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ニルスの不思議な旅

笛のついた赤い帽子を被った小さな男の子。
ニルスといえばNHKアニメが最初に浮かぶ世代なんですが、原作も大好きです。

私は岩波のジュニア文庫で読んだように思うんですが、今はもう無いのかな?全訳とついているけど岩波は全訳じゃなかったんだろうか……。
今手元にないのでわからないのですが💦
うーん、でも全訳とあえて書かれてると気になってしまうな。また読もうかな。
アニメで好きになって、アニメを見ていた頃よりももう少し大きくなってから読んだんですが、まずニルスが14歳なことに驚くという(笑)。小学生ぐらいかと思ってました。それにしちゃずいぶんと幼稚なイタズラが多いような。
主人公のニルスはとんどもないイタズラ坊主で、動物をいじめたりとあまりいい子ではありません。日曜のミサもサボったりとなかなかの問題児。ミサをサボったニルスは小人を見つけてまたもやイタズラを仕掛けます。怒った小人に小人になる魔法をかけられて小さくなったニルス。小さくなったニルスは動物の言葉がわかるようになり、今までいじめていた動物にここぞとばかりに仕返しをされそうになります。そこにたまたまいたガチョウのモルテン。ニルスはモルテンを捕まえようとするのですが、モルテンはモルテンでガンに飛べない鳥とバカにされたのが悔しくて飛ぼうとはばたいているところでした。小人の魔法のせいなのか、ニルスに掴まられたまま空へ飛び立つモルテン。ガンの群れの隊長、アッカに認められた2人は、一緒にラップランドを目指す旅に出るのですが、群れをつけ狙うキツネのズルにたびたび襲われたりとなかなかの冒険を重ねながら成長していくニルスの物語です。
やんちゃなニルスとガチョウのモルテンのボケとツッコミみたいなコンビもいいんですが、子供の頃の私はアッカ隊長がかっこよくて憧れました。
なんでだかわからないんですが、アニメを見ていた時はアッカ隊長、オスだと思っていたような気がします。何でだろう。調べたら声優さんはばっちり女性だし、たぶん話し言葉も別に男性的と言うわけでもなかったと思うんですが。
でもアッカ隊長、宝塚の男役スターのような凛々しくて美しい感じなんですよ(いや鳥だけど)。国語の教科書の『大造じいさんとがん』の残雪もかっこよかったから、ガンは賢くてかっこいいというイメージがつきすぎてたのかもしれない(笑)。
アニメでもかっこよかったんですけど、原作で読むともっとかっこいいんですよね。厳しい自然の中を旅するガンの群れとニルス。旅の始めはまだニルスは悪ガキのままで、どうなることかと思うんですけど、自然の中で大変な思いをし、仲間と助け合うことの大切さを知り、命や生きるということの重みを知っていくニルスを、厳しく優しく見守るアッカ隊長。同じガンでなくても、ニルスやモルテンを共に旅する仲間として扱い、ズルにも毅然として立ち向かうアッカ隊長は心の底からかっこいいんですよね。
ニルスは仲間だから、命をかけてでも守る、お前に差し出したりするようなことはしない、とズルに言うシーンはもう惚れます(いや鳥なんだけど)。
ニルスは自分のために命をかけてくれる仲間がいるということに激しく心を揺さぶられて、大きく成長していくんです。思いやりや命や自然の尊さを旅の中で実感していくニルス。アッカ隊長から小人の伝言を聞いて、魔法を解いて元に戻る方法を知るのですが、それはとても酷い方法なのです。ニルスは悩みに悩みます。そしてやっぱりそんなことはできない!と決めた時、魔法は解けて旅は終わり、仲間たちと別れの時が来るのですが、このシーンも本当に美しいんですよね〜。
北欧の美しいけれど厳しい自然、その中を旅することは、生きるということそのものを見つめることだったのかもしれません。怠惰で動物をいじめる、児童文学の主人公にしてはずいぶんとやさぐれた少年だったニルスですが、安穏としてイタズラにうつつを抜かしていられたのは、“街”や“大人”に守られていたから。身ひとつで自然と対峙した時、人という存在のか弱さを痛いほど思い知ったのかな?なんて思います。生き抜く、ということが困難な自然の中でニルスが学んだことがどれほど大きかったか、そのことを一緒に感じるような素敵な本です。
う〜ん、やっぱり全訳版、読み直そうかな。

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