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アーチボルドのほっぺた

最近子供の頃に読んだ本が絵本づいておりますが、本日も絵本。

この絵本は色使いがすごく素敵な絵で、このちょっと太っちょな男の子のフォルムも含めて大好きでした。
アーチボルドという男の子が主人公なんですが、アーチボルドはとってもなまけもの。おうちが大好きで、外の世界にちっとも興味がない男の子です。ところがアーチボルドのほっぺたは、アーチボルドと違って好奇心旺盛で、外の世界を冒険したくてたまらないんです。ちっとも外に出ようとしないアーチボルドに愛想を尽かして、コロコロと転がって逃げ出して(!)しまいます。ほっぺたが片方なくなってしまったアーチボルドはさすがにめんどくさがってもいられず、ほっぺたを追いかけます。ほっぺたを追って船に乗ったり気球に乗ったり大冒険。世界の広さと美しさをアーチボルドは知っていく、といういお話です。
以前書いたゴーゴリの『鼻』では鼻が逃げ出しましたが、こんどはほっぺた!色んなものが逃げるもんですねぇ。でも『鼻』よりもほっぺたというのはかわいらしい感じがしますよね。“ほっぺた”という響きがいいなあと思います。“ほっぺ”じゃなくて“ほっぺた”。訳者の矢川澄子さんのセンスが光ります。
もちろんリアルな感じで書いているわけではなく、赤いまんまるがコロコロと転がっていく絵はとってもかわいらしい。赤いまんまるっていうのがいいですよね。小さい子のぷくぷくのほっぺた感が連想されて、すっごくかわいいです。ちなみにほっぺたがいなくなったアーチボルドのほっぺたは白まるになってます。これもまたユーモラスでかわいらしい。
野を越え山越えコロコロ転がっていくほっぺた、アーチボルドに見つからないように隠れたりなんかして、隠れたほっぺたを探すのも楽しくて何回も読んだ絵本です。
ちなみに文はモノクロのページに書かれていて(ほっぺただけ塗ってある)、カラーのページは文無しで見開きの絵になってるっていうのも新鮮でした。
どうも私は絵心がないのでわからないんですが、これ、画材は何で描いてらっしゃるのかなあ。わりと厚塗りっぽいタッチなんですが、少し色味は暗い感じで、でもそれが気球にのるシーンなんかがすごく幻想的な雰囲気の絵で素敵なんです。夜のサーカスの場面も素敵。朝焼けだったか夕焼けだったか、赤一色で海が描かれていたりとなかなかおしゃれでもあります。
モノクロのページは鉛筆なのかな?モノクロページは繊細な線で描かれていて、一つで二度美味しいみたいな絵本です。
うろ覚えになっちゃってますけど、確か文もすごく素敵だったと思います。
ほっぺたが脱走するという斬新な設定がもう子供心をくすぐりますし、絵の良さも相まってわが家では人気だった一冊。冒険する本はたくさんありますが、ほんとは冒険なんてしたくない!という男の子が主人公なのもまた面白いですよね。あー、アーチボルド、そこそこ、ほっぺたそこだよーと言いたくなるような絵なのがまた良くて。
残念ながらこちらも絶版のようですが、今出しても人気でそうだけどなあ。ほるぷ出版さんの海外の絵本は本当に絵が素敵な本が多かったので、また出してほしいなと思う本がたくさん。
かわいらしくてユーモラスで、とっても楽しい絵本です。図書館などで見かけられたらぜひ!開いてみてください!

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