翻弄されていく話

歳上のEとの付き合いは驚きの連続だった。

初デートに車で私のマンション前に現れたEは助手席側に私を誘い、紳士的にドアを開けてくれた。
ドキドキしながら慣れない7cmヒールで乗り込むと、そっと閉められるドア。運転席に乗り込んできたEがどこか行きたいところある?と訪ねながらシートベルトを締めカーナビを弄る。
今まで同い年の異性とばかり付き合ってきた私には、それだけでカルチャーショックというか、驚きの連続だった。
Eから感じる大人の余裕に、クラクラして、より深くのめり込んでいく。

学生という蛹から、蝶に変わったばかりの私にドライブデートで行きたい場所などすぐに思いつけるはずもなく。曖昧に答えた私に優しく笑ったEは軽くドライブしようと言ってハンドルを握った。
そのまま街を抜け、ぽつぽつと会話をしているうちに、雨が降り出し、車は高速道路に乗り、海沿いの街へと走っていく。
あの、何処へ行くんですか。
急に不安になる私は上擦った声で早口に尋ねた。当たり前だ、つい半年前まで学生だったのだから。窓の外とEの横顔とを交互に見やる私をミラー越しに見て微笑むと、心配しないでとだけ言った。

連れていかれたのはお台場だった。
雨を避けるように商業施設をウィンドウショッピングして、夕食にその中のイタリアンレストランへいった。夕焼けが落ちる頃には雨が止み、赤紫の夕陽がレインボーブリッジに引っかかっているうちに、告白されたような気がする。

初デートで、ドライブデートで、夜景の見えるレストランで食事。ああ、社会人って、大人って、こんなに素敵なんだと痛感した。
逆に、今までの陳腐な恋愛はなんだったのだろうと省みて、少し笑ってしまう。きっと恋愛ってこういうものなんだ。大人の恋愛はこんなにキラキラしたものなんだ。
恋に夢見ていた少女が、まさに求めているようなデートを与えるような男がEだった。


#社内恋愛 #恋愛 #日記

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