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アオハルの幼稚さと潔癖さ。アイラブ漫画喫茶。#7

「ぼくらのフンカ祭」真造圭伍 全1巻

高校生の富山くんが暮らす金松町で、ある日ドカーンと火山が噴火した。
過疎地だった町には温泉がわき出して、一発逆転の「温泉街バブル」に突入する。

富山くんの家も温泉宿に改装された。観光客はひきもきらずウハウハで商売を繰り広げる両親。おだやかな生活は消え失せてしまい、町の狂乱ぶりを受け入れられない富山くん。

いっぽうで、友人の桜島くんは町の発展を無邪気に喜んでいて、互いに気持ちがついていかない。

そんな中、ひょんなことから、富山くんは姉の通っている美大の文化祭を手伝うことになる。

バブルと若さと芸術が爆発する、富山くんの鬱屈する日々はどこに向かうのか。

全1巻でめちゃドラマチック。
作者は今をときめく「ひらやすみ」の真造圭伍です。

この人の、ひょろひょろした細かいタッチの絵がとてもいいですね。ハチャメチャな非日常を舞台として設定して、そこから喚起される感情をリアルにつかまえるのが巧みなんです。「思春期の少年の家にいきなり温泉わいてきたらそうなるよね……」って。現実離れしたシチュエーションにある現実味をしっかりとらえているんで、登場人物の感情の動きに納得感がすごいんです。

で、それを絵で表現するのもうまい。たとえば「口の中」を描くことで登場人物への生理的嫌悪感を表現するなど、かなり技巧的だと思います。

主人公の富山くんも友人の桜島くんも、完全に「いまどき」の少年なんですけれど、何気なくゲバヘルをかぶるシーンが出てくるんですよね。ああ、いつの時代も若者は社会の変化に鬱屈を抱いたり、置いていかれたり、爆発したりするものだよ。

なにもかもを吹き飛ばしたいと願うアオハルの幼稚さと潔癖さに、とっくに大人になった私も涙が出そうになっちゃいました。
面白いのでオススメです。(え)