見出し画像

2023年は3年振りに顕彰馬が選出!!

6月6日、2023年度の顕彰馬選定記者投票が行われ、アーモンドアイが96・6%の得票率を得て、史上35頭目となる顕彰馬に選定されました。
顕彰馬が選定されたのは2020年のキタサンブラック以来、3年振りとなります。昨年の初参戦時にキンカメと得票率を分け合い、71・3%で落選となり、一発通過が予想されていた多くのファンの期待を裏切りましたが、今年は圧倒的な支持を得て晴れて通過となりました。

顕彰馬制度については過去にこんな記事を書いておりますので、お時間ご都合よろしい方は是非ご一読頂けたらと思います。

さて、今年も恒例のこの言葉から始めましょう。

コレ意味あんの?



他人任せの顕彰馬制度

上記の記事をご覧になった方はお分かりいただけると思いますが、毎年同じようなことを書いているんですよ。代わり映えしないなぁと自分自身も思うものの、逆に見れば顕彰馬制度がなんら改善されていないという意味にもなります。過去3回も長々と書いているので、今年は端的に済ませたいなと笑


で、私の主張は変わらず、

①JRAの関与を拡大
②外部(記者)に限定した投票の廃止


この2点です。何度でも繰り返しますが、外部任せは良くないですよ。顕彰馬制度は『中央競馬の発展に多大な貢献のあった競走馬の功績を讃え、後世まで顕彰していくこと』を目的とした制度です。顕彰馬選考委員会があった時代は内部だけで選定を行った結果、ダイナナホウシユウのような一件があり、外部からすればそれはないんじゃないの?というケースもありました。一方、現在は外部だけで選定を行った結果、それはないんじゃないの?というケースが多々見られますよね。

これは内部のみ、外部のみ、つまり0か、100かに振れ過ぎというのではないでしょうか。顕彰馬選考委員会の時代はファンを始めとした外部の意見は届かず、現在はファンや内部の意見は届かないんですよ?

間は無いのか!!!間は!!!!


また、現状の投票内容を見ていると競走成績の比重が非常に重いように見受けられ、個人的には8対2、下手すりゃ9対1でもおかしくないような印象があります。繁殖成績で入っているとしたらキンカメ、ハーツ、シーザリオくらいじゃないでしょうか。ハーツとシーザリオの2頭の得票が両者合わせて16票と無いに等しい数字であることを考えたら、繫殖成績を評価されているのはキンカメのみということになります。

ただでさえ昔と比べてGⅠ競走が増加し、海外GⅠにもチャレンジしやすい環境になっていますので、競走成績ばかりに目を取られたら繫殖成績が疎かになって当然です。特に投票をする競馬記者は現役馬の情報を読者に届けることを主な生業としている輩ですから、引退後の成績がどうとかって間接的にしか把握しないんですよね。

しかし、顕彰馬を選定するという作業においては、繫殖成績も非常に重要になってきます。競馬の基礎である競走成績と、ブラッドスポーツとしての基礎である繁殖成績の両輪があって初めて競走馬の評価ができるのではないでしょうか。



JRA(内部)と記者(外部)で間を取れ

現状の顕彰馬選定投票の問題点が、①外部任せで内部の意見が反映されないこと、②評価基準が不明瞭であることの2点だということが分かったところで、ほんならどう改善すればいいの?という話なんですが、①に関しては前述の記事で書いたとおり、JRAが基準に該当にする競走馬を選出し、その中から記者が投票をするという方法があります。

そもそも顕彰馬制度が創設された時代は、それまで八大競走が大レースだった時代からグレード制導入によりGⅠを倍となる15Rまで増やした日本競馬の転換期でした。そのGⅠは現在では24Rまで増加しており、八大競走から見ると実に3倍にも膨れ上がっています。顕彰馬のGⅠ勝利数もそれと比較して増加しており、

 創設時選出の10頭の総GⅠ勝利数24勝、一頭平均2.4勝
80年代選出の 5頭の総GⅠ勝利数18勝、一頭平均3.6勝
90年代選出の10頭の総GⅠ勝利数32勝、一頭平均3.2勝
00年代選出の 3頭の総GⅠ勝利数15勝、一頭平均5.0勝
10年代選出の 5頭の総GⅠ勝利数29勝、一頭平均5.8勝
※80年代はアラブのセイユウを除けば4.5勝、00年は特例選出を除けば7勝

