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第146話 爪

 僕は、最近ワールドカップの熱にさらされたこともあり、年末くらいから友達と社会人サッカーを始めた。
 昔もやっていたのだが、部活みたいに、出席管理をしたりなど、かなりストイックだったため、軽い気持ちで参加していた僕らは次第に幽霊となりその時は退会してしまった。
 今回はそうならないようにと、緩めそうなところを選んでみたのだが、大学生も多いこともあり、入会したばかりなのに、もうすでに最年長であった。新人のおじさんだ。
 しかも、久しぶりで運動もたいしてしていなかったこともあり、頭で思っても体が思った通りの動きをしてくれない。トラップしようとしたボールは、全て後ろに流れていき、ディフェンスをやっていた僕は、何点敵側にアシストしてしまったかわからない始末であった。味方からしたらテロ行為。
 それでもこんな老害にも優しい皆さん、なんとか精進しながら続けていきたいと思う。
 そんな初試合で、早速やってしまったのだが、相手の切り返しに、無理やり軸足を動かそうとした時、爪が持ってかれてしまったのだ。終わった後、みてみると、左足の親指の爪が浮いており、変な色を醸し出しているし、触ると激痛が走る。
 前やってた時もしょっちゅうだったので、癖になっているのかもしれない。皮膚科にも念のため行ったが、爪の間に溜まった水だけ抜いて、あとは、下から少しずつ生えてくる爪で今の爪が勝手に剥がれるのを待つことになった。
 以前同じように爪が剥がれかけていた時は、夏場で、サンダルを履いており、買い物中急に振り返ってきたママが、僕の剥がれかけた爪をちょうど蹴り上げる形をとり、爪が生え変わる前に、爪が剥がされてしまった。
 あの時は、滅茶苦茶痛かった。かろうじて、端っこだけ繋がった爪をプラプラさせながら、足を抑え、悶絶している僕をみて、ママにとってもそれはトラウマになっていたみたいだ。
 僕の浮いた爪を見るたびに、近づかないで、と言われる。
 今回は剥がされることなく順調に少しずつ下の爪も生えてきて、少しパカパカしてきたので、長男のひーくんに見せてみた。
「ほら、パカパカパカ〜」
「ふひぇ〜」
 ドン引きされた。
 次男のカーくんにも同じように見せてみた。
「ほら、パカパカパカ〜」
「え? なにそれ、すご、どうなってんの?」
 覆い被さってきて、僕の爪を掴み力強くパカパカしてきた。
「いててて、やめて」
 
 兄弟って不思議だ。

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