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破天荒美女のしゃべくり漫画。アイラブ漫画喫茶。#6

「波よ聞いてくれ」
沙村広明 現在9巻まで

作者の沙村広明は、「無限の住人」「ベアゲルター」などハードで残虐な描写に定評がある超実力派ですが、本作は一転してのハチャメチャコメディ。

高低差で耳がキーンとなります。

物語は、主人公であるミナレがバーで失恋のうさばらしをしている場面から始まります。たまたま隣り合わせた男に向かって元恋人の悪口三昧、放言を繰り返しながら夜は更けていきます。

翌日、バイト先に出勤したミナレが耳にしたのは、職場のラジオから流れてくるクダを巻く自分の声。なんと昨晩の放言がラジオの音波に載って流されていたのでした。ミナレは面食らい、慌ててラジオ局まで放送を止めに走ります。到着したスタジオにいたのは、あの隣席の男。バーでこっそり録音を回していたのです。激昂するミナレに男はマイクを渡してこう言いました。ラジオの放送を止めてはいけない、止めるならば自分でしゃべれ。

さて、ミナレの第一声やいかに。

といったところから始まる、ラジオ局を舞台とした物語です。

作者である沙村のマンガには高慢で性格の破綻した美人がよく出てきますが、その最高峰がミナレじゃないでしょうか。無軌道で破天荒な性格、そして他人へのツッコミ、責任逃れの言い訳、人を食った悪口まで、ひたすらしゃべりまくり。

そうなんです、本作はやたらめったらセリフが多いんです。ラジオを聴いていると(当たり前ですが)人がずっとしゃべっていますよね。それと同じことをマンガでやっているといいますか。

そして出てくるワードのセンスがめちゃくちゃ高い。面白い。笑える。

「幻想ギネコクラシー」あたりにその片鱗はありましたが、いや、これほどとはね!
沙村、まさかの「遅れてきたコメディの旗手」であります。

しかしながら笑わせて終わりでもない。メチャクチャな展開(唐突にクマと闘うシーンが出てきたりとか、ほんとうにメチャクチャ)の中に、さりげなく、現代社会におけるラジオの役割を思わせる要素がさしこまれていて大変よろしいです。

みなさんもエネルギッシュなミナレに振り回されてください。(え)