ここまで増えると選定が膨大な数に増えてしまうため、顕彰馬選定委員会だけに選定を任せることはできません。それを理由に選定方法を記者投票に変更するのは理解できます。

ただ、記者投票に全てを丸投げした結果、一部アホみたいな投票内容が生まれる上に、門番だなんだって揶揄されるような事態に陥っているのも事実です。だからこそ、JRAがもともと示している基準をクリアするか、それに近い競走馬のみを選出することで誤投票や票の分散などが発生することが少なくなるでしょう。


②に関してのヒントはJRAのHPのニュースリリースの欄にありました。

2023年度顕彰馬の選定というリリースの中で、≪注記:対象外の馬の記載があったため、「得票数一覧を差し替えいたしました」≫という一文があります。いくつかの見方がありますが、一つはJRAのミスで対象外の馬の記載があったケース、もう一つは投票した記者が対象外の馬に投票したためにそれを一覧表に載せ、それがおかしいよねってことで修正したケースが考えられます。

前者の場合はただのミステイクですので、修正しましたご苦労さん、で済む話なんですが、後者の方は投票した記者が顕彰馬の選定の対象となる要件を把握していない、あるいは誤認していたという事になります。

これは①でJRAが対象馬の基準を明確にし、その範囲に該当する競走馬を選出としていれば、投票する記者はその中から投票する競走馬を選ぶため、このような問題は起こらないでしょう。また、①で述べたとおり、票の分散を防ぐことができます。

また、可能であればリーディング上位の騎手や調教師にも投票権を付与すべきではないでしょうか。当事者もいるかもしれませんが、外部の意見以上に説得力のある投票になるでしょうし、リーディング30~50位くらいにすれば投票権を争うモチベーションに繋がるかもしれません。自分の投票が歴史に名を刻む一票に繋がるわけですからね。

これだけでだいぶマシな制度になると思いますよ。内部と外部の意見を取り入れつつ、何かあれば適切に議論できるような形になっていますから。



顕彰馬の評価基準

では、JRAが選出する対象馬の基準はどのようにすれば良いでしょうか。まず、顕彰馬の選定基準は以下のとおりです。


1.競走成績が特に優秀(おおむねGⅠ3勝)
2.競走成績が優秀であって、繁殖成績が特に優秀
 ※競走成績がGⅠ1勝以上
  繁殖成績がGⅠ馬を5頭以上輩出(種牡馬)
       GⅠ馬を2頭以上輩出(繁殖牝馬)
3.中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬)を指す


数字に関しては顕彰馬選定委員会時代のものですが、これを基準を現代に合わせたものに変更すれば良いのです。

私が前述の記事で述べた改善案では下記のような基準になっています。


1.競走成績が特に優秀(おおむねGⅠ6勝)
2.競走成績が優秀であって、繁殖成績が特に優秀
 ※競走成績がGⅠ3勝以上
  繁殖成績がGⅠ馬を5頭以上輩出し、かつ計10勝以上(種牡馬)
       GⅠ馬を3頭以上輩出し、かつ計5勝以上(繁殖牝馬)
3.中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬


重要なのは、これが顕彰馬を選定する基準ではないということです。これはあくまで、JRAがこれくらいの成績を残した馬なら顕彰しても良いという基準であり、この中から記者投票で最終的な選定を行うわけです。できれば競走成績部門と繁殖成績部門で分けてほしいくらいですが。

仮にこの基準でJRAが選出すれば、以下の馬は記者投票に進めません。ちなみに、JpnⅠの取り扱いは国際的にはリステッドであるためGⅠには含まず、地方では国際GⅠの東京大賞典のみがカウントされます。

2020年度
ファインニードル、グラスワンダー、アパパネ、メジロドーベル、ジャスタウェイ、アグネスデジタル、ダイワスカーレット、ヴィクトワールピサ

2021年度
コパノリッキー、エピファネイア、アエロリット、リスグラシュー

2023年度
ラヴズオンリーユー、マルシュロレーヌ、クロノジェネシス、コントレイル


重複するのを除いてもこれだけいます。こうした基準を満たさない馬が除かれた場合、それだけ得票数が浮きます。その票数はこちらです。


2020年度  84票
2021年度 135票
2022年度  86票
2023年度 221票


GⅠ4~5勝でも弾かれるため、時代を彩った名馬たちが軒並み対象外となりました。ファインニードルやコパノリッキー、マルシュロレーヌあたりのファンの支持が得にくい一瞬の輝き系の馬も対象外となります。

この浮いた票数の半分くらいがあれば通過していたかもしれない馬をピックアップしてみると、こんな感じです。

2020年度  ブエナビスタ、スペシャルウィーク
2021年度  キンカメ、ブエナビスタ、モーリス
2022年度  アーモンドアイ、キンカメ
2023年度  キンカメ、ブエナビスタ


