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第140話 たたたたた

 末っ子のモーちゃんは、最近ハイハイを覚えた。
 前は、独りでいるとひたすら人の温もりを求めて、人がやってきてくれるまで叫び続けていたが、もう関係ない。
 モーちゃんは、高い壁があろうが、家具があろうが、おもちゃ障害物があろうが、人の温もりを求めて、ハイハイする。
 見つければ、そこに座り込み、自己アピールを繰り返し、願いが聞き入れられなければ、ピギィとドーハの悲劇のようなポーズを繰り返す。
 僕らが動けば、連動してついてくる。リビングでくつろいでいれば、テーブルの下に潜り込んでくる。
 つかまり立ちも覚えたモーちゃんは、僕らの椅子に捕まり立とうとして、頭をいろんなところにぶつけて泣くのだ。
 モーちゃんは、長男のひーくんや次男のかーくんが作り上げたものもハイハイで踏み潰していく。そして、かーくんも自覚なく、ひーくんの邪魔をしている。ひーくんは、モジラを持ち上げて、自分の世界から遠ざけるのだが、少し経つと再来してくる。ひーくんは常に怯え続けているのだ。
 モーちゃんは、いろんなものに興味がある。何かをヨーヨーのように振り回したり、舐めまわしてくる。ママが趣味で収集しているマスキングテープももう巻き取れないアラレもない状態にされてしまう。
 モーちゃんは、動く椅子に捕まり立とうとして、一緒に動きながら、ヨタヨタ歩き、二足歩行の感覚に酔いしれ、歓喜の声を上げながら、最後は鼻をぺちゃんこにして床に向かい怒号を投げかけている。
 モーちゃんは、今日も、喜劇と悲劇を繰り返しながら、ハイハイを通して成長していく。

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