居眠り運転

【アニメの日々】居眠り運転の日々【おそらく聞いたことがない話】

アニメーションの制作進行に課せられたミッションは、車を運転してアニメーターの家に赴き、原稿を回収すること。基本的に休日は無く、まる3日ぶっ通しで働きました、ということも多々あるなかでの車の運転は、とうぜんながら非常に危ない。居眠り運転は日常茶飯事、という状態だった。会社からの通達で、本当に眠いときにはコンビニなどに車を止めて、仮眠をとるように言われていたものの、そんなことをしていればスケジュールが破綻する。

それに、疲れが溜まっているから、15分だけ仮眠と決めていても、いったん眠ってしまうと、起きられる保証はない。私もいちど、ほんの少しだけ眠るつもりでコンビニの駐車場に車を止めたはいいが、目が覚めると4時間経っていたことがある。人間の体はそんなに都合良くはできていないのだ。

横浜に住んでいるアニメーターの原稿回収はきつかった。連日、深夜0時に東京を出発し、原稿を持って帰社するのは朝方である。第二京浜国道を延々と走るのだが、横浜から東京に戻るときには体力がほぼ残っていないうえ、早朝はトラックだらけ。

ふらふらの運転で、トラックのばんばん走っている道をゆくのは、かなり怖い。グラディウスの巨大ボスの隙間をくぐり抜けるかのようなスリルを毎日毎日味わった。赤信号でうとうとして、ブレーキから足が離れたことも多々ある。するとオートマチック車はゆるゆると前進をはじめ、前に停まっているトラックの股ぐらへ吸い込まれてゆきそうになる。正直いうと、追突しかけたことなんて何度もある。

そうやって、命からがら会社に戻ってきたら、同僚が包帯でぐるぐるになっていて驚いたことがある。聞けば、居眠り運転で事故したとのこと。睡魔に襲われてハンドルから手をはなしてしまい、コントロールを失った。ちょうど車は河川敷ちかくを走っており、コースアウトした車は、土手に生えている草をなぎ払いながら横転。そのさいにエアバッグ出たのだが、体とエアバッグが擦れあって、摩擦で体中にやけどをしたのだった。エアバッグでやけどを負うのだと、人生ではじめて知った。周りに歩行者がいなかったのが不幸中の幸いだった。


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