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躑躅が好きなのは

 桜が散り、躑躅が代わって咲いてきた。僕は躑躅が好きだ。名前につつじとつけたのも躑躅が好きだからである。
 最初に就職した広告代理店では、毎日、新聞の地方欄の名刺広告ばかりを取る営業をさせられていた。これは入社する前に思っていたイメージと明らかに違うぞ、と悩み落ち込んでいた。就職する前にしっかりリサーチしておけばよかったのだろうが、それを怠った。
 それを見かねた先輩が、休みの日に、近くの躑躅の名所に僕を連れて行ってくれた。丘に一面つつじが咲き乱れ、海をバックに広がっていた。それ以来躑躅が好きになった。
 会社はわずか2か月で見切りをつけた。福岡でバイトをしながら改めて就職先を探すことにした。
 やがてホームセンターに就職し、結婚して子供が生まれて、大きくなった頃、再度妻と子供と一緒に躑躅の名所を訪れた。相変わらず海に向かって綺麗な花を咲かせていた。あれから15年が経った時であった。
 今振り返れば、回り道をした人生ではあったが、妻と子供に囲まれて幸せだったと思う。躑躅が咲くころになると、あの頃の自分をつい思い出す。
 妻に感謝。子供に感謝である。

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