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カナダの若武者 木村和士

2023年度のカナダ競馬の年度代表表彰であるソヴリン賞が18日に発表され、木村和士騎手(24)が3年連続で最優秀騎手に選出されました。同騎手については、少々古い記事ですが、以下で紹介しています。

キャリア

ざっくり紹介すると、2015年4月にJRA競馬学校に入学、2017年の秋ごろに自主退学し、カナダに渡って調教を手伝っていたところ関係者の目に留まり2018年5月に騎手デビューします。同年は104勝を挙げてカナダの最優秀見習騎手賞を受賞すると、翌2019年には148勝を挙げてカナダリーディング3位に食い込みます。この活躍を受け、米国競馬の年度表彰であるエクリプス賞の見習騎手部門に選出される史上初の快挙を達成しました。

2020年7月にGⅡロイヤルノースSをレディーグレースで勝利し重賞初制覇、9月にはGⅠサマーS(芝1600m)をグレツキーザグレートで勝利してGⅠ初制覇。同年11月にはGⅢオンタリオダービーをフィールドパスで制すると、その2つ後の10RのGⅡベスアラビアンSをアーティーズプリンセスで制したことで一日で2つの重賞制覇を達成しました。

2021年は722戦140勝(カナダジョッキークラブ発表)で日本人初のカナダリーディングジョッキーに輝き、最優秀騎手賞も受賞。翌2022年10月にはEPテイラーSでGⅠ2勝目を挙げ、年間152勝で2年連続でカナダリーディングを獲得。

2023年には米国GⅠフランクEキルローマイルをゴールドフェニックスで制し、米国GⅠ初制覇。他にもGⅡオータムS、GⅡベスアラビアンS、GⅢオンタリオダービー、米国GⅢラカナダSなどに勝利し、ケンタッキーダービーで大井のマンダリンヒーローに騎乗するなど活躍し、年間161勝で3年連続カナダリーディングを獲得。2位のサヒン・サバチ騎手に32勝差をつける断トツの数字でしたね。

今年はケンタッキーダービー(5月4日、チャーチルダウンズ、GⅠ、D2000メートル)でテーオーパスワード(栗・高柳大、牡3)の手綱を取る予定です。


通算成績

北米の競馬情報が載っているEQUIBASE(エクイベース)によれば、2024年4 月20 日現在、通算845勝、重賞24勝(GⅠ3勝)、昨年は北米賞金リーディング22位、北米勝利数リーディング20位となっています。すごい数字ですね。カナダが主戦場とはいえ、群雄割拠の北米リーディングでこれだけ勝ち、さらにシーズンオフにはサンタアニタで腕を磨いているわけですからJRAの日本人騎手ではそう敵いっこありません。

ただ、この数字でも短期免許は取得できないんですよね。以前であれば北米リーディング30位以内であればクリアできましたが、今は5位以内ですから北米リーディングで来るのは相当難しいんじゃないでしょうか。GⅠについては、米国はBCをはじめとして19Rが、カナダは2Rが指定されているものの、星の数ほどGⅠがある地域なんで、なかなか難しいですね。カナダの2Rを取ってシーズンオフの1~3月に来れるかどうかというところでしょうか。

カナダ競馬はクラシックがだいたい6月下旬から、主要GⅠが9月から本格化するので、頑張れば春の日本にも来れると思いますが・・・まぁ来ないでしょうね。


こういうニュースを見ると日本は閉鎖的だなぁと思います。JRA騎手が海外に飛び出すことは本当に少ないですし、なんなら関東、関西、ローカル、地方で住み分けされていますし、関係者も日本の競馬村という閉鎖環境を作り出しているので、井の中の蛙という表現が似合うなと思いますねぇ。

もちろん、日本の競馬が世界で一番だし、賞金も高いのだから外に出る必要がないという意見も理解できます。しかし、ある程度のベテランならまだしも、若手騎手で括られる7年目以下であればドンドン海外に出て行って様々なことを吸収した方が身になると思うのですよ。

矢作先生がバックアップしている坂井瑠星はともかく、野中君や小崎などは帰国しても相手にされてないように見えます。ほとんどの場合、勝てそうな、チャンスのある馬に乗って初めて結果を出せるわけで、そうした馬の騎乗依頼を受けるためには技術を認めてもらわないといけなくて、そのためにはたくさん騎乗をしきゃいけないけど、海外に行けばそうした事はできなくて・・・と、技術だけではどうにもできない騎手のジレンマなんですが。

日本競馬の20年後、30年後、見据えた時、そうした騎手が帰国した際に、積極的に乗せて使えるかどうかを見る器の広さが関係者に欲しいところです。また、海外を主戦場にする日本人騎手を日本に呼ぶことで視野が広がることもあるでしょうし、短期免許の外国人騎手と違う同郷ならではの付き合い方が良い方向に左右することもあるでしょう。

とは言っても、日本馬は世界でもトップクラスで、競馬場も世界でトップクラスだから積極的に海外に行く必要はない、というのが関係者の基本的なスタンスでしょうから、多くの人の意識が変わらないとガラパゴス化は止まらないでしょうね。それは非常に悲しいことです。

願わくば、木村和士や福元騎手のように、日本競馬から弾かれた若い騎手が日本で無双して関係者の鼻を明かすケースが沢山あってほしいですね。


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