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Lifeline+【Apple Arcade三昧#003】

【Apple Arcade三昧】は、アップル端末で遊べる月額600円のサブスクリプションのゲームアプリ遊び放題サービス、『Apple Arcade』の配信ソフトを勝手に紹介・勝手にレビューする不定期連載。

今回紹介するのは『Lifeline+』。Apple Arcadeでは2023年2月に配信されたが、すでに『Lifeline』はスマホのストアには人気作としてずいぶん前から存在していて、iOSでもAndroidでも有料で販売しているので(2023年4月現在)、内容が気に入ったらぜひ探してみてほしい。(筆者は無印版とApple Arcade版のどちらも遊んでいるが、プレイ感覚に違いはない。)

不気味か神秘的か。謎が謎を呼ぶ起動画面。とでも言って盛り上げておこう。期待には応えてくれるだろう。

今回紹介する作品
Lifeline+
Apple Arcadeで配信中(2023年4月現在)

◼️現代版ゲームブック的なチャットゲーム

まず伝えたいこととして、いわゆる昨今の「スマホゲーム」といわれるものとは毛色が違うので、人によってかなり好き嫌いが分かれるだろうから注意してほしい。(こういう記事の文章を読むのが好きなら問題はないだろうが)
今作は、相手とチャットしながらストーリーが進行していく。そのチャットでは、ユーザーは二択しか選べない。
つまり、その二択によってストーリーが分岐していくことを楽しむゲームである。

かつて、小説を読み進め、途中にあるいくつかの選択肢(Aルートに進むにはpXX、Bルートに進むにはpXXなど)を選んで指示通りにページをめくって、さらに読み進める。という「ゲームブック」というものがあったが、それのデジタル版とでもいうべきか。

今作『Lifeline+』では、小説のような文章ではなく、全て相手からのチャットの内容から想像力をふくらませ、相手の行く末を二択から選んで助言していく。チャットの形式だから読み進めやすいということもあるし、二択だから選びやすい、ということもあるだろう。非常にハードルの低い、小説のようなものである。

基本的にこんな画面が続く。シンプルな二択から、送信相手に送るテキストを選ぶ。

◼️読み進める楽しさ・気になるストーリーの続き

今作のストーリーは、ある惑星に不時着し、一人きりになってしまった宇宙飛行士(学生)タイラーからの通信をユーザーがスマホで受け取る、というSF
壊れた宇宙船の探索や、惑星の調査、未確認な何かとの接触など待ち受けるSF要素への対処方法を二択で迫られる。設定は非現実的ではあるが、先へ進むことにするか、近くに見えるものの調査をするのか、どちらも興味深い選択肢に頭を悩ませることになるだろう。(結局、先へ進むしかない、みたいな選択肢も複数あるのだが)
チャットでの会話形式も、キャラクターと信頼関係が築いていくようで楽しい。序盤はきっと、「なぜ?」「だれ?」「なに?」と質問ばかりしてしまうだろうが、それをしてもしなくても良いという自由度の高さ(選択肢は常に2つなのに)がある。

また、元が英語なので、ウィットに富んだ冗談が時折まじってくるのがまた楽しい。“ハリーポッター”など誰もが知っているものに例えたり、タイラー自身が絶望的な状況を楽しんでいるようにすら感じる会話が、その後の恐怖を引き立ててくれたりする。※ここで重要なのが日本語への翻訳だが、実に見事な翻訳だ。ハリウッド映画くさいタイラーのジョークも、しっかりとした日本語で(クスッとできるレベルで)楽しめる。

さらに、魅力的なシナリオをただ選択して読み進めるだけではない。選んだ選択は、チャットとして相手がリアルタイムで受け取って返信してくる。という設定。そこがこのゲームの最大の面白みにつながる。


