本屋lighthouseにおける「腐った本」への対応について

長いことモヤモヤしていたことへの区切り、覚悟のようなものがついた。いや、つけたいからつける。いまから。

講談社のケント本、そして新潮45と、いわゆる大手の出す「腐った本」への向き合いかた。

念のためはじめにことわっておくけど、「腐った本」という判断は個人的なものでしかなく、僕が「腐った本」と判断した本を良書として扱っている本屋があってもいい。あくまでも本と本屋への評価を下すのは読者であり、僕は僕と僕の本屋を信頼してくれているひとのために本を選び本屋をつづける。だからこれから話をする「向き合いかた」は、僕個人の向き合いかたであり、その「やり方」を真似るとしてもその「中身」が違うことはあっていい。

本題に戻って、ようは、

心ではこんな本置きたくないと思っているが本屋をつづけるための売上を維持するためには置かざるを得ない(「大手だから」という理由も込みで)、という「現状」と。

新潮社や講談社の本を抗議の意を込めて買わないという決断をしたい、けど買いたい本もある。あるいは買ってしまったときに感じる理不尽な「罪悪感」。

そういったものへの向き合いかた、のようなもの。

これから本屋lighthouseでは、「僕が」「腐った本だ」と判断した本を出している版元の本は、その売上を、その「腐った本」によって傷つけられているひとたちを支援するために使うことにする。もちろん腐った本そのものは仕入れない。

具体例を出す。来月発売のこだまさんの『夫のちんぽが入らない』文庫版とコミック版を、本屋lighthouseでは仕入れて売る。でもその売上は、ケントギルバート氏の著作によって傷つけられている、例えば在日のひと、あるいは外国人労働者、そういったひとたちを支援するためのお金にする。売上の全額か、一部かは未定。支援団体への募金が妥当か。そのへんもとりあえずは未定。

あるいは新潮社の本。例えば僕の好きなクレストブックシリーズ。その売上は『新潮45』によって傷つけられているひとたち、LGBTや、「生産性がない」として存在を否定されたひとたちへ。

そしてこの対応をとる版元はこれからも増えるはず。でも、やる。

なぜか。

講談社にも新潮社にも、そして僕が「腐った本」と判断した本を出しているそのほかの版元にも、良書を作っているひとたちはいる。もちろんこの「良書」という判断も個人的なものだけど。

で、そのひとたちの思いを無駄にはしたくない。そしてなによりも、そんなひとたちが作った本を楽しみにしている読者を、悲しませることはしたくない。だから、どの版元の本も仕入れる。これはうちで売りたい本だ、と思ったものは自信を持って仕入れる。

でも、その版元は同時に腐った本も出している。このままでいいのか。僕がこの本をこの版元から仕入れることはいいことなのだろうか。そんな葛藤にケリをつけたい。

だからとりあえず、この向き合いかたでやってみる。売上の一部なり全額なりを手離すわけだから、当然やりくりは厳しくなる。ならばそのぶん、僕が「良書」だと信じた本をたくさん届ければいいだけだ。良書がたくさん売れて版元の経営が安定すれば、「売れるから」とか「会社をつづけるため」という言い訳で腐った本を出すこともできなくなる。そしてなによりも、僕が良書と信じた本をたくさん売ることで、腐った本によって傷つけられているひとたちへの支援にもなる。

この世界から腐った本がなくなることはない。残念なことに。でも戦う術はある。僕はこのやり方で戦うことにする。とりあえずは。もっといいやり方が見つかったら変えることもある。

もちろんこれはどこの本屋でもやれる方法ではない。チェーン店の多くは不可能だと思う。それでも構わない。もちろんやれるならやってほしいけど。各々のやり方で。でも個人店ならできるとこは多いだろうし、少なくとも僕はやれる。というかやる。この方法を取り入れても続けられる本屋を目指す。

僕は、できるだけ多くのひとに「自分はこれでいいんだ」と思ってもらうために、自分の人生を肯定してもらうために、本屋をやっている。でも、そのために「他者を否定(馬鹿に)する本」は認めない。

それはむしろ、完全に逆の行為だと思っている。自尊心を保つために否定された他者の、そのひとたちの自尊心はどうなるのか。ふざけるな。

だから僕は、その目標に合致する本を売る。多くの人に届ける。己の自尊心を保つために他者を否定し罵倒する存在から、多くの人を守るために。


追記。のようなもの。
こちら


加えて追記(2018/09/22)
新潮社の『新潮45』に対する「まるで他人事のような」声明文を受けて、上記の対応方法の一部を見直します。新潮社が「自分事」として何かしらの態度・対応を取りはじめるまでは、これ以降の新規入荷を停止します。すでに入荷している本については上記の対応を続けます。

また、新潮社・講談社以外の版元についても、上記の対応(一部売上を支援金に)を取ることにしました。とはいえどの版元を対象にするかは現段階では未定です。ある程度の目処は立っていますが。決まり次第こちらに追記します。

おそらく最後の追記(2018/10/05)
今後はこの方針でいきます。大きく変更することはないはず。
こちらからご確認ください。


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