【2024年受験】SAPIXの合格実績を眺めて@男子校編

 昨年も同様の記事を書きましたが、今年もSAPIXの合格実績の変遷から時代の流れを感じ取りたいと思います。あくまで、独断と偏見に基づく主観でしかありませんが、よろしければお付き合いください。

 昨年の記事は、以下のものです。答え合わせの感覚で、併せてご参照ください。

 また、考察にはサピサピ中学受験様のデータを活用させていただいております。


【総合】

 まず、全体的な傾向として、今年は男子校最難関の合格者数を減らしたようです。それに対して、早稲田アカデミーが最難関の合格者を増やしています。

それを以て、「早稲アカがSAPIXに近づいている」という論調が見られますが、まだSAPIXの1強は盤石だと考えています。

 早稲田アカデミーが合格実績を伸ばした背景には、『予習シリーズ』の改訂が影響しているとは思います。今年の受験生は『予習シリーズ』改訂後初の受験生です。そのテキストの難化、仕上げの早さから考えれば、優秀層の実力が上がったのは間違いないでしょう。
 ただ、早稲田アカデミーの合格実績は、「SPICA」や「NN志望校別コース」に在籍している他塾生の人数が開示されるまでは、SAPIXと比較するべきではないと考えます。

 SAPIXの最難関合格者数が減ったことについては、すでにサピックスオープンの段階で志望者数の減少がわかっていました。在籍数から算出される合格者の割合も、大きな変化はありません。

 その点を考えれば、「SAPIXに変化はない」と評価するのが妥当だと考えます。ゆえに、最難関志望者が減少したことは、それ自体が「時代の変化」と評価した方が良いのではないかと思います。とりあえず、今年の結果でSAPIXを不安視する必要はなく、「今年も何も変わらなかった」と考えて差し支えないと考えます。

 そのような立場にたって、今年目立った変化に目を向けていきます。

【学校別】

・本郷

 際立つのは、本郷の合格者数です。今年は353名で、昨年よりも43名多いです。2年前までは300名を超えていなかったのが、今年は350名を超えたのですから激増です。
 本郷の躍進には、時代の変化を象徴しているかもしれません。本郷の2回3回の受験は、合格者最低点が跳ね上がる傾向です。2回の点数ですら、どのレベルから押さえとして機能するのか判断が難しいです。3回の合格者最低点などは、1回2回で合格できない子が戦える数字ではありません。
 それを思うと、1日にチャレンジ受験することなく、本郷にしっかりと入っておこうと考えることは、無難な選択のように思えます。今年、1日受験の最難関校の合格者数が減ったことと本郷の合格者数が増えたことは、全く無関係とは思えません。この傾向は当分は続く気がしています。もしかしたら、本郷は海城に近い存在になるのではないかとすら考えています。

・世田谷学園

 4年前まで200名を超えていたのに、今年は143名です。去年の170名と比較しても一気に減らしています。理由はわかりません。一時期、教員による行き過ぎた指導で人気を落としていた時期がありますが、最近はそういう話を聞いておりません。SAPIX生の中で、世田谷学園が選択肢に入ってこなくなった理由は見えてきません。あくまで、憶測の域を出ませんが、都市大付属が1日午前に入試日を設けたことは、影響しているのではないかと考えています。

・桐朋

 こちらも世田谷学園と同じです。3年前までは安定して140名以上が合格していましたが、今年は107名です。去年の120名よりも減っています。
 合格者最低点も微減です。SAPIXの合格者数と合格者最低点を見ていくと、SAPIXの合格者数が減っているところは、合格者最低点が下がっているところが多いように感じられます。それは、おそらく「SAPIXが合格させられなくなった」のではなく、「単純に志望者を減らしている」というだけなのでしょう。SAPIX生のトレンドは、さながら民族大移動みたいなもので、その年の合格者最低点に影響を及ぼすのかもしれません。
 いずれにせよ、何が原因かはわかりませんが、桐朋も世田谷学園同様にSAPIX生のトレンドから外れているのかもしれません。

・明治大学付属中野

 明治大学付属中野は増やした方の学校です。6年前は69名だったのが、ここ4年は100名あたりを推移し、今年は118名です。こちらは、合格者最低点が去年よりも低くなったので、入りやすい年度だったのかもしれません。問題が難しくなっている可能性もあるので、一概には言えませんが。
 明治大学付属世田谷に生まれ変わる日本学園が、現時点でも合格者数を増やしているところを見ると、昨今の大学受験の難化に対して「明治大学に進学できれば御の字」という御家庭が増えた向きはあるのでしょう。合格者最低点を見ると、来年も受験者・合格者を増やしそうな気がしています。

・その他

 去年の記事で話題に挙げた、成城・高輪・獨協は、今年合格者数を増やすかと思いましたが、そうでもありませんでした。ここ数年の数字は維持しているので、以前と比べれば人気が安定しているのは間違いないですが、まだSAPIX生が集まるまでには至らないようです。世田谷学園や桐朋の減少した層は、どうやら成城・高輪。獨協には向かわなかったようです。

【まとめ】

 今年の合格実績を見ても、まだまだSAPIXは盤石だと感じます。テキストが劣化しない限りは、当然の結果なのかもしれません。先にも触れましたが、早稲田アカデミーが今年全体的に最難関の合格者数を増やしたのは、『予習シリーズ』の改訂が一番の要因だとは思っています。来年、SAPIXが最難関男子校の合格者数をさらに減らし、早稲田アカデミーが増やすようなことがあれば、中学受験業界の潮目が変わり始めるのかもしれません。

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