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世界の超高額賞金レースとそれに挑んだ日本馬(1)

日本の競馬ファンにとって嬉しいニュースが舞い込んできた。2023年2月に開催されたサウジアラビアの国際G1レース「サウジカップ」で日本所属馬のパンサラッサが逃げ切り優勝。日本円に換算して約13億円もの賞金を獲得した。

サウジカップの賞金額は世界でもダントツの額で、日本で最も賞金の高いレース、有馬記念、ジャパンカップの4億円をはるかに上回る。ちなみにサウジカップについては2着馬が約5億円、3着でも約2億7000万円の賞金が獲得できるので、優勝しなくとも上位入線すれば日本のG1を優勝するのと同等かそれ以上の賞金が手に入る。

サウジカップほどではないが、海外には超高額の賞金が設定されたレースがいくつか存在する。今回はそれらのレースを紹介し、また、過去の日本馬の実績にも併せて触れたい。


〇1位 サウジアラビア サウジカップ(ダート1800m)
優勝賞金約13億円

世界で最も高額の賞金が設定されているのは、上述のサウジカップ。2020年に創設された新進気鋭のレースで、それまでの世界競馬の基準をはるかに超えた賞金体系で話題になった。サウジカップ同日は「サウジカップデー」と呼ばれ、他に優勝賞金が1億を超える国際レースが6つ開催される。1日のうちに実施される7つの国際レースの賞金総額は38億円というすさまじさ。

競走馬は大まかに言って芝を走るのが得意な馬と、ダート(砂)を走るのが得意な馬に分かれるが、サウジカップの舞台であるキング・アブドゥルアズィーズ競走馬術広場のダートは成分的に芝が得意な馬でも対応しやすいと言われている。ゆえにそれまで芝で活躍してきた馬がダート競走であるサウジカップへ挑戦する、というケースも多い。今回優勝したパンサラッサも、サウジカップ出走前のキャリア24戦でダートを走ったのは1度だけ。ドバイターフ(1着)や天皇賞・秋(2着)など芝で実績を残した馬だった。

☆日本馬の上位入着実績
・2023年
1着(パンサラッサ)
3着(カフェファラオ)
4着(ジオグリフ)
5着(クラウンプライド)

賞金額の高さは言うまでもなく、ダート馬だけでなく芝馬にもチャンスがあり、かつ世界的に大きなレースが少ない時期の2月開催という条件が重なり、世界各国のホースマンが一攫千金のために集結するという状況が生まれている。じつは今年度はパンサラッサの優勝のほか、3、4、5着も日本馬であり、無双状態。本年の大成功をうけて、日本から遠征する馬は来年以降も絶えないだろう。


〇2位 アラブ首長国連邦 ドバイワールドカップ(ダート 2000m)
優勝賞金約9億円

1996年創設。サウジカップ創設前の世界最高賞金レースといえば、このドバイワールドカップだった(アメリカのペガサスワールドカップがドバイを超える賞金を設定したこともあるが、その後大幅に減額)。

発足時より条件はダート2000mだったが、2010年からゴムや繊維をワックスでコーティングして作られた人工馬場「オールウェザー」での開催に切り替え。しかし維持費の問題と、ダートを得意とするアメリカの一流馬がオールウェザーを敬遠し、参加が激減してしまったため、2015年から再びダートに戻って現在に至る。

☆日本馬の上位入着実績
・2001年 2着(トゥザヴィクトリー)
・2006年 4着(カネヒキリ)
・2007年 4着(ヴァーミリアン)
・2011年 1着(ヴィクトワールピサ)2着(トランセンド)
・2015年 5着(ホッコータルマエ)
・2017年 5着(アウォーディー)
・2021年 2着(チュウワウィザード)
・2022年 3着(チュウワウィザード)

発足以来、日本馬がコンスタントに挑戦を続けている。日本の競馬は芝レースが主役であり、ダートの強豪馬は長らく不遇で、日本で走り続けてもあまり賞金が稼げなかった(現在ではダート競走の賞金額も徐々に上がってきている)。そういった事情があり、日本で頂点を極めたダート馬が、次の目標としてこのドバイワールドカップを選ぶ、という流れが定着したのである。しかしながら、地元アラブやアメリカの一流どころには歯が立たず、たまに善戦する馬が出る程度の結果に終わっていた。

潮目が変わったのが2010年代初頭。先述のように条件がダートからオールウェザーに切り替わったのだが、どうやらこのオールウェザーの馬場が日本の芝馬にフィットしたようだ。かつアメリカからの参戦が減り、レースのレベルも低下。このタイミングを逃さず、皐月賞、有馬記念の優勝歴がある芝馬、ヴィクトワールピサが勝利。2着にはダートチャンピオンのトランセンドが食い込み、日本馬のワンツーが実現した。

以降、再び馬場がダートに戻ってからは苦戦が続いていたが、近年チュウワウィザードが2年連続で好走。今年(2023年)はサウジカップからパンサラッサ、カフェファラオ、ジオグリフが転戦。かつウシュバテソーロ、テーオーケインズなどのダートの猛者も参加を表明しており、「ダートのドバイワールドカップ」での日本馬初優勝をねらう今年(2023年)は日本時間 3月26日の開催。

(つづく)

write by 鰯崎 友

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