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コロンブスの像が倒される背景。消されているのは像だけではない現状

人種差別に反対する運動の中で、アメリカでは南北戦争当時の南部州・アメリカ連合国の記念像が倒されたり、傾けられたりしています。南部州は奴隷制度を維持しようとしていたからです。

・Jefferson Davis (アメリカ連合国大統領だった人、バージニア州リッチモンド)
・Charles Linn (アラバマ州バーミンガム)
・Williams Carter Wickham (バージニア州リッチモンド)
・Robert E. Lee (リー将軍、アラバマ州モンゴメリー)

リッチモンドやモンゴメリーという都市は、アメリカ連合国の首都が置かれていた場所。だから記念像も多いのでしょう。


同じ文脈で、コロンブスの像もターゲットになっています。コロンブスはアメリカ大陸を"発見"した人であり、アメリカ建国に貢献のあった人、という見方が一般的でしたが、「先住民を迫害した征服者」とも見なされているからです。

・ミネソタ州セントポールでは、像が傾けられました。

・バージニア州リッチモンドでは、像が湖に投げ込まれました。

・マサチューセッツ州ボストンでは、像が斬首されてしまいました(英語ではbehead)。


ニューヨークのセントラルパーク南西の一等地にはColumbus Cirlcleという場所があります。いわゆるロータリーです。コロンブスの像はないですが、この場所が無傷でいられるかどうか。

比較する場所として、ルイジアナ州ニューオリンズに、リー将軍の像が立つLee Cirlcleがあります。140年近くこの地に立っていたリー将軍の像は、2017年に撤去されます。アフリカンアメリカンの比率が高い南部において、奴隷制度を維持しようとしていた南軍の像が、街のひときわ目立つ場所にあるのは無理があったのでしょう。

では、その場所の名前は何Circleなのか?ということになりますが、現在名称の変更が検討されています。ですので、ニューヨークのColumbus Circleという名前も変更せよ、と主張する人がいておかしくありません。


またもう一つ、無事でいられるかが微妙なのがColumbus Dayという休日です。コロンブスがアメリカに到着した日とされ、今年は10月12日です。

この日は連邦政府が決める合衆国の祝日ですが、実はすでに多くの州で、休日がIndigenous People’s Day(先住民の日)に置き換わっています。


像を破壊する行為は、多分に「象徴としての意味」や「パフォーマンス要素」が強いものですが、アメリカ人がコロンブスをめぐる意味をいまだに考え続けている、ということが今回の一連の像の破壊の背景にあり、そういう「ちゃんとしてる感」が私には感じられます。



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