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竹島(独島)問題とはなにか

どうも日本では、日本による竹島の領有を主張しない奴は「非国民」で「愛国心がない」という感覚が、一部に共有されているようです。
たしかに日本政府は竹島の領有権を主張し、いわゆる「保守」を自称するネトウヨは、盛んに韓国への攻撃的な態度を競い合っています。

しかし、無条件に政府に同調するのが「愛国的」であるわけはなく、よくよく経緯を調べなくては判断が難しい問題です。ところが、日韓両政府とも自分の主張に都合の良い話を並べるだけで、互いに都合の悪い歴史には触れません。どこまで行っても話の本筋が見えない状況なのですが、実はそれこそが、両政府の思う壺でもあります。

今回は、その話をします。
読んでもらうと、竹島(独島)の領有権を言い争うことが、いかにアホらしいかがわかると思います。

戦後処理としての領有権問題

そもそもの発端は、1945年に日本が敗戦した後の領土処理にあります。ポツダム宣言では「日本の領有が認められる島嶼」は連合国の定めによる、となっていました。そして、1946年のGHQ覚書(SCAPIN 677号)では「鬱陵島、竹島、そして済州島」を「日本の範囲から除かれる地域」としています。その後の「マッカーサー・ライン」でも、竹島の沿岸に日本の船舶は近づいてはならないとしており、戦後の出発点は明らかに「竹島(独島)は日本領ではない」だったのです。

しかし、その後日本はアメリカに必死で働きかけ、朝鮮戦争が勃発する1950年までに、連合国の対日講和条約案において、竹島を日本領から「除外しない」文面に変更させることに成功しています。

一方の韓国側も、アメリカに対して竹島(独島)を含む領有権主張を出していますが、日本側のように緻密な主張や交渉はできず、韓国の領有を認めさせるには至りませんでした。

なお、アメリカの当局は、そもそも竹島(独島)は無人島で、飛行場や軍港を作れるような島でもなく、軍事的にも経済的にも価値が低く、それほど重要な問題ではない、と考えていた形跡があります。

韓国による実効支配

以上の時点で竹島が日本領に確定したというのが、現在の日本政府が取っている考えですが、その主張が全面的に認められるかというと、そう簡単ではありません。連合国(アメリカ)は「日本が放棄すべき領土に竹島を含めない」としましたが、では最終的に日韓のどちらに帰属するかは、日韓両国の合意で決まることです。
いわば、決着は日韓の交渉に委ねられた形だったのです。

韓国政府は竹島(独島)の領有権主張を続け、よく知られているように「李承晩ライン」を設定し、日本漁船の拿捕を含めた強硬な対応を取りました。
これは当然ながら日本の強い反発を招きます。多くの日本人は、この韓国による行動を不当なものとして、実効支配の不当性を訴えています。
一方、韓国側にしてみれば、過去に日本から一方的に領土を奪われた歴史がありますから、日本の抗議を素直に聞き入れることは、国民感情として難しい事情があるわけです。

当時、まだ日韓に正式な国交はありませんでした。竹島の帰属問題は、日韓が国交正常化を果たす上での、大きな懸案になったのです。

日韓国交正常化

その後の日韓国交正常化に向けては、徴用された人たちへの補償問題や、終戦時に朝鮮半島にあった日本資産の問題など、竹島以外にも多くの問題がありました。しかし、朝鮮戦争後の冷戦体制の中、アメリカは日本を「反共の防波堤」にするため、韓国との国交を早期に正常化させ、軍事的・経済的な後ろ盾にすることを望みました。
この「アメリカからの強い圧力」を背景に実現したのが、1965年の日韓国交正常化です。

この時期、韓国は朴正煕大統領の軍事独裁政権でした。
朴政権のとった方針は、植民地時代に韓国朝鮮の人民が受けた被害については、日本に直接賠償責任を問うことをせず、政府間で多額の経済援助を得ることでした。当時の韓国はまだ貧しく、北朝鮮との冷戦を戦うためにも、なんとしても経済成長が優先されたのでした。
この経済援助を「日本企業の紐付き」にして、朴大統領や自民党の政治家の財布を潤す仕組みにすることで、この国交正常化は成立します。

徴用工や従軍慰安婦などの問題が放置されてきた問題の元凶は、こうした日韓両政府による決着が、韓国の人たちを置き去りにしたものであったことも大きな理由なのです。

ここで竹島(独島)がどう扱われたかというと、実はなにも決着していません

密約の存在

両政府にとっては、国交を正常化して双方の利益を図る一方で、どうしても決着がつかない領土問題については、双方合意のもとで「棚上げ」することを選びました。それが「竹島密約」と言われるものです。

こうした密約については、中国との国交正常化に当たって尖閣諸島の領有権を棚上げにしたことが知られていますが、竹島に関しても同様の密約があったとされています。
密約なので公式な文書はなく、その経緯は当事者の証言や、傍証となる資料によるしかありません。これをまとめた本も出ていますが、日韓両国とも都合が悪い話なので「密約」の話をする人は少ないのです。

この密約の内容は、日本側当事者のメモによると以下のようなものです。

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