◼️リアルなシステムとスマホの通知機能の神連携

『Lifeline+』は言うまでもなく、スマホで遊ぶゲームである。だからこそ遊んでほしい体験がある。それは「通知」である。
スマホゲームにおける通知は「もうすぐイベントが始まるよ!」「スタミナが回復したよ!」などシステム的な呼びかけが多いと思うが、『Lifeline+』では「宇宙飛行士からの通知」となる。
ストーリーにおいてユーザーのスマホ=「宇宙飛行士にとって唯一の通信手段」であるため、リアルタイム(のように)で宇宙飛行士からのチャットが届く(設定)。緊迫した場面ではすぐに返事が飛んでくるし、「しばらく休んでまた後で連絡する」というチャットがあれば、数時間は連絡が来なくなる。
まるでスマホを使って本当にタイラーと連絡しているかのような、面白い体験だ。ぜひ通知をオンにして、なりきって楽しんでほしい。

仕事中だろうが何だろうが、タイラーはめちゃくちゃ送ってくる。iPhoneの通知センターにはLINEの通知より多く残してくるし(左)、Apple Watchだって通知が来る(右)。必死だ。私がいないと死んでしまうのだ。

ちなみに一度クリアした後の2周目では、相手のチャットの間隔を無くす「高速モード」を選択できるようになる。スラスラと返事が来るようになり、臨場感は損なわれるが、チャット型のノベルゲームだと割り切って遊ぶこともできる。
また、クリアするとチャットをさかのぼって「もし別の選択肢を選んでいたら」という分岐を見ることが可能になる。戻る時はチャットをさかのぼり、選択していない方をタップすればOK。複数のエンディングがあるらしいので、AではなくBの場合はどうなったのだろう?と、別ルートを探る旅に再び出るのも良いだろう。
ただ、システム的な問題がある。通常プレイする分にはシンプルで問題ないのだが、別ルートをさかのぼるというのはやりづらくてしょうがない。さらに、途中に選択肢を選びまくるので、どの選択肢が大きくルートを変えるかを検証するというのもかなり大変な作業となる。
それでもこの世界観にどっぷりハマってしまう人は、やってみても苦ではないかもしれない。

一周目でとにかくゴールまでたどり着いて、高速モードでサクサクじっくりやるのもあり、かも。ただ一度終わりを迎えるのがまず、めちゃくちゃ長い(待機時間も含むので)ことは覚えておくとよい。

◾️クリア後に少々不満も、未体験ならぜひ。

総合すると、私から初めてこのゲームを遊ぶ人に向けたメッセージは、このタイトルになる。
二択を繰り返してゴールにたどり着くという極めて単純なルールではあるけれども、そのストーリーや時間の概念をつかったギミックによって、想像力をふくらませて楽しむことができる。小説やクラシックゲームに通ずる面白さがあると思う。
一方で、クリア後に過去のさまざまな選択の可能性を見られるというなら、もう少し手軽に見直せる方がよかった。少しだけ遡って体験したものの、もう一度最後まで遊ぶ気にはならなかった。
大枠は変わらないはずだが、もし大きく変わってしまう選択があるのならそこまでスキップできるとか、クリア後のお楽しみとしてもう少し充実して欲しかった。

完全に自由な質問をすると、AIが世界中の知識を集めてチャットで返事をしてくれる「Chat GPT」が話題となったココ最近(2023年4月現在)、二択だけの選択肢に答え、あらかじめ決まった応答があるというのはずいぶんとまた簡素なつくりだなぁと改めて思うとともに、チャットの原点のようにも感じた。
Apple Arcadeでの配信は2023年2月なので、Appleがこのゲームに対して何か「Chat GPT」みを感じるから、として新たに契約をとってきたのだろうか、とも考えざるを得ない。

ということで、この企画はお久しぶり。
この「Apple Arcade三昧」の記事は、ここから更新スピードを上げて紹介していこうと思っているのでぜひこのマガジンのフォローを。

write by こたろ(bornweb編集長)


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