陰翳礼讃(著:谷崎潤一郎/写真:大川裕)

現国の授業で習ったのが「陰翳礼讃」との出会いだったか。
昭和初期に書かれた美意識に感銘を受けた。
西洋との対比で濁り・照明・漆器・建築・厠(トイレ)・能などを例に、日本の文化芸術のエモい点について綴られている。

特に共感できたのが、日本の座敷・建築について書かれた章。景色が思い浮かび、面白いと思ったものだ。
それからというもの、すっかり昔の日本建築に残る陰影の美に憑りつかれているわけだが、何度読んでもやはりすごくセンスが良いと感じる。

まとめると、
影は空間を構成する一つの要素であり、日本人はそこに美の本質を見いだし、恐れや幽玄ささえも感じることができる。
障子を通したほの白くほの明るい光は、四季を通して採光量の変化が少なく、時がそこにとどまっているかのようであり、奥まった部屋にある金屏風や金細工を施された襖は、そうしたわずかな光を受けて、ぽぅっと浮かび上がり尊い美しさを放つ。

と、こんな感じ。

清水寺や建仁寺など、お寺のインスタアカウントで紹介されている建物内の写真を見るとわかりやすいのかもしれない。
光と影、床映りなど、インスタ映えと表現するには軽すぎる、凛とした空気さえ感じさせる美しさを感じられるのではないか。

このような感じで、本書は写真とともに「陰翳礼讃」が紹介されており、とっつきやすくわかりやすい。

時代を経て、陰影礼賛に綴られている日本の美意識がよみがえったかのようにも感じる。日本の伝統美が見直されている今だからこそ、多くの日本人や海外の人におすすめする。

昭和初期だろうが、平成最後の夏だろうが、普遍的なものはあるのだなぁ。と、後世に残したい1冊だ。



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