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《下條ユリの干支シリーズ:亥》ぶれない強さと周りを思いやる優しさを飾る

情熱的で、センシティブで、社会の違和感を真っ先に感じるアーティストが食っていける社会に暮らしていたいから、暮らしかた冒険家はアートを売る。

今回も来年の干支「亥」が、ブルックリンで活動するアーティスト下條ユリちゃんから届きました。

毎年集めたくなる干支シリーズ。ブルックリンのマスタープリンター(刷師)Keigo Prints による1枚づつ丁寧な手刷作業の版画です。

わたしが、干支物を家に置きたいと思ったのは、この作品がはじめてのこと。ブルックリンのギャラリーの入り口に、毎回更新される和物でも洋物でもない、ユリちゃんの存在そのもののようなニュートラルで多用性を内包する強度がわたしは大好きなのだと思います。

ということで、早速できたてホヤホヤの作品を前に、ユリちゃんにこの作品のことインタビューしました。そして、本当に申し訳ないのですが、すごいアーティストのユリちゃんにもかかわらず、その分け隔たり一切ない人柄に、フランクすぎるわたしの対応をお許しくださいませ。

菜衣子 さっそく来年の干支イノシシが出来てきてたまらないです!今回のイノシシの絵はどんなイメージで描いたの?

ユリ まずはね、下調べをしたんだよ。こんなこと初めて(笑)。描く前に菜衣子が亥年だって知ったから、どんな人たちなのか気になったの。細かく分けると、火のイノシシとか土のイノシシとかいろいろあるらしいのだけどね。まぁ、来年が何のイノシシなのかはよくわからないけど、とにかく調べたのね。それがね、えっとどこかにメモが…。

菜衣子 メモってあるんだ(笑)。

ユリ そう。Instagramに投稿するときにメモったんだよね…。えーとね…あった。とりあえずね、すごく良いヤツなの。

菜衣子 良いヤツ?ただの猪突猛進じゃないの(笑)?

ユリ そう。とっても良いヤツなの。猪突猛進って、周りにお構いなしみたいなイメージがあるでしょ?自分のことしか考えてなくて、狙った獲物は逃さないみたいな。でもね、亥年の人は、目的を定めたらとことん勤勉に取り組んで、努力を重ねて着々と目的に向かっていくっていう人なの。しかも、周りにも気配りができる。でも自分は人にものを頼めないらしい。優しい戦士みたいな人。

菜衣子 それは確かに、良いヤツだね(笑)。

ユリ そう。いろいろ調べてみたら、菜衣子そのものだなぁって思ったわけ。

菜衣子 ありがとう。うれしいな。恐縮です。でも、私は人にものを頼むのは得意だけどね。

ユリ 確かに。でも、身勝手に頼んだりとかしないじゃない。ちゃんと相手のことを考えて頼むでしょ。しかも、ちゃんと目的に向かっていく。まさしく菜衣子だよね。

菜衣子 あはは、ありがとう。今回の絵が勢いよくシューッ!ってなっているのはそういう下調べがあったからなんだね。

ユリ そうだね。それもあるし、描くときに頭に残っていた自分の過去の作品もある。「Light」っていうタイトルの絵。ニューヨークの海辺から見た海を描いたの。水面のキラキラとか、水平線とかをイメージした線の絵。干支シリーズは、具体的にイラストレーションとして干支の絵も描きたいけど、飽きがこないように抽象画のイメージもいれたいし、なるべくシンプルに仕上げたい。干支の1年間、飾ってもらえるかもしれないし、12年後にまた飾ってもらえるかもしれないから。それで、今回の絵になったんだよね。

Yuri Shimojo『Light』

菜衣子 あぁ、やっぱり!これまので干支シリーズはイラストレーションから展開してる気がしたんだけど、今回はシューッ!っていう線の勢いが先にイメージとしてあったんじゃないかって気がしてたんだよね。

ユリ そうなの!ぶれない強さと周りを思いやる優しさを併せ持ってる亥年のいいところをみんなで見習っていかないとね。自分の中に絵のイノシシを飼って、イノシシ性を自分のものにしてほしい。去年の戌年にも込めた思いがあるんだよ。犬っていろんな種類があるのに、みんな「犬」でしょ?いろんな意見や価値観があっても、同じ方向に歩いていけたら良いねっていうメッセージ。

菜衣子 なるほどね。たくさんの人にユリちゃんのメッセージを届けたいね。

ユリ そうだね。日本にはいろんな干支グッズがあるでしょ?それにも関わらず、私のイノシシを選んでくれるのは本当にうれしいから。そもそも日本にはあんまり絵を買う習慣がないし、簡単に買うことを決められる値段でもないから、絵を買うこと自体にとても勇気がいると思うの。それでも買ってくれる、その勇気がとってもうれしい。

菜衣子 そうだね。でも、来年はもっと早く売り出そうね(笑)。9月目標!

ユリ うん、がんばります(笑)。

さてさて、最近は子育てをしていても、農作業をしていても、アートを眺めていても、これからのテーマは「過程への想像力」と「その評価は正しいかの問い」なんだろうなぁ、と思っています。相手が提示した価格でも、相手が持続可能な条件を言っているとは限らないなぁ、という事例は世の中にあふれているので。

未来にこういう職業や人が変わらずにいてほしいと思う気持ちと、自分のお財布事情をどうバランスを取りながら、ベストバランスで(社会というと大きすぎて思考停止するけれど)コミュニティを保っていられるか、みたいなことに興味があります。

という意味では、わたしは下條ユリちゃんのような、情熱的で、センシティブで、社会の違和感を真っ先に感じるアーティストが食っていけるという状態が担保されているコミュニティに暮らしていたいと熱望しています。「なんで暮らしかた冒険家はアート売ってるんだ?」という疑問が多くの方に浮かぶと思いますが、こんな理由からです。

ということで、仰々しい〆の文章になりましたが、素敵な空間づくりと、未来づくりのために、ぜひ一枚いかがでしょうか!

仕様:
シルクスクリーン版画
サイズ:約 21.5 cm x 28 cm
紙:耳付き鳥の子和紙
限定:100枚
*アーティストによる手書きサイン、エディション番号付き

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https://offgridlife.stores.jp

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