プリゴジン搭乗機の破壊手段は爆発物だと思うよ

ワグネル創設者プリゴジンが搭乗したビジネス・ジェット機が、モスクワの北西部に墜落したというニュースが、墜落の様子を捉えた動画とともに報じられました。
墜落時の航跡はFlightRadar24などの航空機追跡サイトでも確認できますが、プリゴジンの乗っていた機体は、サンクトペテルブルクに向かって西南西の方角に飛行中、現地時間の午後3時11分、高度28000フィート(約8534メートル)まで上昇したところで電波の発信が停止しています。

墜落の様子とされる動画を見ると、機体は上空で破壊されているようで、まったくコントロールされていない状態で落下しています。動画では大量の白煙を出しているように見えますが、これは火災による発煙ではなく、主翼内の燃料が吹き出しているんじゃないかと思います。

これは暗殺であって事故ではない、というのは世間の一致した見方ですが、その話を書きます。
ほんとうはweb媒体向けに書いたのですが、外信報道が続いて情報鮮度が落ちちゃったので、note向けに編集しました。

ミサイルではない

まず、戦闘機や対空ミサイルによる撃墜は、午後3時のモスクワ近郊という条件から考えると実行が難しいです。墜落の様子が動画に撮られているくらいなので、地上からミサイルを発射したり、戦闘機がミサイルを発射したりすれば、人の目を避けることはできません。
米ウォールストリート・ジャーナルによると、赤外線でミサイル発射を検知可能なアメリカの人工衛星も、ミサイルの発射を捉えていないそうです。そのため、アメリカ政府関係者もミサイルではなく爆発物によるものと考えているとのことです。

また、ミサイルによる撃墜の場合、フラグメントと呼ばれる目標破壊用の金属片が機体に当たった痕跡が残るため、残骸の観察によって撃墜の事実が明らかになってしまいます。
2014年にウクライナで親露派勢力がマレーシア航空の旅客機を撃墜した事件でも、残骸にフラグメント痕が多数残っていたことで、それが事故ではなく撃墜であることが早い時点で指摘されました。
プリゴジン機は残骸がほとんど焼失しているみたいで、ネット上で確認できる映像は今のところ尾翼くらいですが、僕が見た限り、ミサイルのフラグメント痕を見つけることはできませんでした。

残骸は調査されるだろうか

プリゴジンが不審な荷物を無用心に機内に持ち込ませるとは思えませんが、整備作業を装って機外から小型の爆破物を取り付ければ、こうした破壊工作は十分に可能です。
もし機外から爆発物を取り付けるとすれば、主脚の収納室が確実で効果も高そうです。離陸後に気流で脱落する可能性がないし、重要な構造部品である主翼の桁に、爆発物を直接取り付けることができるからです。
ビジネスジェット機の脚室は簡単に手が届きますし、機内の乗員や乗客からも、その様子は見えません。

焼け落ちた残骸から爆発の痕跡を探すのは難しいですが、上空で爆発していれば、付近に落下した部品があるはずです。
そうした部品を調べると、落ちていた部品の種類や変形状況などによって、機体のどこで爆発が起きたのか、それなりに信頼できる分析が可能だと思います。
もし、ロシアの事故調査委員会が真面目に爆発物の可能性を疑って調査するなら、機体墜落現場の残骸だけではなく、周辺に落下した部品を拾い集めるはずです。
でも、反プーチン派の活動家や外国の諜報機関が拾う前に、ロシア当局が拾い集めて隠してしまうのかもしれません。

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