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なくなって悲しいと思う前に アイラブ漫画喫茶。#4

社会活動、経済活動から多大なものを奪っていってしまったコロナ禍。今年は多くの大規模イベントや旅行が解禁されて、たくさんの人が活動の自由を謳歌しているが、その一方で、まだまだ日常に戻れていない人も少なくない。

たくさんのお店や企業が経営難に陥り、そして消えていってしまった。「本当だったらもう少し頑張るつもりだったけどねぇ」と、閉店を「前倒し」にした話もよく聞く。パンデミックによる機会損失の甚大さに、頭がどこまでもクラクラしてしまう。

このコラムのテーマは沖縄の漫画喫茶である。なので漫画喫茶の話をすると、コロナ禍からこっち、Googleなどの検索サイトでは「営業中」と表示されていても、実際に足を運んでみるととっくに看板も外されて閉店しているなんてこともザラにあるようになった。

(しかし、そもそも漫画喫茶というのはネットで探してやってくる客層がメインではなく、ほとんどが常連の、9割5分くらいは男性客、それも一人客である。漫画喫茶巡りを趣味とし、知らない地の店にも積極的に突入する中年女性という特殊人材(私)が、遠くの店とか久しぶりの店に行こうとすると、「知らないうちに無くなっていた」という事態にぶち当たってしまうという話である)

かつて大学生だった頃によく行っていた、宜野湾の58号からコンベンションセンターへの通りにあった老舗の漫画喫茶。時間制限もなく食事がおいしかったことを思い出して、ある日クルマを走らせたことがある。

店の前を通ってみると、なんだか薄暗い……これは……

しかし、もともと建物も古く、ガラス窓にもスモークが貼られているので、はたして開いてるのか閉まっているのか分からない。いや、ただ単に営業時間外というだけかもしれない。とにかく判別がつかないがその日は時間もなかったので、「ひょっとして、ここも……」と疑念を持ったままで終わった。

そして、別の日に通りかかってみると、

あ、開いてる〜〜〜

なんだか、ちょっと泣きそうになってしまった。漫画喫茶というニッチな業態が、世界的なパンデミックとその甚大な影響の中で無事に生き延びていることに、そして思い出の店がなくなってしまわなかったことに。

せっかくなんでお店に入ってみると、雰囲気は昔そのまま、しかし完璧に時代に対応していた。ドアは開放、ガッツリ消毒、入り口で無人オーダー、食器を下げるのもセルフだし、飲み物もセルフのドリンクバー。もちろん店内は無言で漫画を読みふける客ばかりだ。
孤独を愛する(かどうかは知らないが)漫画喫茶ニストたちにとっては、これくらい対応するのは屁でもないだろう。

好きなら何度も足を運びたい。なくなって悲しいと思う前に。そんなことを感じた、久しぶりのアイラブ漫画喫茶でした。