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徒然読書夜話

4月上旬の気になった漫画などをご紹介

伊勢新九郎こと北条早雲一代記を、ゆうきまさみさんが描くだけでも誰得な内容となっておりますが、なによりも応仁の乱コミカライズと言っても良く

こちらの「応仁の乱」と「観応の擾乱」を副読本にいたしますと「凄い!何やってるかが分かる!」となる面白さとなっております。応仁の乱は日本史の中でも西軍と東軍の参加メンバーの陣営が目まぐるしく変化して、「君らそもそも何で戦ってるのよ?」という、およそ参加してたメンバーですら「もう、よく分からん」という頭の痛い戦争でして、背景に守護や国司などの「所領の揉め事」を解決してくれる筈の室町幕府がいまひとつ頼りにならず、誰が自領を保護してくれるのかという都合の良い調停者を求めての泥沼なわけですが、応仁の乱を経て戦国大名の嚆矢となる北条早雲こと伊勢新九郎の若き日を、応仁の乱の中で描くというなんともたまらん展開です。

冗長になりがちな姻戚関係の説明などはギャグテイストで「こちらをご覧下さい」とスライドが降りてきたり、さりげなく現代的な表現が入れ込んであるなど目を離させない工夫が盛りだくさんとなっております。この辺に賛否もありますが、文章解読力の低下が叫ばれる昨今、字の多さに目が滑って頭に入らずスルーされる率の方が圧倒的に高いので、これは良いやり方かと。

しかも新刊である二巻は「応仁の乱」の特徴的な京都での市街戦が詳細に描かれておりまして、小路の築地塀越しに陣地を争うという一種独特な様子をここまで絵に起こしたのは初めてではなかろうかと。

また、足軽の祖と言われる骨皮道賢にそれなりのページ数が割かれるなど、昨今の中世史研究も反映されており、読み応えのあるシリーズになっているので未読の方には強くお勧めしたい作品となっております。

こちらは言わずと知れたダンジョン飯の最新刊ですが、当初の目的であったドラゴンに食べられた妹ちゃん救出から怒濤の展開となっており、ダンジョンのある島を巡って、世界の調停者たらんとするエルフが島主への圧力を強める様子を「あいつらは保護者が刃物を取り上げる感覚でやりますよ」など短いセリフの中にも重厚な世界観を反映させており痺れあがります。

生物学的見地からの有名モンスターの解釈、それが戦闘に活かされることによって主人公達が「特に理由も無く勝ってしまう」という、納得のいかなさみたいなものを完全に排除して「パズルが解けた」かのような爽快感を生み出すバトル描写、そして倒した後の調理まで完全に作品内の調和が取れた冒険が気持ちよく、今巻では謎であったドワーフ「センシ」の過去も開示されます。マンガ大賞の審査員なんてこともやっておりますが、周囲が注目していた序盤では無く、この後半をもって堂々と大賞受賞作になってもらいたいんですが、どうにも巡り合わせが悪くなんとかならんものかとの思いが募るばかりであります。


Twitterの著者宣伝ツイートが流れてきたのでポチってみたら、ググッと好みの当たり作品でして、気軽に書店へ足を運べない地方民的には書店での出会いがタイムライン上での出会いになったなと思う一冊でした。

マンガ好きでエロ雑誌に配属された新人の女性編集者、たまたま取った電話が「あー」と「うー」という返答しかなく、後ろの駅のアナウンスを聞いて気を利かせ「持ち込みでしたら…」と応対したところから始まるマンガ道

言葉が出てくるのが遅く周囲との軋轢で溜まった淀みのようなモノを吐き出す天才・戸田セーコと編集者であるタナカの二人三脚的な内容に、エロ雑誌ならではの業界お仕事ティップスや昨今のネット事情なども絡めた良作で、これは続きが早く読みたいと思わせる一作でした。

以下、ニコ生の読書夜話でピックアップ予定

BloodAloneよもやの電書オリジナル配信で巻数が進んでおり、一気買い

読み切りの甲冑戦闘の激しさと狼の口の打ち上げ編のギャップで大草原

ビール工房を舞台に展開されるそれぞれの連作シリーズ、中村さんのキャラは最高やで……となるので是非

下ネタと叙情的な余韻の悪魔合体、道満さんの持ち味が炸裂してます

グルメの昨今、これほど不味そうに飯を食うという逆張りの鏡みたいな作品

現代なのに「サスケ」や「忍者武芸帳」の風を感じさせる極上忍者活劇

以下は本代の足しにでも!という投げ銭への御礼でして有料記事部分となっております。ニコ生でよく聞かれる精進カレーのレシピとなっております。

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