2025年度用SAPIX偏差値一覧表を眺めて@男子編

 SAPIXの2025年度用の偏差値表のVol.1が手に入ったので、それについての雑感を書き記したいと思います。

 記事を書くにあたって、視点は「2020年度用 Vol.4との比較」に設定しました。理由は、去年との比較では見えてこないことがあると考えたからです。偏差値表での1p程度は、正直誤差の範囲だと考えています。昨年の偏差値と比較して1p程度違ったとしても、そこから傾向の変化を語ることには、それほど意味がないと思いましたので、5年前の偏差値表と比較をすることにしました。
 そのような視点の考察に興味がございましたら、お付き合いください。


【2月1日午前】

[渋谷教育学園渋谷の位置]

 最初に目に入るのは、渋谷教育学園渋谷の位置です。

今は、麻布と同じ位置にありますが、5年前は海城・慶應普通部・駒場東邦・武蔵・早稲田の下位に位置し、麻布からは5p後方に位置していました。
「共学人気」と言われて久しいですが、渋渋の位置取りの変化を見ると、改めてそれを感じます。

[芝の後退]

 5年前は、芝が第2グループのトップにいたのですが、今はサレジオ学院・本郷の後塵を拝しています。

サレジオも本郷も良い学校なので違和感はないのですが、芝が偏差値49に位置しているのは、少し納得がいきません。逗子開成や中央大学横浜が偏差値50に位置していますが、芝は立地で損しているような気がしています。神奈川県の方が競合する学校が少ないので、優秀な受験生を集めやすいのかなと。芝は、位置的に様々な学校と競争しなければならず、そういうことが原因で下げているのではないかと感じています。芝は4日が偏差値58ということもあるので、個人的には芝の方が格上だと思っています。だからこそ、1日の芝は、今はわりと「穴場」なのかもしれません。

[芝浦工業大学付属に見る時代]

5年前の偏差値41から、今年は偏差値47まで上がっています。

近年の「共学人気」「理系人気」の影響が色濃く出ている躍進だと考えています。5年前までは、現場で名前を聞くことがほとんどなかったですが、今は中学受験記事で名前を見ることが増えました。

【2月1日午後】

[東京都市大学付属の変更]

 1日午前の受験を始めてから、一気に難化しました。

偏差値52から偏差値57に上がっています。
日程の変更、各日程の定員の配分や1日午前の第一志望層の歩留率の良さ、入試問題の難易度など、様々な要因があると思いますが、5年前は違う学校になった印象です。今の日程は、時代にハマっているというか、他の学校の日程とのかみ合わせが良いのでしょう。学校の戦略勝ち感があります。良い学校だとは思いますが、先に挙げた芝あたりと比較すると、まだ中堅男子校から抜け出したとまでは言い難いです。

[東京農業大学第一の覚醒]

 偏差値48から偏差値53まで上昇しています。ちなみに、2日午後に至っては衝撃の偏差値57です。5年前までは、中央大学横浜の方が上だったのですが、今は東京農業大学第一の方が格上になってしまいました。

 もともと、周辺地域での支持が高い学校で、満足度の高い隠れ優良校だったのですが、今はそれがバレてしまった感じです。昔は、逆転合格しやすい学校だったのですが、今はもうそんなアップセットが起こらない学校になりました。いよいよ、来年から1日午前の争いに参入するようですが、それを引き金にして、都市大付属と同じように、さらに激戦校になると考えています。個人的には、マーケティングが上手な広尾学園より農大一推しです。

【2日午前】

[栄光学園という基準]

 5年前は偏差値62だった栄光学園が、今年は偏差値59です。

栄光学園が偏差値60を下回るということは、5年前には想像しませんでした。
 ただ、この栄光学園の偏差値59というのは、解釈が難しいと考えています。個人的には、数値が下がったからといって「栄光学園が入りやすくなった」とは思っていません。この5年で栄光学園の問題の難易度が簡単になったということはなく、合格者最低点が下がったということもありません。それゆえに、栄光学園に集まる受験生のレベルが下がったとは考えられません。SAPIX生の実力が単純に上がり、他塾生との差が開いたと考えるのが妥当だと思います。
 栄光学園の偏差値が5年前よりも3p下がったことは、まさしく近年の中学受験界の難化の象徴ように思えます。

[巣鴨の上昇]

2日の受験日は、偏差値48から偏差値54に上昇しています。4日も同じように偏差値47から偏差値55に上がっています。

 1日入試以外の本郷が、もう最難関志望者以外には高嶺の華になった今、東京北部の男子校押さえ枠に巣鴨が収まったわけですが、それももう危険域になった感じです。巣鴨も、「押さえ」と安易に考えてはならず、1日受験から突っ込むことを考えなければならなそうです。

