちら。

これもNHKのアニメだったかな?アニメから入って原作を読んだクチです。
子供向けとはいえわりとヘビーな内容です。
豊かですが厳しいフロリダの自然の中で、開墾生活を送るバクスター家の親子。ある日狩りの途中で父・ペニーがガラガラヘビに噛まれてしまいます。とっさに近くにいた鹿を撃ち殺し、その肝臓を使ってガラガラヘビの毒を吸い出すのですが、そのそばには小さな子鹿が。息子のジョディは父に頼んでその子鹿を連れ帰り、フラッグと名付けて飼うことにします。可愛らしいフラッグに夢中になるジョディ。いつも一緒に過ごし、楽しく暮らすのですが……。
時代設定は19世紀、南部の開拓時代で、『大草原の小さな家』とにた雰囲気のお話。
ですが『子鹿物語』の方は暗い雰囲気を全体にまとっています。子供と子鹿の可愛らしい交流の物語と思って読むと、ちょっと辛いかも。
まず父親のペニーあまり体は丈夫ではありません。とくに物語の後半ではほとんど働けなくなってしまいます。母親のオリーはジョディの他にもいた子供達を何人も亡くしており、その経験からどこか心が壊れてしまったのか、子供を愛することができなくなっています。そのためジョディに対しても冷淡な態度をとることも多く、ジョディは寂しさを抱えているのです。ペニーの方は逆にやっと育った息子であることからジョディに愛情を注いでいるのですが、やはり母親の愛情を与えられていないことはジョディに少し影を落としているように見えます。
少し歪で問題を抱えながらもなんとか生活しているバクスター家。隣人のフォレスター家に助けられたりしながら、苦しいながらも暮らしていましたが、水害にみまわれたりと困難は続きます。自分たちが食べていくのがやっとの生活。
そんな中、成長したフラッグが問題をおこしてしまうのです。フラッグはせっかく育てた作物を食い荒らすようになってしまいました。柵をしても飛び越えてしまう。
ただでさえ楽ではない生活、母のオリーはとうとうある決断をするのですが……。
フロリダの雄大な自然が描かれ、美しい光景が目に浮かぶようですが、やはり自然というのは美しいだけではないということが描かれています。凶暴な熊、“スルーフット”やオオカミなども登場し、野生動物の脅威との戦いも描かれるのです。作者自身も原生林の中で生活した体験があるそうで、この辺りの描写はとてもリアル。スルーフットの足跡や糞を追い、巨大な熊を仕留めるまでのところは手に汗握る緊迫感もあり、シートン動物記のオオカミ王ロボのエピソードを彷彿とさせるようなリアリティがあります。
生きるために。
その厳しさが児童文学といえどきっちりと描かれています。タイトルの可愛らしさからはちょっと想像できない内容。作者自身が体験したからこそ、子供向けとはいえ甘ったるい物語にはしたくなかったのでしょう。自然の中で必死に生きようとする人々、美しい面を見せたかと思えば怖しい面を見せる自然。
その中に身を置き、幾つもの困難や悲しい出来事を通して少年から大人へと変わっていくジョディ。時代が違えばまだまだ子供でいられる歳ですが、否応なしに一人前にならざるをえない開拓時代の厳しさ。そんなものがひしひしと伝わってくるのです。
フラッグとの残酷な別れは、ジョディの少年時代の終わりなのです。病床の父に変わり一家を支えていく存在になる。その時父はジョディを一人前の男として扱い、自身の思いを伝えるのです。
読後感はどすんと重く、いろんなことを考えさせられます。“子供”でいられることの幸せ、守られていることのありがたさ。否応なしに大人にならざるをえないことのキツさ。
“生きる”ということそのものが困難な時代。
その中でどう生きるか。そのことを描いていた物語。
ほのぼのとした動物モノを想像させがちなタイトル詐欺と言いたくなるような作品ですが、名作だと思います。
鹿の獣害を経験していると余計身につまされるところもあったりなんかして。
アニメの方はこんなにヘビーだったかな?そのあたりの記憶がちょっと曖昧ですが💦少なくともお母さんは普通に優しいお母さんだったような。アニメ版もまた見たいなあ。
大人になってから読むと、物語のいろんなジョディにとって辛いであろうところも仕方なさの方を感じてしまうので、子供の時に読んでおいて良かったと思ったりもします。どうしてもこういう厳しい状況を描いた作品だと、子供らしい気持ちよりも大人の「こうするしかないんだ」っていうところに共感していまうので😅
自然の中で生きるということ。共生という甘い言葉では括れないその困難さを知ることができますし、1人の少年が“男”へと変わっていく成長譚としてもよく描かれた物語です。

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