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山﨑康晃の「ツーシーム」

2015年DeNA入団1年目からクローザーを任されており、入団4年目の2018年には自己最多タイの37セーブを記録し、自身初タイトルとなる最多セーブ投手を獲得しました。佐々木主浩の愛称であった大魔神にちなんで「小さな大魔神」と呼ばれています。
クロスステップするオーバースローから繰り出すストレートに加え、フォークの様に鋭く落ちる”本人曰く”「ツーシーム」を武器としています。

2018年シーズンでは空振りストライクはもちろん、見送りストライク率も13.3%(フォーク系の平均7.0%)と優秀で、ゴロ割合(12.6%)もかなり高く、ツーシームではホームランを一本も打たれていません。

1, 背景

この球は大学時代に誕生したそうで、亜細亜大学出身の投手が揃って使っていることでも知られており、「亜大ツーシーム」とも呼ばれています。
亜細亜大学時代に2学年上の先輩に東浜巨投手(ソフトバンク)、1学年上の先輩に九里亜蓮投手(広島)がいて、彼らに握りを教わったそうです。

大学時代は先発投手として起用されていたので、少しでも長いイニングを投げるために効果的な球を覚えたいという意図で覚えたそうです。最初はこのツーシームも芯を外して打ち取るためのボールで、東浜投手のボールを見ながら、投げ方、使い方も全部、事細かく学んだとのこと。 

落差が出るようになったのは、抑えをやり始めてからとのこと。少し指を開いて投げればスピードはそのままで落差が出てくるようになったそうです。またプロ入り後に短いイニングで腕を強く振るようになったところ、鋭く落ちるようになりました。以降この球を決め球として使うようになり、奪三振も大幅に増えていきました。

山﨑選手はこの球を尊敬する先輩からツーシームとして教わったということで、ずっとツーシームと呼んでいるそうです。(東浜投手はシンカーとして教えたと言っていたり、よくわかりません…)


2, 投げ方・変化について

通常のツーシームは縫い目に指をかけることが多いですが、亜大ツーシームはそれよりも指の幅を広げて挟みます。スプリットに近い握りで、縫い目が少し見えるくらい広げています。このように指を広げることで、回転数が少なくなり落ちていきます。
回転数の少ないツーシームをイメージしていただけるといいかと思います。

投げる目安としては打者のヒザ元の高さをめがけて投げるのではなく、ベース板の奥の角に落ちるように意識して投げているそうです。
ストレートのような腕を内旋するリリースで、シュート回転をかけるようなイメージがいいかもしれません。

また山﨑投手はこのツーシームについて、その日の調子によってスライダーのように落ちたり、シュートしながら落ちたりすると言っています。意識的ではないとのこと。

ここについてよく見てみたところ、右に落ちる時と左に落ちる時で、左に落ちる時の方がリリースが早く前になっているのがわかります。

これにより中指少し長く掛かってしまい、スライドしてしまうのではないかと考えられます。

おそらく指の力のかけ具合を上手く変えることができれば、落ちる向きを操ることが出来るかもしれません。

3, 亜大ツーシームの派生

ほかの3人についても少しだけ見てみます...

元々は東浜投手がシンカーを習得したのちに、大学時代の当時の監督とともに野茂投手のフォークをもとに縦変化が強くなるように改良しています。野茂投手はストレートとフォークのリリースで手首が立っており、同じ状態で投げていることをヒントにしたようです。
後輩の3人にも、「この握りで真っ直ぐを投げれば、勝手に落ちる」と教えています。

東浜投手の握りは指の幅がほかの3人よりも、少し広いのかなといったところです。

その後握り基本的には握りだけが伝わり、九里投手・山﨑投手・薮田投手それぞれ独自に進化させていったものだということです。

九里投手はプロ入り後に黒田博樹投手のツーシームを参考に改良したようです。
またほかの2人について、「薮田と康晃のボールは落差も大きいし、僕らとは違って握りも深いんだと思いますよ」と言っています。

薮田投手も山﨑投手と同様に指を広げた握りをしています。

指の幅を変えることで落差、減速度合いなどを調整して、ゴロを打たせたり空振りをとったりしています。
基本的に指を広げた方がフォークに近づき、落差が出てブレーキが効くようになります。

阪神の高橋遥人投手も亜細亜大出身で、このツーシームを投げています。結構スライダーのようにスライドしているのでわかりにくいことが多いです。リリースを見てみると、他の人たちのように回転をかけて落とすというよりも、人差し指と中指の間から抜くようなリリースになっており、最後に中指がかかるのでスライド方向の変化になっています。
山﨑康晃投手のツーシームがスライド方向に変化する時に近いかもしれません。

4, まとめ

全体的に亜大ツーシームの話になってしまいましたが、結局はツーシームの握りから指の幅を広げてスプリットのように投げることで、落差のあるツーシームを投げられるということです。

山﨑投手については、ストレートとツーシームのツーピッチでこの成績を残しているのは素晴らしいと思いますが、極稀に見るスライダーもいいと思うのでもっと使ってみて欲しいなと個人的に思っております。

・ツーシームの握りで縫い目の少し外側で挟む・ベース板の奥の角に落ちるように意識して投げる・ストレートのように腕を内旋するリリース・用途によって指の幅で落差、スピード、ブレーキ具合を調整できる


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