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ものぐさトミー

久しぶりに子供の頃に読んだ本です。
わりと人気の絵本のようなので、読んだことがある方も多いかな?
こちら。

トミー・ナマケンボ(ネーミングセンスよ😆)は電気じかけの家に住むとってもものぐさな男の子です。
どのぐらいものぐさかというと、何にもしなくても全部やってくれる機械にお世話されているのです。
朝日が昇って窓辺が暖まってくると、ベットが自動的に持ち上がり、頭からスポンと寝巻きを脱がせてくれて、お風呂にトミーを投入します。もちろん洗うのも全自動。終わると湯船が持ち上がり、お湯ごと乾燥室にドバー。浮き輪型の装置に支えられて、着替えから歯磨きから髪を整えることまで全部自動でやってもらいます。お次は自動で動く車椅子みたいなのに乗って食卓へ。大量の朝ごはんが自動で調理、給仕され、トミーはそれを食べるのですが、これも食べさせてもらってたような?その辺は記憶曖昧です。
こんなものぐさなトミーくん、他に何をしているかというと、なぜかそこだけ自動じゃない寝室への長い階段を、一日かけて登るだけという、おまえ何しとんねんな一日を送るのです。
ところがある日嵐で電線が切れてしまい、トミーが頼りにしている全自動システムがダウン。1週間後にようやく復旧するのですが、ひょんなことから逆さま向いてしまっていたトミー。さてさてトミーはどうなることやら?
というお話です。
子供の頃に読んだ時はなんだコイツ的な面白さで読んでいました。なんなら朝とかトミーみたいに全自動で用意してほしいと思ったことも。
ですが、大人になって読み返してみると、けっこう薄ら寒い気持ち悪さがあります。
作者が挿絵も描いてらっしゃるんですが、このトミーが絶妙にあんまりかわいくないんです。ちっとも動かないから一日かけないと階段を登れない、もうそれ病人じゃないかっていうその病的なところを少し感じさせる絵柄なんですよね。
朝食も、栄養たっぷりで美味しそうではあるんですが、驚愕の量で、動かないのにそんなに食べる必要ある⁈と見てる方が胸焼けしてきそうな感じがします。
そもそも両親はどこにいるんだとか、なんでこんな家に住んでいるんだとか細かいつっこみどころはあるんですが、それよりもなんというか、人間らしさがトミーから感じられないんですよね。無機質なものに世話されて、何一つ変わらない毎日を送るトミーは、なんだか言い方は悪いんですけど、機械的に飼育されている家畜のよう。
そんなトミーも、機械が動かなければどうにもできない7日間を過ごし、ひどい災難にあい、少し変わろうとしているんだろうな、という最後で終わるんですが、トミー、どうなっちゃうんだろうなあ、と思ってしまいます。
ちなみに元の英語では、“Lazy Tommy Pumpkinhead”という名前になってます。日本語よりひどい😅
怠け者な上に頭カラッポまで付けられて、日本語のものぐさとかナマケンボだけではちょっと表せてないような気がします。内容を読むとよけいこの英語タイトルが意味深です。
なんでもかんでも便利になることは本当に幸せなの?という問いや、便利さにかまけて考えて行動することをやめてしまってない?という問いがある絵本なんだろうなあ、と思いますが、それにしたってちょっと薄気味悪い気がしなくもない。
でも子供の間はおもしろーいと気楽に読めてしまうような、ちょっと不思議な絵本です。
また裏表紙がちょっと怖い感じもするんですけど、これはなんの暗喩なんだろう。
どんな裏表紙か気になられた方はぜひ図書館なんかで探してみてください!
ちなみにこのカンガルー印の岩波のこどもの本シリーズは、まりーちゃんシリーズなんかの可愛らしいお話も多いんですが、ちょっとシュールだったりなんだそれ、とつっこみたくなるお話も多くて楽しいです。『おさらをあらわなかったおじさん』とか。
どれも薄くて版も小さめなので、幼稚園ぐらいの子が手に取って読むのにぴったりなので、けっこうオススメのシリーズです!

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