房総文明樹立論~日本文明崩壊危機の時代を生き残るために

序章 「房総文明樹立論」執筆の動機

私たちは新しい文明をつくる必要があるのではないか。

しかも、「東京」のすぐ隣のこの房総に。

それを考え続けた結果、生まれたのが本書になります。

そもそもなぜそのようなことを考えるようになったのか、本書の執筆の動機を心の奥まで突き詰めて探っていくと、それは巨大な危機意識からでした。

このままではすべてのことが最悪な方向に行きつつある。

今のような生き方や働き方は、あるいは地域の産業や会社は、そしてこの国と社会は、どんなに頑張ってもいずれ近い未来に限界が来ることが明らかなのに。

まるで裸の王様がまちのそこら中に歩いているかのように、人々はそのことを無視し続けているか、見ないようにしている。

お湯に落ちたカエルは急いで鍋から脱出しようとするけども、段々とぬるま湯を温めていったカエルたちはそのままゆでガエルになって死んでしまう実験に、今の状況は似ているのです。

この本は今の日本とそこに暮らす私たちの両方が危機的状況にあることを指摘し、その次の行動を提起しようというものでもあります。

でも、なぜ「文明」?

当然そのことは疑問に思われるでしょう。

本書を読んでもらえればきっと分かってもらえると思いますが、今現在日本で起きている様々な問題は、根っこを掘り下げていくと私たちの社会を構成している「価値観」にまで深くつながっていると筆者は考えるからなのです。そうした価値観は目には見えませんがあまりにも強い磁力となって、私たちの生活はおろか、行動様式や考え方にまで影響を及ぼしており、その影響が邪魔をして、日本を崩壊に至らせるような状況が進行しています。

物理学者アインシュタインは

「いま世界で未解決となっている諸問題は、それを作り出しているのと同じ意識のレベルでは解決することができない」

という言葉を残し、これを読んだ筆者の胸に強い印象を与えてくれました。

同じ意識のレベルのままでは問題は解決できない。ならばその意識のレベルを新しい次元に上げるしかない。それが「文明」を問題にするというこの本の出発点になっています。

まずは、なぜあえて房総文明という「新しい文明」をつくり出す必要があるのか、そうした文明の「在り方」に関する議論をしなくてはいけません。ですので、この本の前編部分では「文明とは何か?」について議論しています。その後に、「日本文明」という今の私たちを包みこんでいる価値観の正体に迫り、さらにその日本文明がいま崩壊の危機にある状況と原因を考えていきます。

その上で、もし「新しい文明」を作るとしたら何が必要なのか、そのことを具体的に考えていきます。中編は、現代において新しい文明を作り出すために必要な理論である「2C論」「3C論」「4C論」という3つの理論を皆様に理解してもらう必要があります。この3つの理論を理解してもらえれば、議論の必然的な道筋として、今の日本社会において房総文明が必要とされる根拠が浮かび上がってくるような仕掛けになっています。

そして後編では、房総文明が必要とされる根拠が自明となった先に、具体的な房総文明の概要を提示し、さらにその房総文明を構成するための要素や戦略を論述しています。

なお、この本は総論としての位置づけとして書いています。

本来であれば、「2C論」「3C論」「4C論」といった新しい概念や「房総文明」の要素・必要事項に関しては詳細で緻密な議論が必要です。

樹は根があり幹があり、そして枝葉があって初めて樹として成立しますが、しかし、この本で枝葉の一葉にまで議論してしまうと際限なく本が分厚くなってしまい、肝心かなめの房総文明とは何かという全容がわかりづらくなってしまうため、各論の部分は大きくそぎ落としました。ですので、各論の部分や今後の続編にて書くことにして、ここでは房総文明の根幹の部分がわかるように意識して書いています。読者諸氏に置かれましては、上記ご了承の上、議論を深めるための意見や批判を著者にぶつけてもらえれば、筆者として幸いです。

もしもこの『房総文明樹立論』を読んで、趣旨に共感してもらえましたらば、ぜひ一緒に房総文明を作り出すためにご協力いただければと思います。房総文明が架空の存在ではなく、本物の文明として現代社会に成立したときに、この本の目的は達成されます。

私は自らの一生をかけてこの「房総文明樹立」という目的のために取り組んでいこうと思っていますが、その仲間が増えれば増えるほど房総文明が未来に希望の光を放ち、またこの文明の成立によって救われる存在が増えるはずです。逆に、房総文明のような存在が未来に作り出せないとしたら、日本の将来は、大げさに言えば世界の未来は、危機的な状況になっていくでしょう。人間社会と地域経済の両面から、生存のための生き残り戦略として房総文明の成立に賛同し、そして活動の輪に加わってくれる人が増えることを願っています。

石川 良樹

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