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進化ではなく深化。=LOVE『ラストノートしか知らない』レビュー

『あの子コンプレックス』は、YouTubeのMV再生回数が1000万回を越え、イコラブの最大のヒット曲となったと言っていいでしょう。
その好評を受けてという事なのか、15枚目シングルの『ラストノートしか知らない』も、『あの子コンプレックス』と同路線の、バラード調の切ない恋愛ソングとなりました。


単にエッセンスだけコピーしただけのような曲ならば、何も語る事はないなという所なのですが…。
結論を言えば、『ラストノートしか知らない』は『あの子コンプレックス』からの進化…いや「深化」をきちんと果たした素晴らしい楽曲になったと思います。

一聴してまず感動物なのは、Dメロから大サビにかけての、メンバーひとりひとりの歌声が幾十にも折り重なる、複雑かつ重厚な美しいハーモニーを響かせるコーラスワークの素晴らしさでしょう。
ここでの本格感は本物。

歌の上手いメンバーが複数いるアイドルグループならいくらでもあるんですが、単にそれを順繰りに繋ぎ合わせるだけではない工夫と、深みのある表現をここまで突き詰めた物は、少なくともアイドルグループというカテゴリーではあまり聴いた事はないなと。
技術的なレベルの高さを見せつけるだけじゃない、楽曲の切ない雰囲気の盛り上げにそれがちゃんと繋がってるのもまた素晴らしい。

そんなメンバーの歌唱をより映えさせる、切迫感溢れるメロディーはイコラブファンにはお馴染みの塚田耕平作曲による物。
いままでどちからと言えば、アップテンポな王道系の楽曲で発揮されてきたメロディーの個性が、違う雰囲気の楽曲、違う系統のアレンジによってまた新たな魅力を纏ったのが新鮮で良かったです。
アレンジを手掛けたのはこれまたバラード系のイコラブ楽曲でお馴染みの湯浅篤。
Aメロのドラムに深いリバーブを掛けたり、Bメロに鈴の音を足したりと、冬ソングらしいエッセンスをさりげなく入れながらの、上品かつ手堅い職人技で、相変わらずの良い仕事してます!

さて、ここらからは私の歌詞の解釈を披露したいと思います。
歌詞の主人公は、想いを寄せる人に夜限定で呼び出される「都合のいい存在」な訳ですが、しかしこの主人公が想いを寄せる人もまた、本命の相手とは深い関係にはなれていないはずなのです。
深い関係になっているならば、夜も共に過ごすはずですよね?ふたりきりで一夜を共にすることこそが深い関係である事の証明とも言える。
本命の相手と深い関係になれていないからこそ、その寂しさを埋めるために主人公を都合のいい存在として利用しているのです。
その事を主人公も分かっていると思います。
Dメロの【誰かを まだ想ってる君です】の部分に
「あなたが好きな人はあなたと深い関係になる気はないのに、なぜあなたはまだその人の事を好きなの?私に振り向いてよ」そんな気持ちが込められているんじゃないでしょうか。
想いの一方通行感。
これこそがこの曲の切なさの一番の要因だと思います。
最終的に主人公が導きだす結論、【ラストノートしか知らないままでいい=都合のいい存在のままでいい=この関係だからこそあなたが好き】を含めて、全体的に今泉力哉の恋愛映画を彷彿とさせて好きですね。
失恋ソングとか雑な認識なのはもったいないですよ!

カップリング曲にも軽く触れておきましょう。

『ドライブ デート 都内』はハッピーなムード全開のアップテンポの王道ナンバー。
本格的にコンサートの声出しが解禁になったことで意識的にファンがレスポンスできる曲を増やしてる感がありますね。


『狂想カタストロフィ』は『手遅れCaution』と同路線のダークで退廃的なムードの女の情念系ナンバー。
久々の路線の曲で新鮮でいいんですが、センターの野口衣織ちゃんの存在感に負けないもっと強度の高いアレンジだったらもっと良くなった気がします。
そういう音楽的な物足りなさはありつつ、まぁ及第点ですかね。ライブで化けそうな曲かも?

個人的に今回のカップリング曲でイチオシは『どこが好きか言って』ですね!

レイドバックした雰囲気と隙間の多いアレンジが、大人で上品でオシャレで凄くいい!
ほろ苦さもきちんとある大人な甘さ。
一番と二番のブリッジに一瞬入ってくる暖かみのあるエレピの生殺し感がたまらない…。
こういう純粋に音楽的にクオリティが高い曲が一曲あるだけでもう全然、全体の満足感が違いますね。
素晴らしい!

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