こう見てみると、いかに制度の不備や盲目的な記者によって本来顕彰されるべき馬が歴史の彼方へ消えて行くのが分かりますね。キンカメは言わずもがなですが、ブエナはGⅠ6勝に加え、23戦中20戦で馬券圏内に入る堅実さ(デビュー以来19戦連続1番人気、史上最多のGⅠ連対12回)があります。

スペシャルウィークはGⅠ4勝という競走成績と、産駒のGⅠ勝利が4頭で計10勝と競走成績と繫殖成績のバランスが良いですし、モーリスは産駒のGⅠ馬が国内に3頭、海外に2頭いますから、これからの繁殖成績次第では当確組に入るでしょう。それ以外にも産駒のGⅠ勝利が17勝のハーツ、同25勝のステイゴールド、同10勝のダイワメジャーなどは、きちんと繫殖成績を評価してやれば通過するレベルなんですがねぇ。

もちろん上記の基準で外された馬も、これからの繁殖成績によっては対象になる場合もあります。日本馬初のドバイWC制覇のヴィクトワールピサや、芝ダート海外の3つのカテゴリーでGⅠを制したアグネスデジタル、史上初めて4年連続で年度表彰を受けたメジロドーベル、無敗の牡馬三冠馬コントレイル、日本馬初の海外GⅠ年3勝のラヴズオンリーユーなど実績+αで評価されるケースもあります。来年初参戦のオジュウチョウサンなんかも確実に入ってくるでしょう。ただ、現状の制度のままなら通過するのは非常に困難と言えるでしょう。


こうした馬たちが選ばれないのは、残念というより罪な感じがします。何のための顕彰馬制度なんだ、と。単に現役時にインパクトの強かった競走馬を人気投票で選んでいるような感じがしてならないのですよ私は。

2022年度の顕彰馬選定でアーモンドアイが落選した際に、JRAの木村常務理事は会見でこんなコメントをしていました。


「記者個人の投票内容を非公表としたのは、投票者が自らの考えにしたがって安心して投票してもらうことを念頭に置いてのもの。JRAでは非公表であることが〝責任感のなさ〟に直結するものとは考えていない」

「選定対象馬が分かりづらいという声が数多く出ているならば、より分かりやすい資料にしていきたい。いずれにせよ顕彰馬制度発足から38年間、さまざまなご意見を考慮しながら改善を重ねて現在の形になった。時代の変化を踏まえながら、今後より良い選定方法は何か?の視点を持って適切に対応していきたい」


投票内容の非公表については、JRA賞で既に公開しているので言い訳にもなりませんし、選定対象馬がより分かりやすい資料にしていきたいとは基準が不明瞭だからでしょうに。今年度の顕彰馬選定の対象馬はこの馬ですって公表すりゃいんですよ。毎年やってるんだから、基礎となるデータを作れば毎年行うのは年度で弾かれる馬と繫殖成績のアップデートだけなのに、どうしてそれができないのでしょうか。

記者個人にわざわざ配布するなら、HPやYoutubeで公開すりゃいいんですよ。それが議論に繋がって、より深く対象馬のことを考える事に繋がり、ひいては素晴らしい顕彰馬の選定に繋がるとどうして思えないのでしょうか。



まぁ毎年毎年同じようなことを書いていますが、アップデートしたり校正したり違う視点から見てみたりしてはいるのです。そんな中で思うのは、やはりJRAが癌だなと思いますね。いっそのこと顕彰馬制度なんて止めりゃいんですよ。過去の名馬たちはウマ娘で記憶に残してもらいましょう。その程度の価値しかないと思いますよ現状の顕彰馬制度は。

私が認める顕彰馬は、せいぜい顕彰馬選定委員会の時代(タイキシャトルまで)と、オペ、ディープ、オルフェ、ロードカナロアにキタサン、あとタケシバオーくらいでしょうか。ステイゴールド(産駒10頭でGⅠ25勝)やハーツ(同10頭、同17勝)、ダイワメジャー(同7頭、同10勝)なども入れてほしいですねぇ。

残念ながらウオッカやジェンティル、モアイは牝馬GⅠで水増ししたり、東京専門だったりするので産駒成績を加味して検討したいところです。それはラヴズオンリーユーも同じですし、コントレイルも無敗の三冠馬とはいえ、古馬成績が物足りないですし、最低でも産駒がGⅠ5勝くらいしないと無理かなぁ。

もうそろそろ制度を変えないと不満爆発だぞJRAさん。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?