【2日午後】

[日本大学ブランド]

日本大学豊山が、3日午後と一緒に偏差値40を超えています。

 5年前は、偏差値30台前半だったことを考えると、ここにも時代の変化を感じます。確かに偏差値表を眺めると、男子校志望勢は日大豊山まで下げないと「盤石の押さえ」として機能しそうな学校が見えてこない時代になった気がします。
 日吉の日本大学中も、午後入試では偏差値40を超えていることを考えると、SAPIX生でも「押さえ」の選択肢で日本大学の付属校・系属校まで視野に入れなければならない時代になったのかもしれません。5年前は、全く考えなかったパターンです。

【3日】

[学芸大学の凋落]

 学芸大学系付属は、総じて5年前よりも序列を下げています。学芸大学付属世田谷も、偏差値は下げておりませんが、偏差値50台になった学校が多いので、相対的に下がっています。

 こればかりは「時代」としか言いようがありません。中学受験勢は問題ないとはいえ、形式的にでも「高校受験をしなければならない」というのは、やはり面倒くさいのでしょう。施設面で考えても、私立学校の方が充実しています。教育系の大学付属ということもあり、教育実習生が多かったり、大学の研究対象、実験場的位置付けになっています。そういったことを考えると、必ずしも私立学校よりも良い教育を受けられるというわけではなく、メリットと言えば費用が安く済むくらいになるのかもしれません。今後、学芸大学付属系が、中学受験生の中で人気を取り戻すことはないのかもしれません。

[成城の発見]

成城の偏差値が、3日は偏差値49、5日が偏差値50に乗りました。

5年前の3日は偏差値43だったことを考えると、徐々にSAPIX生の「押さえ校」として立ち位置を確立し始めているように思います。まだ、1日は偏差値42から変化していませんが、3日5日が入りづらくなれば、1日も上がってくるのではないでしょうか。
 もともと、学校自体の評判は良く、大手学習塾時代から満足度の高い学校でした。5日の偏差値とはいえ、偏差値50に到達しているのは、「いよいよ、見つかってしまった」という感想を持ちます。3日、5日の入学者の実力が上がってくれば、徐々に大学の合格実績も上がってくるでしょうし、10年後の立ち位置はもっと上になるかもしれません。

【4日】

[男子校のスリップストリーム]

 芝偏差値58、巣鴨偏差値55、サレジオ偏差値54、世田谷学園偏差値52、明大中野偏差値50です。一昔前まで安定の男子校押さえ枠に入っていた世田谷学園と明大中野ですら、偏差値50を超えています。もう、「男子校は、どこで止めるんだ?」という時代になっています。そういう男子校のスリップストリームに入って、一気に加速しているのが、偏差値41から偏差値49に上がった高輪と偏差値35から偏差値43に上がった獨協です。

 5年前に偏差値49あれば、「高輪まで下げなくても…」と言われていました。獨協は、名前すら上がっていなかったです。SAPIX偏差値30台の御家庭で「どうしても男子校」という御家庭には、「じゃあ、高輪や獨協で」と勧める学校でした。しかし、もうそんな失礼な話はできません。

【5日】

[関東学院という選択肢]

 偏差値33から偏差値39まで上がっています。3日も偏差値39です。

「大学付属」「共学校」という枠も、徐々に飽和状態になっているのか、関東学院の人気も上がっております。5日に流れ込む可能性も覚悟した入試日程を組もうと思うのであれば、しっかりと関東学院まで見学に行くべき時代になったのだと思います。

【特記】

[佼成学園の可能性]

 ここまで記してきた通り、様々な学校の難化が止まらない今、中堅層で男子校志望の御家庭は、佼成学園もしっかりと見学することをお勧めします。

 佼成学園を見学して、「悪くない」と思えるのであれば、1日午後の偏差値37のところで佼成学園を受験して、後半戦に備えるのは悪くない戦略です。また、2日、3日、5日と受験日があるので、もしもの時のセーフティーネットにする検討しておいて損はありません。
 偏差値40~50の中堅男子校は、もう何が起こっても不思議ではありません。また、後期に向けて成績が上がるのか下がるのかわからない今こそ、佼成学園という可能性を確認しておくことは、しておいて損の無い準備になると思います。

【まとめ】

 今年のSAPIXの偏差値表を眺めて、改めて時代の変化と中学受験の難化を感じました。特に、この2年は目まぐるしく変化しており、正直に申し上げれば、その変化についていけておりません。今年は、難関校が受験者数を減らしたとはいえ、中堅校の受験率は上がりました。全体の受験者数は微減だったようですが、中堅から下位の中学受験は、まだまだ難化の一途を辿りそうです。それゆえに、とにかく広くゾーンを取り、様々な学校を見学し、しっかりと併願パターンを準備することをお勧めします。

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