ガンダムAR_top

機動戦士ガンダム ANAHEIM RECORD 【おそらく聞いたことがない話】

このウェブマガジンでもガンプラの制作テクニックを何度かご紹介しているが、( 過去記事参照 前編 後編 ) 1979年に始まった『機動戦士ガンダム』ももうすぐ40周年
その人気たるや他の日本のロボットアニメの追随を許さないものがある。正史、外伝を問わず無数の続編がリリースされ、アニメだけでなくマンガ、小説、プラモデル、おまけにガンダムの人気キャラとタイアップして赤く塗られたオーリスなど、現代の日本はガンダムであふれかえっているのだ。

■「ガンダム」はもはや生活の一部。広がる「ガンダム」ワールド。

子供のころから『機動戦士ガンダム』にごく自然に接していて、大人になってもファン活動をおこなう男子が相当数存在する。
彼らはまるで呼吸をするかのごとく、ガンダムのアニメを見て、ガンプラを制作する。ガンダム活動は完全に日常の一部に組み込まれており、ガンダムのない生活など想像したこともない、という人だっているだろう。
そんなにコアなオタクでなくても、たまにガンダムのアニメを見たり、お台場に等身大ガンダムを見に行ったりするというライトユーザも多数いて、裾野がとんでもなく広い。
ファーストガンダムを20歳で見た人たちはそろそろ還暦を迎えるのだから、「ガンダムファン専門老人ホーム」なんていうのは商売になったりしないだろうか。

広大なファン層を有するガンダムであるから、シリーズ毎の作品性の幅も多岐にわたっている。
ファーストガンダムの続編として、「宇宙世紀」の物語を語り継ぐ王道のシリーズから、ファーストガンダムとは世界観を共有せず、ガンダムの生みの親、富野由悠季監督からの影響が比較的弱く、女性人気も高い『W』や『00』といった異伝的なシリーズ、子供むけの『SDガンダム』など、膨大な作品群のうち、いくつかつまみ食いすれば必ずいずれかがツボにはまること請け合いである。

■広がりすぎ!?「ガンダムを作る企業」の作品まで!

そんなガンダムシリーズのなかでも、これはニッチだなあ、と思わせる作品をひとつ紹介したい。『機動戦士ガンダム ANAHEIM RECORD (アナハイム・レコード) 』というマンガだ。
ファーストガンダムと同じく、宇宙世紀を舞台としているのだが、主役はガンダムのパイロットでもジオンの総統でもない。ガンダムほかさまざまなロボット(ガンダムの世界では「モビルスーツ」と呼ばれる)を作っている、アナハイム・エレクトロニクス社という、架空の企業のお話なのである。

この企業はもともとは生活家電を作っているメーカーだったのだが、軍事産業に手をのばし、巨額の富を得た。
戦争をしている二つの勢力のどちらにも組せず、モビルスーツを提供しているので、「死の商人」と呼ばれることもある、正義でも悪でもなく、れっきとした営利目的で運営されている会社で、そこで働くエンジニアの苦闘…機体の調整がうまくいかず迷走したり、上層部の意向でプロジェクトを外されて憤慨したり、働きすぎて過労死したり…といったストーリーが紡がれる。
描いているのは近藤和久という人で、「ガンダムマンガ」のパイオニアである。ミリタリー調の乾いた画風が美しいのである。

月刊ガンダムエース公式サイトより

往年のシリーズで活躍したモビルスーツの制作の裏側にはこんな努力が…と読み進めると止まらなくなるのだが、このような、「架空のロボット会社の話」という超ニッチな話が成立するという事実が、ガンダムシリーズの驚異的な裾野の広さを示している。
スターウォーズやエヴァンゲリオンなども大変ファンの多い作品であるが、「ライトセイバーやミレニアムファルコンを作っている会社を主役とした外伝」とか「エヴァンゲリオンの研究所の一日を描いた外伝」とかは無いでしょう?
ガンダムシリーズは膨大な設定をつみあげ、「世界」を作り出すことで日本カルチャーのなかにどっかりと鎮座している。

write by 鰯崎 友

■紹介作品
機動戦士ガンダム ANAHEIM RECORD  (角川文庫「月刊ガンダムエース」連載作品)
https://web-ace.jp/gundamace/contents/120/





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?