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「シマクトゥバ」には、地域の人々の暮らしや自然との関わり方が刻印されている。

「シマクトゥバ」は沖縄のそれぞれの「地域」にある、それぞれの言葉のこと。「島クトゥバ」ではなく、「故郷」のことばであり、「地域」のことばである。地域の人々が共同生活の中で継承してきた歴史的な存在であり、集団に共有される文化である。

シマクトゥバには地域の人々の暮らしぶりや自然との関わり方が刻印されている。

 先人たちは、アキノワスレグサ(ワスレグサ科の多年草)を食べるとよく眠れることを経験的に知っていて庭に植えていた。睡眠改善効果のあるこの花にニーブヤーグサ(居眠り草・名護市幸喜)、ニーブイハンソー(居眠り甘草・恩納村恩納)と名付けて、若い世代に伝えたのである。
 西原町小那覇では夏の日中に次のような会話があった。
「ナマ ハルカイ イケー ティーダマキ スンドー。」
 (今 畑に 行くと 熱中症〔太陽負け〕に なるよ。)
「ティーダ ネーラチカラ イチュサ。」
 (太陽を 萎えさせてから 行くよ。)
 熱中症という単語が無かった時代に「ティーダマキ」という単語を創出したり、「ティーダ ネーラチカラ」というダイナミックな表現をしたりしたのも、地域の人たちの自然との関わり方を示している。

本書より


また、同じものをさしていても、認識の違いが方言名に反映される。

次の例は、近接する恩納村の集落のシマクトゥバである。「集落が違えばことばが違う」といわれるが、集落ごとの言語差が分かる。各地に同様の例が見られる。
 「若い ときは  みんな・で  船を 漕いだ。」
・ワカサヌ バーヤ シンカ・ジ  フニ クーダン。  (名嘉真)
・ワカサヌ バーヤ ムル・サーニ フニ クージャン。 (安冨祖)
・ワカサヌ バーヤ 'ンナ・シ   フニ クーザン。 (南恩納)
・ワカハヌ バーヤ ムル・ヒチ  フニ クジャン。 (谷茶)
・ワカサヌ バーヤ 'ンナ・サーンカイ フニ クジャン。 (塩屋)

本書より

本書では、沖縄本島の中南部地区(那覇や首里言葉を中心に)のシマクトゥバを共通語の50音順に収録している。

表紙

「ヤギ」で本書をひくと「フィージャーあるいはヒージャー」、「しゃっくり」でひくと「サッコービ」、「正直者」では「マットーバーあるいはマクトゥー」とあらわれる。

シマで暮らし、子どもたちを育ててきた祖先たちの経験と知識が積み重ねられたシマの文化とシマクトゥバを断絶させずに未来の若者に残さなければならない。

本書より

手軽に使える本書を活用してシマクトゥバに触れることで、連綿と続いてきたシマの文化、暮らしの息吹を体感してほしい。