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竹取物語12 (最終回)

 長澤巧は未成年者誘拐罪で逮捕された。警察隊が海の中を捜索した。かぐやがいるとふんで、調べまくった。山川忍の証言で、刑はおそらく軽減されるだろうと思われたが、死体が海の中で発見された時は、重罪を覚悟した。
 当たり前のことだが、月からの使者が訪れ、連れて行ったという証言は誰も信じてくれはしなかった。おまけに死体まで発見されては、最早警察の言う通りの調書にサインせざるをえない状況であった。
 長澤は未成年者誘拐に自殺幇助の疑いもかけられた。当然ながら会社は馘首になり、もっとも半分以上は馘首みたいなものだったけれど、精神鑑定も行われた。
 長澤は収容所の中で、何度もかぐやの夢を見た。
「なぜ死んでしまったのだ。もう少しだったじゃないか。なんで、あんな使者が現れるんだ。もう少しで生きていこうという気持ちになっていたはずだったのに」
 長澤は精神鑑定で問題ありということになり、無実となった。無実になったからといって自由の身になった訳ではない。措置入院となり、寛解するまで強制入院させられる。自由も制限させられた。刑務所とあまり変わらなかった。
 寛解し、自由の身になったら、真っ先にかぐやのお墓参りに行こうと考えていたが、墓はなく、納骨堂に供養してあるそうだ。まれに面会にきてくれる山川忍がいろいろ教えてくれた。
「結局何だったのかしらね」
「俺にはさっぱりわからないよ。かぐやなんて女の子、本当にいたのかなんてことも、今では夢だったんじゃないかと思っている」
「2人揃って同じ幻覚を見ていたってことでしょうね」
「そうなんだろうか。もうそれもどうでもいい気はしているよ」
 長澤は力なく笑い、やがてこういった。
「本当に死体はかぐやだったのかい。違う人の死体なんじゃないだろうか。かぐやは月にいったんだぜ。なぜ海の中に沈んでいるんだ」
 山川忍の表情は強張り、長澤にこういった。
「DNA鑑定では間違いなく彼女だったのよ。それは裁判でもいっていたでしょう」
 長澤は笑いだし、そしてしばらくすると泣き出した。
 
 現在児童養護施設はどこも満員の状態である。少子化、少子化といわれながら、虐待やネグレクト、望まない出産などで、行き場のない子供たちが、親の勝手で施設で暮らさざるを得ない状況である。


 私が公に発表した最初の短編小説です。未熟なところは多々あったでしょうが、最後まで読んで下さった方はお礼申し上げます。また💛して頂いた方は感謝感激です。また機会がありましたら挑戦したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 

 

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